活動名 | 見学会 |
実施日 | 令和6年(2024年 12月10日(火) 14:00~16:30 |
場 所 | 東京都多摩市 KDDI MUSEUM |
参加者 | 11名 |
主 催 | 計装士会 |
報告者 | 企画・研修委員 稲生 充 |
1.はじめに
今回は、KDDI株式会社 殿の施設、『KDDI MUSEUM』及び『KDDI ART GALLERY』にて、参加者11名で見学会を開催しました。『KDDI MUSEUM』では、日本の国際通信のはじまりから、5Gが普及している現代まで、通信技術発達の歩みについてご説明いただきました。また、『KDDI ART GALLERY』では、先端技術を融合させた新しい芸術鑑賞を体験する事ができました。
都心近くでの開催という事もあり各参加会員に移動への負担がかかる事もなく、短時間で有意義な見学会を開催する事が出来たと感じております。
2.見学会内容
KDDI MUSEUM
通信技術の歴史
モールス信号から始まり、短波、長波送信技術、同軸通信、衛星放送、光ファイバー通信、現在は6Gと呼ばれる大容量で高速通信が可能な時代まで発展を遂げてきた。日本初の通信は1854年日本に来航したペリーにて献上品として持ち込まれたエンボッシング・モールス電信機である。送信側の電信機上の電鍵でモールス符号を打つと、受信側の電信機の紙テープにエンボス(凹凸の傷がつく)されて、信号を送ることができるようになっている。また、モールス鍵盤鑽孔機により、文字キーをたたくと、その文字に相当するモールス符号の孔を紙テープに開けることができる。それまで杵鑽孔機で一つ一つ孔をあけていたが、文字キー操作により素早く孔を開けれるようになったため、効率が格段と向上した。1969年のKDD長崎国際電報局の閉局まで使用されていた。

1888年(明治21年)ドイツの物理学者ヘルツ(Heinrich Rudolf Hertz)が電波の存在とそれが空間を伝わることを実験により確認すると、電信線を使わずに電波によって通信を行う研究が進められるようになった。電波は波長が長い(周波数が低い)ほど遠距離まで届きやすく、かつ障害物の後ろ側にも回り込みやすくなる。一方で波長が短い(周波数が高い)ほど直進性が高くなるが、中波や短波は大気上層にある電離層で反射して、地上の遠いところまで伝わる性質がある。また短波通信を支えたのは真空管の技術発展によるものである。真空管は、電流の制御や増幅を行う事が出来る電子管のことで、限りなく真空状態に近いガラス管のなかに、フィラメントと電極をおさめた構造となっている。フィラメントに電流を流すと熱電子が発生し、電極に向かって移動する。この作用を利用して、整流や電流の増幅・制御を行う事ができる。真空管を使うと電波を効率よく安定的に送受信できるため、送信機では安定した持続性の高い電波を発生するための、また受信機ではより感度の高い検波を行うための要のデバイスとして、短波通信を支えた。

第二次世界大戦後、限りある周波数を効率的に使用し、高い通信品質で日本の国際社会復帰を支えることが、新しく設立された国際電信電話株式会社(KDD)の使命であった。短波国際電波回線の交換台としては、有紐交換台が使用された。短波通信による電話回線は、フェージングやデリンジャー現象、混信の為に不安定で、自動交換に必要な交換信号を誤りなく相手局に伝えることが難しいため、交換はすべて手動で行われていた。オペレータは、回線が接続された後も会話がスムーズに行われているかどうかを監視し、フェージングや混信などにより会話が進行しないときには、その都度、課金時計をストップしてその時間を料金から除く作業が必要であった。
1990年頃になると、インターネットが世界的に広く使われはじめ、日本でも多くの海底に光ファイバーが引かれ、その重要性は年々増している。海底ケーブルの修理作業は、障害が発生した場所でケーブルを引き上げ、船上で光ケーブルを繋ぎ直して、ケーブルを再び沈めるという工程で行っている。その接続にはユニバーサルジョイント技術により接続されている。製造メーカによって構造が異なる光ファイバーの相互接続が可能となっている。コアの中心軸がずれないように融着を行うため、1本のケーブルを接続するのに準備を含めて12時間以上も要する。海底ケーブル障害位置の算出には電圧測定や光信号測定により、海底ケーブル陸揚局からのおおよその距離を算出している。
4.おわりに
AIの普及やデータセンターの急速的な拡大により、近年における通信技術の重要性は増していることもあり、今回はKDDI殿KDDI MUSEUMでの見学会を企画しました。多くの展示品、パネルと共に、KDDI殿に丁寧にご説明いただいた事で、過去の通信技術から現代の光ケーブルや衛星通信など、これまでの歴史について学ぶことができ非常に有意義な見学会となりました。ご参加いただいた皆様にも、何か得ることがあったのであれば幸甚です。
最後に今回の見学会にご協力いただきましたKDDI MUSEUMの関係者皆様に厚く御礼申し上げます。

【執筆者紹介】
稲生 充(いのう みつる)
太平電業(株)工事本部
火力管理部 電装課 課長
