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コラム

義父の携帯電話

千代田システムテクノロジーズ株式会社
国内計装セクション2
冨岡 邦夫

 先日、我が家全員の携帯電話(5台)の更新(機種変更)に合わせ、義母の携帯電話も更新(機種変更)する事にして、遂に義母(73)はスマホデビューする事になった。義母は15年前には携帯電話(ガラケー)を使用開始していたが、スマホは高価で操作が難しそうだからと、ガラケーを使い続けてきた。流石に世の流れには逆らえず、孫たちの後押しもありスマホデビューする事になった。ガラケーからスマホへの機種変更は同じ会社であった事もありメール引継ぎ等の手続きが簡単に済み、内部データもそれ程なかったため更新後約2時間後にはLINEまで出来るようになっていた。

 一方、義父(75)も約4年使い続けた格安スマホのバッテリーがもたないため機種変更を計画していたらしく、義母の機種変更に同席する事になった。前回機種変更前の格安スマホを契約した際は、義父単独で携帯ショップへ向かい契約手続きを完了させたが、義父の思いがお店の店員になかなか伝わらず、相当苦戦して手続きを完了させた苦い記憶があり、今回は私と妻にお店の店員との通訳を頼みたいとの事で、同席する事になった。機種変更へ向かう際、私と妻からも義母と同じ機種変更を推奨したが、簡単には首を縦には降ってもらえなかった。

 お店での機種変更手続きは、義母を妻が対応し、義父を私が対応する形で契約手続きを開始した。義母の手続きは前述の通り簡単に事が運び、何一つ躓かずに手続きが完了した。義父はとにかくコスト重視で、月々の支払いが現契約(格安スマホ)以下でないと契約しないと言い出し、今回のお店には格安スマホのラインナップがないため、結局契約出来ず現契約(格安スマホ)のお店に問い合わせる事にするとの事で、お店を後にした。

 次の土曜日早朝、妻の携帯に義父から連絡が入り、格安スマホを機種変更したからセットアップをお願いしたいとの事で、妻は義母と同じ機種を選ばなかった事を理由に、機種変更したお店にお願いして欲しいと一度はボールを義父に返したが、再度依頼され次の日(日曜日)に私がセットアップする事になった。今回義父の機種変更手続きは、店頭で手続きしたのではなく電話対応のみで機種変更手続きをしたようで、電話の相手は若い女性だったらしく、家族全員が上手く乗せられたものと思っていた。その若い女性曰く、セットアップは以前よりも簡単で、分からない場合も電話対応で全て操作を指示してもらえるとの事で、顧客獲得のため電話対応サービス員の向上を図っているとの事だった。最初は新型の格安スマホが届いた平日の昼間に義父がセットアップを開始したらしいが、結局義父と電話対応のサービス員の言葉が噛み合わず、セットアップを断念し妻に電話してきたとの事だった。

 頼まれた私も格安スマホのセットアップを行った事などある訳もなく、先ずはマニュアルを読み始め、手続きの順番から確認しはじめると、横で義父が電話の向こうの人と話して欲しいの一点張りで、既に電話をかけ始めサービス員と話し始めた。直ぐに義父は私に代わって欲しいとの事で代わってみるとサービス員方も困っていて、やはり言葉が通じていない事が分かった。その後、私はマニュアルを基に手続きを進め、この電話で手続き出来る内容が電話番号の引継ぎのみである事を知り、義父にその旨を伝えると更に困った表情を浮かべていた。電話番号の引継ぎには数時間かかる事をサービス員から指示され、セットアップは一旦中断し夕方再開する事で、残りのセットアップはアドレス帳とE-メール及びLINEの再開手続きである事を義父と確認し、E-メールとLINEの再開手続きには登録時のパスワードが必要である事を伝えると、困った表情を浮かべ一旦お開きになった。夕方、セットアップを再開し電話番号の引継ぎが完了したが、E-メールとLINEが開通出来ない事が理解出来ず、イラつきながらセットアップを再開し、LINEの方は妻が得意で簡単に再開する事が出来た。E-メールのアカウントは旧機種の携帯内に入っているため分かったが、パスワードはそれらしいものをいくつか入力してみたが全て違うものだったらしく、パスワードの再発行手続きを調べ私的には簡単にできる事が分かり、その旨を義父に伝えるとこの先は平日に自分でやるからと、そそくさと帰ってしまった。もう少し義父が我慢できていれば、1時間以内でセットアップ完了出来るはずだったのに、我慢の限界だったみたいで後味の悪い終わり方になってしまった。

 更に一週間が過ぎ気になっていた義父のセットアップについて妻に聞いてみると、面倒くさいのでほっといてるとの事で、今度は妻がご立腹の様子でした。まだセットアップが完了していない事を察知し、妻から義父へ連絡させセットアップを再開しようと声を掛けると、飛ぶような勢いで義父が来た。E-メールのパスワードの再発行手続きを手順通り行っていくと、本人確認で登録している電話からでないと申請が出来ない事が分かり、登録電話が義父の自宅電話(固定電話)のため、今度は義父の自宅へ移動し手続きを再開したところ、約30分でE-メールも開通し、不通になっていた約3週間分のE-メールが一斉に届きとても喜んだ。

