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活動報告(九州・沖縄)

玄海エネルギーパーク他見学会

活動地区九州・沖縄地区
活動名   玄海エネルギーパーク&唐津バイオマス発電所見学会
実施日令和7年2月27日(水) 9:00~17:00
参加人数10名
主 催計装士会
報告者計装士会 九州・沖縄地区 
代表幹事 今吉 俊博

1.はじめに

  今年度の九州・沖縄地区の施設見学会では、九州北部の佐賀県唐津市周辺にある2つの発電所を見学させてもらいました。

  一つは原子力発電所(※1)であり、もう一つはバイオマス発電所です。これらの発電所は全く異なる熱源で稼働していますが、いずれも発電時のCO2排出がほとんどない(※2)という特徴を持っています。

  両施設は近年何かと話題に上がることが多い発電所ですが、見学、説明や質疑応答を通して施設の詳細を学び、参加者の皆様の知見がさらに深まったことと思います。

※1:玄海原子力発電所は隣接する展示施設「玄海エネルギーパーク」を見学しました。

※2:建設時、燃料輸送時などは除く。

バイオマス発電所はカーボンニュートラルで実質排出しないという意味で。

2.見学内容

 (1)玄海エネルギーパーク

  玄海エネルギーパークは、玄海原子力発電所に隣接する施設で、原子力のしくみや安全性、放射線などについて楽しみながら学ぶことができる施設です。

この施設には、地下1階、地上4階の吹き抜け空間にそびえる、高さ約13m、内径約4.4mの実物大の原子炉模型があります。内部には、大型モニタが組み込まれており、原子炉の働きや原子力発電のしくみを分かり易く紹介していました。

  さらに、玄海原子力発電所では、福島第1原発の事故以降、従来の安全対策に加え新たな安全対策を導入し、緊急時対応能力を強化しています。この安全対策について、多くの時間を割いてご説明頂きました。

新たな安全対策:防火帯の新設、救急時対策棟の建設、可搬型設備の導入(大容量空冷式発電機・可搬型ポンプなど)、電気式水素燃焼装置など

 玄海原子力発電所の概要

 1号機 (廃炉中)2号機 (廃炉中)3号機4号機
電気出力55万9千kW55万9千kW118万kW118万kW
原子炉方式加圧水型軽水炉(PWR)
出力165万kW165万kW342万3千kW342万3千kW
燃料低濃縮ウラン燃料、 MOX燃料低濃縮ウラン燃料
運転開始1975年1981年1994年1997年
エネルギーパーク全景(九州電力㈱HPより)

玄海原発の全景を眺めながら安全対策の説明

燃料棒の説明状況
原子炉の実物大模型

(2)唐津バイオマス発電所

  1)概 要

   唐津バイオマス発電所は、唐津市西部の市街地にある丘陵地に2021年1月より建設されており、見学当日は2025年3月の運転開始を目指して試運転の真最中でした。

        

    設 備 容 量:49.9MW

    想定年間発電量:約35,000万kWh

           (一般家庭約11万世帯の年間使用電力量に相当※施設HPより)

    発 電 効 率:約40%

    燃     料:木質ペレット、パーム椰子殻(PKS)

    ボ  イ  ラ:循環流動層ボイラ

    復  水  器:空冷式復水器

    発 電 事 業 者:合同会社唐津バイオマスエナジー

    連 携 電 圧:66kV

    系 統 接 続 点:九州電力送配電株式会社 唐津変電所

            ※約1.7kmの自営線により接続

   

発電所の概要説明
中央制御室
空気式復水器の下部
ボイラー架構より復水器方面

2)燃 料

  唐津バイオマス発電所の燃料は、木質ペレット、パーム椰子殻(PKS)の2種類で、バイオマス燃料100%で運転しています。

  燃料は、唐津港に陸揚げされ、発電所までの約5kmの道のりを専用コンテナに詰められて運搬されます。

  一日の燃料消費量は約600~700tで、運搬されるコンテナは約20t入ることから、1日に30~35箱を消費します。

燃料コンテナより投入ホッパーへの投入状況

 

