| 実施日 | 令和7年(2025年)2月18日(木)12:15~17:00 |
| 場所 | 福島県立テクノアカデミー浜 |
| 参加者 | 22名 |
| 主催 | 一般社団法人 電気設備学会東北支部 |
| 協賛 | なし |
| 共催 | ・公益社団法人 日本技術士会 東北本部電気電子部会 ・計装士会 |
| 報告者 | 三機工業株式会社 東北支店 建築設備技術部 設備技術2 菊池 雄太 |
1.はじめに
今回の見学会は、福島県立テクノアカデミー浜様のご厚意により一般社団法人電気設備学会東北支部主催、公益社団法人日本技術士会東北本部電気電子部会及び計装士会の共催で実施しました。
今回見学させて頂いた福島県立テクノアカデミー浜は、地域産業におけるエネルギー活用の高度化を目指し、太陽光発電や風力発電、水素利用、蓄電池など、持続可能なエネルギーに関する多彩な設備を整備しております。また、完全自家消費型エネルギーマネジメントシステムを活用し、効率的なエネルギー管理と省エネの取り組みを実施している施設となります。
施設としては、職業能力開発短期大学校・職業能力開発校を併せ持つ、総合的な職業能力開発を行う公共職業能力開発施設として利用されております。
見学させていただいた内容につきまして下記に報告いたします。
2.見学内容
(1)EMS(エネルギーマネジメントシステム)
最初に見学した内容として、施設に導入した様々な再生可能エネルギーを統合制御し、一体化したシステムとして運用しているEMSを見学しました。
EMSとは太陽光発電や風量発電などをただ発電させるのではなく、建物で効率的に使うなど、創ったエネルギーを管理・制御するための情報機器・コンピューターです。電気などのエネルギーは目に見えないため、ちゃんと発電できているか、どこで使われているか、電気量を計測して表示する見える化・可視化、それを基に再エネ設備に異常がないか監視・管理する、必要に応じて再エネ設備を制御する機能を持っています。

EMSではエネルギーを見える化しており、施設の電力使用状況に合わせたエネルギーの効率化した運用が見られました。実際のEMSのモニター画面でも状況が見えますので、訪れた方々にも分かりやすい内容となっておりました。
(2)再エネ水素蓄電池システム
次に見学した再エネ水素蓄電池システムでは、水電解装置(水素生成装置)を用いて水素を生成し、水素タンクへ保管、保管した水素を燃料電池で発電するシステムとなります。
水電解装置とは、電気と水を用いて水素を生成する装置です。水素を生成する方法はいくつかあり、天然ガスなどからつくる方法もありますが、その過程で二酸化炭素を排出します。水電解装置は太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電気を用いることで、二酸化炭素を排出せず、地球に優しいクリーンな水素(通称:グリーン水素)をつくることができる装置です。
燃料電池とは、水素を燃料にして発電する装置です。ガソリンなどを燃料にする場合とは異なって、二酸化炭素を排出しないため、地球に優しい発電設備として期待されています。
例えば、燃料電池自動車(通称:FCV)は、ガソリンの代わりに水素を燃料にすることで、排気ガスで大気汚染や地球温暖化を進めることがありません。
燃料電池の仕組みとしては、水素は酸素とプラチナに触れると化学反応を起こして水になる性質があります。この時、水素の持つ電子が酸素と結びつく役割を担いますが、その過程に電子が移動する電線を設けることで、電気を使えるようにしたものが燃料電池です。
また、燃料電池の特徴として燃料電池は、電池という名称がついていますが、燃料で動く発電機に近いです。蓄電池のように装置そのものに電気を貯めるのではなく、タンクなどに貯めた水素を使って発電することで、必要な時に電気を使うことができる装置です。燃料電池の特徴は、ガソリンや灯油のように水素燃料を長期かつ大規模に貯めておけ、また運ぶことが出来るうえに、二酸化炭素を排出しないクリーンな発電設備という点です。ただし、水素をつくる時に石炭などを燃やしてしまうとクリーンなエネルギーとは言えません。また水素はそのままだと不安定な気体のため、効率的に貯めて運搬するためにマイナス253℃の極低温まで冷やして液化させるなどの工夫が必要です。そのため、燃料電池は装置自体の研究とともに、水素の生成方法や貯蔵方法、運搬方法も各種色々な研究開発が進められているところです。 水素は脱炭素社会を目指すうえでも重要な資源であることを改めて認識できました。
次に見学したエリアは再生可能エネルギーのひとつの風力発電です。
風力発電とは、風の力でプロペラを回して電気を創る発電設備で、発電時に二酸化炭素などの副生成物なく、持続可能な再生可能エネルギーのひとつとして注目されています。
テクノアカデミー浜では、全長30mの中型クラスを導入していますが、山間部に建設するものは約100m、洋上に建設するものは約200mの高さにもなるものがあります。