 その後、今回セットアップに必要となった、ID、アカウント、パスワード全てのデータを紙に記録し、更にその記録を義父携帯の写メ、私の写メ及び妻へ転送し共有する事にした。結局、携帯電話の機種変更に必要な事は下記の通りで、下記に必要な記録をきちんと保管しておく事が大事で、特に年長者殿のユーザーはその保管が出来ていない人が多いらしい。
 ① 携帯番号引継ぎのためのMNP申請
 ② アドレス帳の引継ぎ(通信、記憶媒体、または手動の何れかによる)
 ③ 契約会社のマイページ設定
 ④ E-メール再開通手続き(要アカウント、パスワード)
 ⑤ LINE再開通手続き
 ⑥ 写真引継ぎ(通信、記憶媒体、機種による)
 ⑦ その他、必要アプリの引継ぎ

 今回分かった事は、年長者殿の携帯契約の際は必ずご子息が同席し、契約の際はご子息が携帯会社のご担当と話すことが望ましい。E-メールのパスワード再発行手続きを電話対応にて進めていた際、義父がサービス員と会話すると全く通じていなく、サービス員は申し訳なさそうに、契約者さんではなくお隣におられる話が分かる方に代わって頂けないでしょうかと何度も言われ、それも我慢の限界に繋がってしまったものと思われる。また、後で分かった事だが、前回(4年前)の契約時最初に機種代(ハードウェア費)を払っていたらしく、月々の支払いが安い理由はそれだった。結局義父の費用はイニシャルコストとランニングコストを考えると、義母の同コストを比較すると若干は安いかもしれないが、手続きにかかった日数とMHより同等かそれ以上にも感じられる。

 最後に、本書を読んで気を悪くされた方には申し訳なくご容赦下さい。

以  上

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コラム

「初めての北陸地区」

株式会社トーエネック
営業本部 営業部 技術提案グループ
柏原 達司

はじめに

 今回は、計装士会の年度行事であります施設見学会について、平成30年中部・北陸地区において開催しました実施例を元に、計装士会の活性化に向け書いてみたいと思います。

現 状

計装士会は、平成9年に発足し現在23年を迎えます。2,367名 (令和2年1月15日現在)の計装士が会員として登録されています。2,367名というと現在の計装士1級、2級を合わせた資格取得者が約34,000名ですのでかなり少ない(7%)と感じます。
 計装士会は、下記の7地区に分けられ年度の活動をしています。
 ① 北海道・東北地区
 ② 関東・甲信越地区
 ③ 中部・北陸地区
 ④ 近畿地区
 ⑤ 中国地区
 ⑥ 四国地区
 ⑦ 九州・沖縄地区

 この中で、「中部・北陸地区」は愛知県を中心とした中部地区と、富山県、石川県、そして福井県の北陸地区を参加対象地区としておりますが、毎年度の見学会の実施を中部地区、主に名古屋市およびその近郊にて実施してきました。当然見学会への参加者は地元の計装士会会員(および一般参加希望者)であります。北陸地区からの参加者はありません。 この状況は、他の地区においても同様です。 各地区共、広範囲にわたり、中部・北陸地区での北陸地区の様なエリアは多くあります。特に北海道、沖縄地区は大変です。

活性化に向け

計装士会の入会者数は、前述しましたように約2,400名前後を推移しています。少子高齢化による現在の労働者数が問題となっていますが、その状況は計装士においても現れると思います。今後、計装士会に参加される会員の減少が予想されます。その前に何某かの対策を講じなければなりません。
 その対策の一つとして計装士会の今後に向けて現状の継続ではなく活動の範囲を広げることを考えました。今回の北陸地区での開催目的は、将来的により多くの計装士会員の入会を目指さすことにあります。

北陸地区

活動の範囲を広げるべく平成30年度は、今までの偏った地区活動を補正し、尚且つ地区特有の技術等を再認識すべく、北陸地区在住の計装士を参加対象とした「北陸地区」での活動を計画・実施しました。(開催報告は、「計装コミュニケーション 第44号(2019年3月)」を参照願います)
 これまでは北陸地区で実施したことはなく、見学会に参加した人はいなかった訳ですので、その状況を変えるべく北陸地区での計装士会会員に向け開催を計画したわけです。
 集合場所として設定した富山駅は、名古屋駅からJRの特急(在来線 JR特急「ワイドビューひだ」)を利用して4時間弱、JR新幹線を一部(名古屋―米原)利用しても30分程度しか所要時間は短くなりません。現在は、新幹線にて東京から金沢まで行くことができます。最速で2時間30分程度で移動することができますので、まさに近くて遠い中部地区と北陸地区といえます。
 上記の交通事情以外にもそれまでの実施実績のない地区での開催については、当然のごとく問題がありました。特に大きく分けて下記の2つがありました。

① 見学会に参加をお願いする計装士の募集について

参加をお願いします計装士の募集につきましては、北陸地区では初めてですので当然の如く案内を出す関係会社の選定から解決をしなければなりませんでした。まず計装士会事務局にお願いし、北陸地区に出先を持つ関東地区の企業をリストアップ、その会社の窓口の方に案内書を送付して、北陸地区の出先に向け参加を呼び掛けていただきました。しかし、いきなり案内を受けても何人の方が検討をされるのか不安でした。案の定、電話があったのは1名。関東地区にてお願いをしました企業の方からだけでした。

当初は、せめて最低5名程度の参加者か確保できないかと考えていましたが、その5名も集めることができず、非常に甘い想定であったと悩む毎日でした。
  そこで助け舟を出していただいたのがアズビル株式会社の加藤地区幹事です。アズビル株式会社殿は北陸地区にも拠点を構え精力的に営業活動をされています。そこで、加藤地区幹事と二人で主な関係先を個別に訪問し計装士会の施設見学会を説明し、また他の関係会社にも参加を呼び掛けに回った次第です。「計装士」についての意識の掘り起こしから始まりました。参加者は、我々幹事も含めてですが何とか14名で実施することが出来ました。

