活動名 | 『計測・校正における不確かさの使い方』 講師 三興コントロール株式会社 計測制御サービス事業部 校正技術部 部長 田村 純 講師 |
実施日 | 平成29年(2017年)11月10日(金)14:00~17:00 |
場所 | 株式会社九電工 福岡支店 1F 多目的ホール |
参加者 | 19名 |
主催 | 計装士会 |
協賛 | (一社)日本計装工業会 |
報告者 | 九州・沖縄地区担当幹事 渡辺 猛 |
講演内容
テーマ 『計測・校正における不確かさの使い方』
大きく5項目に分類
1.計器と精度
2.計測と校正
3.初めての不確かさ
4.試験、検査と校正
5.ISO9001-2015と
Risk-Base Management
1.計器と精度
①計器の種類
⇒センサ 計測機器 分析計この3つをまとめて「計器」と記述する。
②計器の性能と精度
⇒あらゆる計器は時間の経過と共に遷移の発生と感度も変化しやすくなる。
計器の適確性を判断する際に最も重要視されるのが個々のメーカーが定めた独自の仕様でその仕様の代表的な項目が「精度」です。
しかしドリフト、ゲインの変化と共に「精度」も変化する。
③精度の一般的なイメージ
1) 確立が高いか、低いか
2) 良いのか、悪いのか
3) 信頼性が高いか、低いか
精度 ⇒ 4) 正確か、不正確か
5) 計器だと性能が良いか、悪いか
6) 想った通りだったのか
7) その他・・・
④精度に関係する用語
1)バラツキ : 数多いデ-タがバラバラになってしまう度合い
2)カタヨリ : 数多いデ-タがある数値に偏ってしまう度合い
3)繰り返し性 : 計測・校正の手段が同一の時のデ-タ-の一致度
4)再現性 : 計測・校正の手段が異なる時ンンンンのデ-タ-の一致度
5)安定性 : 同一条件、同一手段の時の変化の割合、長期と短期がある
6)直線性 : デ-タ間の直線関係
7)ヒステリシス : 前歴によって同一デ-タに差が生じること
⑤精度の定義
⇒例えば1本のパイプの太さを一人の人間が、同じノギスで時間を変えて計測し、結果が一致する度合いが「繰り返し性」
⇒例えば1本のパイプの太さを複数の人間が、別々のノギスで計測し、結果が一致する度合いが「再現性」
⑥正確さと精密さの可視化
a) 繰り返し性
1) 精密さ ⇒ b) バラツキ
c) 再現性
精度 ⇒
2) 正確さ(真度) カタヨリ
⑦計器の「使用」の外乱
⇒計器は時間の経過による部品の磨耗や現場の外乱における温度、湿度等の影響を受け性能が変化する。
⇒固有の性能 - 計器メ-カ-の工場出荷時迄
⇒使用の性能 - ユ-ザ-が現場環境で使った時
⑧様々な「精度」の記述
⇒カタログ記載の精度→カタログ精度
⇒計測した時の性能 →計測性能(精度)
⇒校正した時の精度 →管理精度
⑨計器の精度の意味
⇒カタログ精度数値<<<計測性能数値
一般的に同一数値にはならない
⑩カタログ表記精度の認識
⇒メ-カ-が計器や計量機器の設計基準に適合した結果から決めた数値
⑪メ-カ-とユ-ザ-の思いの違い
⇒メ-カ-は設計基準でカタログ精度を決定、不特定多数のユ-ザ-の使用を想定
⇒ユ-ザ-は自分達の使用環境で計測した時どうなるかを知りたい
⑫計器を使う時考慮すべき事項
1)長期安定性にすぐれているか?
2)計測範囲の直線性が良いか?
3)環境適格性(≒再現性)に優れているか?
4)必用な管理制度(許容範囲)を決められるか?
5)必用な品質管理期間を決められるか?⑬まとめ
1)精度は計器の性能の一つ
2)精度では表せない性能もある
3)精度の一般的な定義は無い、しいて言えば「VIM」です。
4)カタログ表記、計測時、管理精度の意味を理解する。
5)使用者が精度をどのように捉えているか重要!