3)安全対策

  燃料の木質ペレットは、単体で使用するとコンベア移送中などに一部が粉化し、それが舞い上がることで粉塵爆発が起こった事例があるとのことです。そこで、粉塵爆発を防止する目的で粉化し難いPKSを混ぜて、混焼運転が行われています。

  燃料サイロは、木質ペレット用とPKS用の2基あり、下部の払出部にはインバータ制御の排出装置が設置されています。この装置により、木質ペレットとPKSの排出量を任意に設定でき、目的に割合で混合できるよう制御されています。

  また、燃料サイロの火災対策として、酸素を遮断するための窒素発生装置が備えられています。この装置は、空気中より窒素を連続的に取り出し、鎮火するまで連続的に注入し続けることができます。

  さらに、燃料の発酵などによる自然発火を防止する目的で、燃料バンカ内に複数の温度計を設置し、燃料の温度を常に監視しています。

4)用 水   

  発電所は唐津市の住宅地に隣接しており、周辺に工業用水源がないため、大量の取水が地域の給水に影響を及ぼさないよう、用水のほとんどを循環処理して使用しています。

このため、発電所の規模に対して純水装置は比較的小さく見えました。また、見学時の試運転期間中は、必要な用水を給水車での給水で対応し、排水についても試運転中に発生した排水は仮設プールを設置して処理を行っていました。

燃料バンカーに取付けられた窒素発生装置

5)地域密着と周辺環境への配慮

  先に述べた通り、発電所は住宅街が近くに位置しており、周辺住民の方からのご理解を頂くため、周辺環境への配慮と地域住民の方との交流活動を重視していました。

  周辺環境の配慮の具体例として、復水器ファンからの騒音を抑えるために制限を設け、それを超えないよう設備の改修を実施。また、燃料運搬についても、最短ルートではなく、遠回りでも最も安全と考えられるルートを選定していました。

  さらに、地域交流活動にも積極的で、建設中の段階から地元の高校で再生可能エネルギーとバイオマス発電所について講義を行うなどの取り組みを進めていました。また、地域とのつながりを深めるため、敷地内で秋祭りを開催するなどの活動も行っていました。この秋祭りは、所長の加藤様が過去に住んでいた地域の工場でこのような地域交流行事があり、それに感銘を受け発案したものだそうです。

唐津バイオマス発電所内にて集合写真

3.おわりに

  今回の施設見学会では、2つの異なる方式の発電所を見学させて頂きました。

  玄海原発では、安全基準を満たすよう対策を着実に実施していることが、目で見て分かるかたちでご説明頂き、報道されているような強固な安全対策が実際に行われいることが実感できました。なお、原発内も見学可能でしたが、時間の制約により今回は取りやめました。今後、機会があれば原発内部の見学にも参加してみたいです。

  唐津バイオマス発電所では、試運転中にもかかわらず施設見学にご対応頂き、深くお礼申し上げます。また、周辺住民の方々にご理解を頂くため、積極的に地域と交流している姿は、他の発電所では見たことが無く、大変印象的でした。

  最後に、今回の見学会にご協力いただいた玄海エネルギーパークの方々、唐津バイオマス発電所にてご説明頂きました加藤所長様及び施設の方々、計装士会をはじめ関係者の方々に感謝し御礼申し上げます。

【余 談】

  玄海エネルギーパークにて、「6Wh(核燃料ペレット1個の100万分の1のエネルギー)を発電するには、自転車を何秒こげば達成できるか」というゲームがありました。施設内を案内してくださったスタッフの方によると、このゲームのこれまでの最高記録は、19秒とのこと。しかし、筆者は見事16秒を達成し、「過去最高」をマークしました! (スタッフの方の記憶内において)

発電体験ゲーム機
発電達成時間記録装置

【執筆者】

今吉 俊博

株式会社九州電力

技術本部 電気技術部 電気技術二課   電気プラントチーム 副長