② 見学先として設定する施設について

二つ目の懸案事項は見学先です。先ずもって北陸地区に於いては、都市圏では当たり前のプラントまたは生産ラインを持った工場等の選定にはかなり苦労しました。インターネットに頼ると一般の方が参加される普通の見学会となってしまいます。何とか計装士会らしく内容を盛り込んだものにしたいと思案に暮れました。
 そのような状況におきまして、今回、富士電機関係会社の皆様のご尽力をいただき下記2社の施設を見学することが出来ました。対応をしていただきました皆様には重ねてお礼を申し上げます。
 施設① 北陸電機製造株式会社(富山県)
 施設② 発紘電機株式会社(石川県)
 見学先は決定したのですが、2社の距離は概ね100kmあり、当然移動はバスになります。細かなことですがバス会社はどこにお願いするのかから始まり、ルートの設定等、決めなくてはならない事項は多々ありました。
 東京の全国展開のバス会社に依頼をし、提携会社の現地のバスを利用しました。集合場所の富山駅から富山県滑川市(施設①)、続いて石川県白山市(施設②)へのルートを設定し、金沢駅および富山駅にて解散する行程となりました。

以上の様々な課題を解決することが出来、平成29年に企画しました北陸地区での見学会は足掛け2年をかけ無事終わることが出来ました。

これから・・・

最後に北陸地区の見学会を終えて、今後の展開を考えてみたいと思います。
 中部/北陸地区では、せっかく平成30年に北陸地区にて開催出来たのですから中部地区との交互開催を目指し定着した形に持ってきたいと思います。
 計画では、北陸新幹線も金沢から敦賀を経由し大阪まで延伸されます。また名古屋にもまだ計画段階ですが接続される話があるように聞いています。名古屋、または大阪との距離が現在よりかなり近くなります。北陸地区は中部・北陸地区ではなく関東圏、関西圏からも十分に
移動可能なエリアとなっていきます。中部・北陸地区に限定せず、他地区からの参加も視野に入れた計画を今後練っていければと思います。
 参加計装士数について減少傾向が想定されるならば、歯止めをかけるべく対策を講じなければなりません。今回の北陸地区の様に他地区においても何某かの働きかけをしなければなりません。
 まず地区幹事の増員です。現在実施していない他のエリアにも地区幹事を配置します。現地の活動エリアから未実施エリアに出向いていって実施するのでは効率的ではありません。当然費用面での見直しも必要です。北陸の場合は、前述しましたように協力していただけるメンバーにも恵まれ、総力で何とか形になったという思いです。一人でできるものではありません。
 次に実施地区を定型化します。定期的に実施する地区を設定することにより計装士の皆さんのスケジュールに組み込んでいただけるのではないでしょうか。また前以て準備や計画をすることが出来ます。
 以上、今回の北陸地区での見学会を終え、些細なことですが、感じたところを述べさせていただきました。
 計装士会の今後に向け、会員数の増加と会の活性化を目指していけたらと思います。
 最後になりますが、これからもより多くの会員に支えられ、明るく開かれた計装士会として発展していくことを祈願いたしまして筆をおく次第です。
                                             以  上

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活動報告(関東・甲信越)

① 株式会社秩父富士 小鹿野工場 株式会社秩父富士 両神工場 ② 秩父錦「酒づくりの森」

活動名① 株式会社秩父富士 小鹿野工場
  株式会社秩父富士 両神工場 
② 秩父錦「酒づくりの森」
実施日令和2年(2020年)2月21日(金) 8:30~19:00
場所株式会社秩父富士 小鹿野工場
 埼玉県秩父郡小鹿野町小鹿野755-1
株式会社秩父富士 両神工場
 埼玉県秩父郡小鹿野町両神薄236-2
秩父錦「酒づくりの森」
 埼玉県秩父市別所字久保ノ入1432
参加者33名(うち計装士会12名)
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者企画・研修委員 稲生 充
1.はじめに

 今回は「株式会社秩父富士 小鹿野工場・両神工場」および「秩父錦『酒づくりの森』」の見学会を実施しました。
参加者は総勢33名、うち計装士会からは12名が参加しました。
 バスにて池袋駅を出発し、最初の見学先である株式会社秩父富士 小鹿野工場に向かいました。小鹿野工場にて、秩父富士殿より工場概況のご説明をいただき、その後富士電機殿より「インバータによるファン・ポンプの省エネ手法」・「操作表示機器の概要」について講演頂きました。
 昼食後、小鹿野工場・両神工場にて電磁接触器、セレクタスイッチ、ヒューズ等の見学をさせていただきました。秩父富士殿の工場見学終了後、秩父錦『酒づくりの森』を見学、その後は、池袋駅までバスで移動し、解散となりました。
 当日は、昨今の新型コロナウィルスの流行に対する感染防止を考慮し、終日を通してマスクの着用、 手のアルコール消毒の徹底を図った見学会とはなりましたが、事故や遅延もなく全工程を完了し、無事に見学会を実施する事ができました。また、参加いただきました皆様からのアンケート結果も好評であり、見学内容についてご満足いただけたのではないかと思っております。

2.株式会社秩父富士殿 工場見学

 1)(株)秩父富士殿 会社概要
   会社名:株式会社秩父富士
   設立:昭和42年2月13日
   資本金:80,137万円
   従業員:474人
   事業所:1.本社・小鹿野事業所
        2.両神工場
        3.長若事業所