風力発電の仕組みとしては、風は地上よりも上空の方が強く吹く頻度が高いため、風力発電は高さを得るタワー・塔を建て、その上部に発電機を設置しています。発電機は、手回し発電機と同じ仕組みで、手回しの代わりに、風の力をブレード(プロペラ)で受けて回って発電します。
また、風力発電の特徴として風力発電は、大きなブレードを回して発電するために一定の風力を必要とします。風が弱い場所では発電できないため、山間部や洋上など強風が吹いている場所や、数十m以上の塔を建てるなど、建設場所を見極める必要があります。
太陽光発電と異なり、夜間でも風が吹けば発電できることが風力発電の強みです。一方、太陽光以上に発電量が不安定なこと、物理的に動いて発電するため、急制動をかけて発電量をコントロールすることに適していない点が運用上の課題です。
次に見学したエリアは太陽光発電です。太陽光発電とは、太陽光から電気を創る発電設備で、発電時に二酸化炭素などの副生成物がなく、持続可能な再生可能エネルギーのひとつとして注目されています。
テクノアカデミー浜では、屋上とテニスコート跡地に架台を置いて設置していますが、他にも屋根と一体化したものや、壁面に設置するものなど色々な設置方式が存在しています。
太陽光発電の仕組みとしては、太陽光発電は、半導体と呼ばれる2つの物質を重ねて出来ています。半導体とは、光や熱などの影響を受けて電気的な性質を変化させる物質です。太陽光があたることで電気的にマイナスになって電子を放出する部材(N型半導体)と、プラスになって電子を引き寄せる部材(P型半導体)を重ねて、電線で繋げることで電子が動き、電気が流れるのが太陽光発電の仕組みです。
また、太陽光発電の仕組みとして太陽光発電は、どこにでも存在する太陽光を活用するため、導入できる地域が比較的限定されず、全国的に普及が進んでいる再生可能エネルギーです。屋根などの一定の面積があれば設置できることから、住宅などの建物に導入される設備であることも特徴です。
一方、夜間や天候不良時など太陽光が無い時は発電できず、不安定なエネルギーであることが課題で、テクノアカデミー浜のように蓄電池と組み合わせて導入することが推奨されています。
風量発電・太陽光発電とも今後の重要な自然エネルギーとして更なる活用が期待できると感じました。
3.おわりに
お忙しい中、案内や説明をしていただきました、株式会社ユアテックの方々には心より御礼申し上げます。施工時の大変だった話も伺うことができ、終始和やかな雰囲気での大変良い見学会となりました。
今回の見学会を通し、今後の脱炭素社会を目指す、EMSシステムを運用した施設の基準として見識を深めることができました。貴重な機会を設けていただき、深く感謝いたします。
お忙しい中、案内や説明をしていただきました、東京電力ホールディングス株式会社、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の方々には心より御礼申し上げます。
今回の見学会を通し参加者からは、漠然としていた福島第一原子力発電所事故に関する概要や現状、そして今後の課題についての理解が深まったとともに、廃炉に関する安全性は想像よりも高いことを知ることができました、との声が聞かれました。貴重な機会を設けていただき、深く感謝いたします。

【執筆者紹介】
菊池 雄太
三機工業株式会社 東北支店
建築設備技術部
設備技術2課長