 (2)ガイド付き見学ツアー
    施設概要の紹介・説明後、2班に別れてコマンドスイッチ、集合表示灯、シートキーボード、ヒューズ等の制御機器製品の工場見学をさせていただきました。工場は、成形フロア、プレスフロア、組立フロアと大工程ごとにフロアが分かれており、かつ各フロアにおいて製作工程に沿ってラインが形成されておりました。生産比重に合わせた設備の増強/削減、それによる製造ラインの配置見直し、動線の短縮化等、常に効率化改善を 実施されていることを説明いただきました。
    製作ラインは、機械作業 /人力作業がMIXされた状態で形成され、大量単一種類の製作に関しては機械作業、また少量多品種の製作については手作業で行われていました。また、製造機械は、自社で開発・製作され
ているとの事でした。モノづくりのノウハウを知っているからこそ、人力に頼る部分、機械に頼る部分を区分けし、手作業と機械作業の絶妙なバランスをとることで、余分な設備投資をせずに工場運営ができていると感じました。
     品質管理においては、製造機械に対する日々のチェックシート(手記)を、データ化・蓄積保存・分析をすることで、設備の予防保全として活用されておりました。また、手作業で組み立てた製品の外観検査においては、カメラによる画像正誤識別を採用して、ヒューマンエラーの防止がされておりました。社員からのアイデア改善提案が、月に一人当たり10件ほど提出され計500件ほどになるとのことで、品質性と生産性を同時にアップできるような効果の大きな案に関しては、表彰を行っているとの事でした。この様な社員一人一人の取り組みが、結果的に高いレベルの品質管理が維持できている大きな要因であるということを説明いただきまし た。
    開発から製品設計、金型設計製作、製造設備設計製作、量産対応、品質保証まで全て自社完結させており、完全一貫体制を構築することにより、午前10時までの注文は当日中に発送という目標に対して達成率95%を実現している工場でした。

集合写真(株式会社秩父富士殿 小鹿野工場)
3.秩父錦『酒づくりの森』見学

 創業寛延二年(1749年)の株式会社 矢尾本店殿の酒蔵、秩父錦『酒造りの森』を見学しました。
 清酒秩父錦蔵元の歴史は、江戸中期、初代 矢尾喜兵衛 が寛延二年(1749年)、近江より出でて秩父大宮郷(現在の秩父市)に屋号「升屋利兵衛」の開業に始まり、創業270有余年、現在9代目となる歴史のある酒蔵でした。清酒醸造蔵見学の後、観光物産館にて『秩父錦』を代表とする美味しいお酒をお土産にして、帰路につきました。

秩父錦『酒づくりの森』
秩父錦『酒づくりの森』酒蔵資料館・物産館
おわりに

 今回は、制御機器を製作されているメーカを選定し見学会を企画しました。私自身、今回の見学会に参加したことで、自社の業態とは違う製造業でありながらも作業の効率改善活動やクリティカルパスの管理手法には自身の業務と共通する部分も多く、新たな気付きを得ることができ有意義な見学会となりました。参加いただいた皆様にも、何か得ることがあったのであれば幸甚です。
 最後に今回の見学会にご協力いただきました株式会社秩父富士殿、及び株式会社矢尾本店殿の関係者皆様に厚く御礼申し上げます。

以 上

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活動報告(中国)

①「中国新聞社印刷工場(ちゅーピーパーク)」 ②「岩国サンライズクリーンセンター」

活動名①「中国新聞社印刷工場(ちゅーピーパーク)」
②「岩国サンライズクリーンセンター」
実施日令和2年(2020年)2月14日(金)9:20~17:00
場所①「中国新聞社印刷工場(ちゅーピーパーク)」
  広島県廿日市市大野387-3
②「岩国サンライズクリーンセンター」
  山口県岩国市日の出町2-75
参加者17名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者中国地区担当幹事 平方 清志
1.はじめに

今年度は午前中、宮島口に近い中国新聞社の印刷工場を見学し、午後は岩国に移動して岩国サンライズクリーンセンター(ごみ処理場)を訪問しました。

2.施設概要

 ①中国新聞社の印刷工場は、新聞の刷り上げが、最高速度で1時間に18万部を 印刷する世界トップクラスの能力を持つ工場です。
 ②岩国サンライズクリーンセンターは、最新のごみ焼却設備で、1日80トンの ごみを処理できる焼却炉が2基設置され、ごみ焼却中の余熱で発電を行って います。

3.見学内容

 まず、中国新聞の印刷工場では、工場入口の1階ギャラリーで全体の印刷工程 について説明を受けた後、印刷工程順に実際の設備を各要所で説明を受けながら 見学し、各工程や過去の印刷歴史を学習しました。また新聞の印刷なので、毎日 時間との闘いですという言葉は重く感じました。

出荷ゲート

 午後は岩国サンライズクリーンセンターの見学です。ここでは3階工場管理棟 の会議室で、ごみ焼却処理設備の概要について説明(ビデオ含)を受けました。 1日80トンのごみを処理できる焼却炉が2基設置され、850℃以上の高温で燃や すことでごみを完全燃焼させること。また、ごみを燃やした時に発生する熱を回 収して蒸気タービン発電機で発電しており、発電能力は,900kwで発電した電気 はクリーンセンター内で使用するだけでなく、余った電気は隣接する余熱利用施 設や電力会社に売電され、施設の運営に有効利用されていました。 ごみを燃やすと発生する排ガスの中の有害物質を最新技術で取りのぞいており、 更に燃やしたごみの灰は、セメント原料として再利用していることを学び工場全 体を見学させて頂きました。そして、この岩国サンライズクリーンセンターの近 隣には岩国飛行場があることから高さ制限があり、建設時のクレーン作業および 建物全体の高さ制限等に苦労されたとお聞きしました。驚いたのは、航空障害と なる煙突のないクリーンセンターでした。排出する水蒸気による霧で白くなるの も航空障害となることから、その抑制対策など最新の計装技術が導入されている ことを学びました。

中央制御室
外観写真
発電機
4.見学を終えて

 心配していた天気も好天し、絶好の見学日和となり、新聞の世界最速に迫る高速印刷技術と環境にも配慮した最新のごみ焼却設備を実感し、無事見学会を終了しました。 終わりに、この見学会で、中国新聞社及び岩国サンライズクリーンセンターの皆様には各要所で丁寧な説明をしていただき、こころより感謝申し上げます。

以 上

集合写真
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活動報告(中部・北陸)

みなとアクルスエネルギーセンター

活動名みなとアクルスエネルギーセンター 
実施日令和元年(2019年)12月10日(火) 14:00~16:00
場所みなとアクルスエネルギーセンター 
  愛知県名古屋市港区港明 2-2-2
参加者29名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者中部・北陸地区担当幹事 小池 敏明
概 要

 先進のスマートエネルギーシステムの見学
   ●ガスコージェネレーション、太陽光発電、NAS電池など環境に配慮した電力供給システム
   ●排熱回収型冷温水機、バイナリー発電機、運河水利用ヒートポンプなど熱利用の高度化
   ●電気・熱・情報のネットワークCEMS(コミュニティ・エネルギー・マネジメント・システム)によるエネルギーマネジメント

エネル―センター内ロビ―
1.はじめに

 令和元年度の中部・北陸地区計装士会見学会は、名古屋市南部の港区に位置し、未来のまちスマートタウンを目指す「みなとアクルス」のエネルギー供給施設である「みなとアクルスエネルギーセンター」を見学しました。
  12月に入り寒さが厳しくなりつつあるなか好天に恵まれ風も無く穏やかな1日でした。年末も近づき慌ただしいなか多数の皆様にご参加いただき感謝いたします。

2.見学報告

(1)概要説明について
  「みなとアクルス」のスマートタウン実現に向けた開発背景、開発コンセプト、開発概要などを説明していただきました。また、まちの特徴として、「みなとアクルス」の語源にもなっている、AQUA(運河・自然に親しみ、こころ潤うまち)、LINK(人と人、人と地域をつなぐ笑顔咲くまち)、SMART(スマートエネルギーを実現し、進化するまち)について説明をしていただきました。

概要説明

(2)施設見学について
  スマートエネルギーシステムを構成しているガスコージェネレーション、バイナリー発電機、蒸気吸収式冷凍機、運河水利用ヒートポンプ、ガス焚きジェネリンク、NAS電池など省エネルギーを実現する熱源設備を見学することができました。
  また、屋上からは緑の多い自然豊かな都市空間や地域との共生を実現している事が実感できる既存エリアの風景を見ることができました。
   環境に優しい省エネルギーを実現するモデル地区というだけでなく災害時における地域へのエネルギー供給体制や地震・津波対策など地域との連携を実現している点が特に印象に残りました。

施設内見学

3.アンケートについて

 参加者の皆様に回答いただいたアンケートの結果については、概ね、「面白かった」「理解できた」「役に立ちそう」との高評価を多くいただきました。また、ほとんどの方からこのような施設見学会にまた参加したいとの回答をいただきました。意見としては、今回のように名古屋周辺だと参加しやすいとの意見をいただきました。

集合写真
4.おわりに

 当日の案内や説明をしていただきました、東邦ガス株式会社様、並びに今回の見学会にご協力いただいた関係各位に感謝し御礼を申し上げます。

以 上

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活動報告(関東・甲信越)

「在室者の気持ちに寄り添う新しい空調計装の世界」

活動名「在室者の気持ちに寄り添う新しい空調計装の世界」
講師
福田 一成 講師
  アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー マーケティング本部 シニアアドバイザー
実施日令和元年(2019年)11月27日(水) 14:00~17:00
場所東京電業会館 3F会議室
  東京都港区元赤坂1-7-8
参加者21名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者企画・研修委員 稲生 充
1.はじめに

 令和元年度 関東・甲信越地区の勉強会を、令和元年11月27日に東京電業会館にて実施いたしましたので、ご報告いたします。

2.講習会内容

 テーマ「在室者の気持ちに寄り沿う新しい空調計装の世界」 

 次の4つのテーマに分け、講義が進められた。
   1「新しい空調計装のためのBEMS要素技術」
   2「パーソナル温冷感情報による空調制御」
   3「個人が選択する温冷空間」
   4「さらに気遣いあふれるおもてなし制御」
    ~設備の制約を制御でカバーする工夫~

講習風景
3.まとめ

 室内温熱制御において室温設定は最重要ファクターであるが、従来の温度設定 方法には以下の問題があることを教えていただきました。  
  ・建物の消費エネルギーが増加
  ・熱いと感じる人、寒いと感じる人の対立
 クラウドBEMSなどのプラットフォームの整備により、在室者は、『熱い』『寒い』 (パーソナル温冷感情報)をスマートフォン等を利用して申告することが可能と なり、システムが空調の設定値(室温設定など)を決定、過剰な設定値にならな い制御が可能となった事を教わりました。(温冷感申告空調の工夫)
 最後に、ご多用中にもかかわらず、講師としてご説明・解説をいただきました福田一成 講師には厚く御礼を申し上げるとともに、ご参加くださった皆様のご活躍をお祈り申し上げます。

以 上

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活動報告(四国)

① 石丸製麺株式会社 ② 四国電力株式会社 坂出発電所

活動名① 石丸製麺株式会社
② 四国電力株式会社 坂出発電所
実施日令和元年(2019年)11月22日(金) 8:20~16:20
場所① 石丸製麺株式会社
   香川県高松市香南町岡 701
② 四国電力株式会社 坂出発電所
   香川県坂出市番の州町 2
参加者19名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者四国地区担当幹事 森 敬二
1.はじめに

 今回の見学コース検討にあたっては、香川県といえば「うどん県」と言うことでうどん工場がいいかなと思い、革新的な製造技術に取り組んでいる石丸製麺㈱の見学を決めました。また会員になじみが深く業務にも関係する発電設備として隣市の四国電力㈱坂出発電所の見学を計画しました。

2.見学内容

 (1)石丸製麺株式会社

 石丸製麺㈱は、1904年、昔から小麦が盛んだった「高松市香南町」に創業者 石丸好太郎が開いた乾麺製造業から始まりました。その後、製粉業を開業し、以来、乾麺製造設備への積極的な投資や技術の向上に努めてきた会社です。
 工場が第1~第3工場までありますが、今回は第3工場を見学しました。
 まず、1Fエントランスホールの直径5mの水車の前で概要説明がありました。引率して頂いた説明者は、代表取締役社長である石丸氏です。
 次に2F展示ホールに移動、讃岐うどんの歴史や製造工程について、明るく開放的な空間の中で、楽しみながら石丸製麺を知ることができ、手打ちの技術を機械技術で実現した最先端の製造工程を見ることができました。
 その後、3F包装工程・讃岐うどんギャラリーで原材料である小麦や小麦の製法についても学ぶことができました。
 最後に、うどん試食。国産小麦100%の麺を堪能し、お買い物コーナーでは工場でできた製品を買うことができました。

概要説明
麺圧延器
集合写真

 (2) 四国電力株式会社 坂出発電所

 坂出発電所は、石油・天然ガス・コークス炉ガスを燃料とした火力発電所であり、四国の電力消費の変動を調整されております。発電機出力は、1~4号機で138.5万キロワット。
 まず、PRセンターで発電所紹介DVDを視聴後、合田センター所長による発電設備の模型を用いて発電方法の概要説明、その後発電所内を見学させて頂きました。
 発電所敷地面積は約36万平方メートル(甲子園球場の約9倍)のため、発電所のバスにて移動、このバスは発電所所員の通勤バスとしても活用されているそうです。
 最初は2号発電設備(2016年8月運開)の外観、淡いブルーの色彩が印象的でした。
  次に構内を一周しながら取放水・油タンク設備、煙突などを車窓見学しました。
 この後、中央制御室では運転員の勤務体制から発電設備の運転の様子を伺うことができました。運転の中心部であり、非常に興味深く見学させて頂きました。
 そして、旧1号ボイラの最上階、廻りの工場地域も見渡せます。
 最後に、PRセンターに戻り質疑応答の場を設けて頂き、制御装置のメーカやトラブル頻度等の質問に答えて頂きました。

概要説明
旧1号機タービン(実物)前集合写真
2号機コンバインドサイクル発電機
3、4号機制御室
おわりに

 お忙しい中、ご参加いただいた会員の皆様と見学案内していただきました石丸製麺㈱ならびに四国電力㈱坂出発電所の方々には深く感謝いたします。

以 上

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活動報告(九州・沖縄)

『在室者の気持ちに寄り添う新しい空調計装の世界』

活動名『在室者の気持ちに寄り添う新しい空調計装の世界』
講師
アズビル株式会社
ビルシステムカンパニー マーケティング本部
シニアアドバイザー 福田 一成 講師
実施日令和元年(2019年)11月15日(金)14:00~17:00
場所㈱九電工 福岡支店 1F 多目的ホール
参加者28名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者九州・沖縄地区担当幹事 今吉 俊博
はじめに

 九州・沖縄地区では令和元年度の活動として、11月15日(金)に上記内容にて勉強会を開催致しました。
以下に概要の報告を致します。

講演風景

福田講師 講演風景
講演内容

 テーマ  『在室者の気持ちに寄り沿う新しい空調計装の世界』
       ~個々人の温冷感による空調制御や3次元温熱環境可視化の最新動向~

 1.ビル空調における温冷感制御の新しい波
   
   オフィス利用者と空調システムのコミュニケーションの基本は温度設定で、この操作そのものが人の温冷感を捉える情報と考えらる。壁のセンサではなく、人を中心に考え、その人がどう感じているかの情報(温冷感申告)で制御する。それは制御により温冷感の「おもてなし」と言える。

 2.新しい空調計装のためのBEMS要素技術
   クラウドサービスの特徴を生かすことにより、従来のBEMS機能には無かった新しい価値を提供できる。
   ビル向けクラウドサービスは、クラウドでエネルギー管理・設備管理・テナントサービス機能を提供する。

 3.パーソナル温冷感情報による空調制御
   室内温熱制御において温度設定は最重要ファクターである。しかし従来の温度設定方法には、温度設定の開放と壁設置型設定器の課題があった。
  そこで、クラウドBEMSなどのプラットホームが整備できたので温冷感申告データより様々な効果的な制御が可能になった。
   温冷感申告空調の工夫
   ・過剰冷暖設定への対応
   ・過剰冷暖設定への対応
   ・申告判別
   ・環境による判別
   ・時間帯による判別

 4.さらに気遣いあふれるおもてなし制御
   IT化された空調制御システムでは各VAVの開度情報はすべてBEMSに集約でき、VAVの合計風量が把握でき、VABの全閉制御が可能になる。
  1)VAV合計風量による給気温度と全閉・最小開度変更制御
  2)VAV全閉に対する温冷感申告への対応
  3)冷暖同時要求に単一ダクトVAV方式で対応する制御
  4)冷暖フリーVAV制御の実証実験

 5.温冷感申告でさらなる快適を提供するこれからの展望
   人は「温度一定の環境」よりも「周期的に変動する環境」の方が、満足感を得られる特徴がある。
  申告方式では、温度を一定に制御しなければならない制約がないため、周期的に環境を変動させることも可能で、満足感を得られ易い環境を構築できる。

所 感

 今回の勉強会では、クラウドBEMSなど最新の空調制御に関する実情や動向について興味深く学ぶことができました。
 ご多忙中にもかかわらず、講師をお引き受けいただきました福田講師に厚くお礼申し上げるとともに、今後とも益々のご活躍をお祈り申し上げます。

以 上

カテゴリー
活動報告(東北・北海道)

新規制基準に対応した安全対策が強化された女川原子力発電所 並びに女川原子力PRセンターの見学

活動名新規制基準に対応した安全対策が強化された女川原子力発電所
並びに女川原子力PRセンターの見学
実施日令和元年(2019年)10月31日(木)12:30~18:30
場所東北電力株式会社 女川原子力発電所 女川原子力PRセンター
宮城県牡鹿郡女川町飯子浜夏浜118
敷地面積 約 1,730,000 ㎡
参加者22名 (内計装士会8名)
主催一般社団法人 電気設備学会東北支部
協賛なし
共催一般社団法人 日本電設工業協会東北支部
公益社団法人 日本技術士会東北本部電気電子部会
計装士会
報告者東北・北海道地区担当幹事
大束 裕彦
1.はじめに

 今回の見学会は、東北電力㈱殿のご厚意により一般社団法人電気設備学会東北支部主催、公益社団法人日本技術士会東北本部電気電子部会及び計装士会の共催で実施しました。
 東北電力㈱は、1951年に設立され、東北6 県及び新潟県に電力供給を行っております。
 見学させて頂いた女川原子力発電所は、東北電力初の原子力発電所であり、1984年に1号機、1995年には2号機、そして2002年には3号機の運転を開始しました。
 震災で停止して以降、1~3号機まである発電設備は現在発電しておりませんが、2号機の再稼働に向けて安全対策工事を進めている最中です。
 御担当の方の案内のもと行った施設見学につきまして下記に報告いたします。

2.見学内容

 女川原子力PRセンターにて発電所概要及び実施している安全対策についての説明を受けた後、バスにて場内の見学をさせて頂きました。

 1)女川原子力発電所について

 当発電所は、低濃縮二酸化ウランを燃料とした、1~3号機の発電設備があります。
 発電設備の合計出力は217万4千kwであり、宮城県で使用される1年間の電気とほぼ同じ量の電気を発電することができます。
 1号機は、2018年12月21日に運転を終了しており、34年間の計画で廃炉にしていきます。
 2号機は現在、再稼働に向けた審査のため安全対策工事を進めており、合格すれば東北電力で初の再稼働する原子力発電所になります。
 3号機は現在保守を行っており、2号機に次ぐ再稼働を目指しています。

設備概要

1号機 2号機 3号機 
営業運転開始 1984年6月 1995年7月 2002年1月 
定格電気出力524,000 kw 825,000 kw 825,000 kw 
原子炉形式 沸騰水型(BWR) 沸騰水型(BWR) 沸騰水型(BWR) 
原子炉格納容器 マーク Ⅰマーク Ⅰ 改良型マーク Ⅰ 改良型
燃 料低濃縮二酸化ウラン低濃縮二酸化ウラン低濃縮二酸化ウラン
燃料集合体368体560体560体

 2)震災前の安全対策について

  女川原子力発電所は、発電所としては最も震源地に近く震度6 弱の地震を記録し、福島第一原子力発電所と同じ最大高さ13mの津波に襲われました。しかし、同発電所は大きな被害を受けることはありませんでした。  
 被害を最小限に留めた要因は、「炉を止める」「炉を冷やす」「放射性物質を閉じ込める」という3つの徹底した対策が機能したことにあります。

  昭和三陸地震をはじめ、過去に大津波の襲来があった地域であることを踏まえ、敷地の高さを14.8mに設計しており、そもそも津波が発電所に押し寄せにくい造りになっていました。
 また、震災前に6,600カ所の耐震工事を行っており、揺れへの対策も進めていました。そして安全に炉を停止するために必要な電源として、送電線を複数持っており、そのうち 1回線から受電することで対応可能な状態でした。(図1)
当時は仮に送電線が壊れても非常用電源により、必要な電気は確保できる状態にありました。
 このような徹底した安全対策により発電所は設計通りに安全に停止しました。

*1:東北電力第1回安全検討会資料
図1 震災前の安全対策

 停止後の原子炉は発熱しているので冷却のために水の確保が重要になります。
  緊急時には海水ポンプを用いて水を確保するようになっており、その際に津波の引き波で水が
 逃げないよう傾斜をつけて取水路を設計していました。(図2)
 福島第一原子力発電所では、この海水ポンプが防波堤の内側(発電所側)に設置されており、
 防波堤を越えた津波でポンプが浸水してしまい原子炉冷却ができなくなった問題がありました。                          *1:東北電力第1回安全検討会資料

図2 福島第一原子力発電所との違い

 3)安全な発電所を目指して

 女川原子力発電所は常に新しい技術や知見を導入し、様々なリスクに対して何重にも対策を行っています。
 地震対策として今後起こりうる最大の地震を想定し、東日本大震災の約2倍の地震にも耐えられる建屋づくりを実施しています。また周辺の森林火災が発生した場合に備えて防火帯を設置し、火災による重要施設の機能が失われないようにしています。
 訓練センターでは、約900通りのシミュレーションで運転員の訓練をして、福島第一原子力発電所のブラックアウトの中での運転操作状況も再現することが可能です。
 また、福島第一原子力発電所のように水素爆発を防ぐため、水素結合装置を設置して、触媒による水素と酸素を結合させて水に戻すことで水素を除去し、原子炉建屋内での水素爆発を防止するようにしています。
 さらに、同発電所所員の一部の方は敷地近くの寮に住んでおり、有事の際にはいつでも駆けつけることができる体制を取り、訓練も行っています。
 万一に備えた多くの設備を実際に動かすのは人であり、どんな事態でも冷静・迅速・的確に対応できるよう日頃から訓練は欠かさないとのことです。
 2号機の再稼働に向けて「世界最高水準」の安全レベルである新規制基準のクリアはもとより、発電所で働く人々が一丸となり、自主的な安全性の向上に取り組まれています。
 より厳しい条件を考慮してリスク対策を進めるだけではなく、重大な事故発生にも対応することができる能力強化を実施することで、女川原子力発電所では「常に備える」を意識した安全レベルの強化が図られていました。
 発電所では常に地域と連携して工事を行っています。女川町は海に囲まれ、山による隆起が複雑だったことで水道を引きにくい地域だったそうです。原子炉を冷やすためには大量の淡水が必要で、女川町と連携して水を引くことにより、原子炉の冷却水の確保だけではなく、周辺住民の方への生活用水の確保も行いました。
 さらに、安全対策工事で出た土などは、女川町や石巻市の復興工事に送られており、女川原子力発電所が地域と共にある発電所であると実感することができました。

3.終わりに

 今回の見学会で、東北電力株式会社 女川原子力発電所の皆様にはお忙しい中、説明及び見学のご案内をして頂き、こころより御礼申し上げます。
 参加者からは発電所の安全性向上に向けた取り組みや福島との違いについて関心を持ったとの声が多く寄せられました。通常、簡単には入場できない場所のため、貴重な機会を設けていただいたことに対して、深く感謝したします。

女川原子力PRセンター入口にて(参加者一同)
カテゴリー
活動報告(東北・北海道)

「在室者の気持ちに寄り添う新しい空調計装の世界」 ~個々人の温冷感による空調制御や3次元温熱環境可視化の最新動向~

活動名「在室者の気持ちに寄り添う新しい空調計装の世界」
~個々人の温冷感による空調制御や3次元温熱環境可視化の最新動向~
講師
福田 一成 講師
アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー
マーケティング本部 シニアアドバイザー
実施日令和元年(2019年)9月27日(金) 13:30~17:00
場所ハーネル仙台 「いちょう」 5F
宮城県仙台市青葉区本町2-12-7
参加者21名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者東北・北海道地区担当幹事 郡司 恵次
1.はじめに

 令和元年度東北・北海道地区の勉強会を、令和元年9月27日にハーネル仙台にて実施いたしましたので、ご報告申し上げます。

2.講習会内容

テーマ:「在室者の気持ちに寄り添う新しい空調計装の世界」
 ~個々人の温冷感による空調制御や3次元温熱環境可視化の最新動向~

 下記の内容についてスマート社会IoTに対応したクラウドサービス、シェアオフィスの多様化に対応した新たな空調技術等々今後の動向を踏まえた最新技術事例等を多数ご紹介頂き、 計装士の今後のビジネス展開や知識をご教授頂きました。

  1.新しい空調計装の為のBEMS要素技術
   ・クラウドBEMSサービス
   ・赤外線アレイセンサー

  2.パーソナル温冷感情報による空調制御
   ・室内温度設定が温度制御の最重要ファクタ-で
    ある。
   ・室温設定の問題点
   ・温冷感申告空調の登場
   ・温冷感申告空調の工夫
   ・温冷感申告空調の実証実験

福田 講師

  3.個人が選択する温冷空間
   ・3次元温熱環境可視化システムの構築
   ・3次元温熱環境可視化システムの概要
   ・3次元温熱環境可視化システムの実証事例

   4.さらに気遣いあふれるおもてなし制御
    ~設備の制約を制御でカバーする工夫~
   ・寒い暑いの原因となるVAV最小風量対策
   ・VAV合計風量による給気温度と全閉・ 最小開
    度変更制御
   ・VAV全閉に対する温冷感申告への対応
   ・冷暖同時要求に単一ダクトVAV方式で対応す
    る制御

   ・冷暖フリーVAV制御のトレンドイメージ
   ・冷暖フリーVAV制御の実証実験
   ・温冷感申告による冷暖フリーVAV制御判断
   ・温冷感申告でさらなる快適を提供するこれからの展望

  5.IoT時代への対応・実証事例の紹介
   ・IoTで何が変わるのか
   ・新しいテクノロジー・スタック
   ・ビルにおけるIoTインテグレーション
   ・IoT時代には企業間の連携が不可欠
   ・BEMSによるスマート機器IoT化実証事業

   6.最新政策と計装~省インフラという技術
   ・事例紹介等々

3.まとめ

 本講義を受講させていただき、大変勉強になったと感じています。
 最新のIoTに対応したクラウドサービスの実情や今後動向、オフィスの快適空調制御の 動向など事例を交えながら分かりやすくご説明頂きました。
 最後に、ご多忙にもかかわらず、講師 福田様には厚く御礼申し上げるとともに、ご参加 頂いた皆様の益々のご活躍をお祈り申し上げます。

以上