2.計測と校正
①計測(測定)と校正
⇒計測(測定)は 目盛りの無いモノの目盛りを付ける
⇒校正は 付けられている目盛りの検証
②計量計測用語集(VIM)から
⇒校正は 不確かさ表記が必須、誤差表記はダメ
③定義で言っている事
⇒より信頼性の高い標準で、被校正対象機器の付けられている目盛りを科学的、技術的に確認する事。
④標準の事
⇒校正での標準器、標準物質を総称してこの勉強会では便宜的に「測定器」と記述する。
⑤校正で被校正計器のこと
⇒DUTと記述する DUT:Device Under Test⑥校正の目的
1)生産現場でDUTの使用後の特性確認(外乱影響)
2)計測結果、分析結果の評価の参考情報
3)計測結果、分析結果の履歴の確認
4)設定した管理精度の確認
5)製造工程の客観的数値情報の取得
⑦保全と校正
⇒保全(メンテナンス)
製造工程の計器を信頼ある状態にする
⇒校正(キャリブレーション)
DUTの計測履歴(外乱影響)の検証
⑧実際の校正
1) 現場 : 装置に設定されている環境でDUTを測定器と比較する。
場所 ⇒
2) ラボ : 現場で使う測定器を定められた環境に於いて、更に信頼性の高い上
位標準と 比較する。
⑨現場での校正手順(SOP)の例(時系列)
1)プレパレーション ⇒ 校正手順の準備
2)アイソレーション ⇒ 隔離、安全措置(養生)
3)キャリブレーション ⇒ 目盛りの比較
4)エスティメーション ⇒ 結果の評価
5)アジャストメント ⇒ 調整・修正
6)リストレーション ⇒ 復旧、安全措置の解除
7)データプロセッシング ⇒ 記録、整理
8)エバリュエーション ⇒ 基準との比較、審査
9)レポーティング ⇒ 報告
⑩計器、計量機器の品質管理
⇒ISO9001 : 品質システムにフォーカスしたもの、製品品質や技術品質を審査するものではない、サービスが補記された。
⇒ISO10012 : 計器や計量機器を使う事が必用なセクションが準拠すべきもの。
⇒ISO/IEC : 計器や計量機器を校正や試験、検査する機関が準拠すべきもの。
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⑪校正の妥当性確認
1)校正方法 : 異なる原理・方法で校正を行い同一の結果が得られること。
2)校正方法 : 同程度の技量を持つ複数の担当者が同じ校正を行い、同一の結果が得られること。
3)時間的間隔 : 同一の原理・方法で同一の担当者により時間間隔が一定で複数回の校正を行い、同一の結果が得られること。
4)第三者機関 : 第三者的立場の外部校正機関により校正を行い、同一の結果が得られること。
3.初めての不確かさ
①新しい言葉の源
⇒「計量」と「不確かさ」
1)VIM : 国際計量基本用語集
前途、「計測と精度」を参照
2)GUM : 計測における不確かさ表現の案内
日本語ではガムという
②不確かさとは
⇒確かでない程度のこと。
③不確かさの提案
⇒世界的規模での貿易の自由化
世界的に校正(測定)結果、試験結果のデータの表し方を統一しようという機運と約束。
④真の値は存在しない
⇒真の値は使用できなくなった。
⑤誤差の真実
⇒誤差=測定値-真の値
1)ミクロ的に観れば観るほどバラついている。
2)目盛りを読み取るのに、裸眼、ルーペ、顕微鏡で見ると各々違うはず。
3)本当は「誰も」真の値などワカラナイ。
⑥バラツキとは
⇒カタヨリとバラツキ
カタヨリ : 校正結果にもカタヨリは付きものです、しかし割りと簡単に計器で計ることが出来る。
今までの誤差に相当し、偏差のことです。
バラツキ : 不確かさのこと、その数値を算出するには複雑な過程が必用で、そのルールが
「GUM」です。単純なバラツキ量をハカル測定器もあります。
⑦バラツキの数値化
⇒サンプルで推測する
カタヨリ : 単純な足し算引き算の計算
バラツキ : ちょっと面倒な、簡単的な統計処理の計算が必要
*統計処理は正規分布グラフで考えます
⑧バラツキを知る方法
⇒計測値も校正値も実際は一定値ではなくバラツキを持っている。
⇒バラツキは統計学的にその程度をヒストグラムか正規分布曲線で示すことが多い。
⑨まとめ
⇒カタヨリは古典的な誤差表記の基本。
⇒バラツキは結果数値の評価の基本、信頼性の証、偏差の存在は認める
⇒バラツキの計算はGUMの指針に従う。
⑩検定とは
1)一定の基準に照らして検査し、合格/不合格、価値や資格などを決定すること。
2)新しく作られた軽量器や修理された計量器が、計量法で定める基準に適合しているか?どうかを検査する
こと。
⑪校正結果の使い方
⇒測定、計測で使う場合 : 製作工業分野で多い
⇒校正で使う場合 : 製造(プロセス)工業分野で多い
⑫許容範囲(値)と不確かさの関係
⇒今までの出荷検査は信頼性評価はやってない、バラツキは無視!
許容範囲(値)と不確かさは異なる概念!でも密接な関係がある。
4.試験、検査と校正
①検査・試験と校正の境界
⇒検査・試験 - 適合性の評価 - 規格・基準値
⇒校正 - 標準との比較 - 実証値
②これからの言葉
⇒「適合(格)性の表明(宣言)」が重要
適合性評価(検査・試験・校正)などがその手段となる。試験・校正機器が使用している計測機器、分
析計などはその手段のための標準器、標準物質である。
許容範囲(値)と不確かさは異なる概念!でも密接な関係がある。
5.ISO9001ー2015版とサービス
①注目すべき点
⇒サービス(校正)分野への配慮 : 「製品」と「サービス」をわけて定義、違いを強調た。
技術管理主体(リーダー)の存在とパフォーマンスの評価など。
⇒リスクベースの考え方が明確になった。 : 強みと弱みを明確にする。
やはり”製品”の生産が中心です。
②サービス関係
⇒製品とサービス(試験・検査、校正)との関係が明確になった、製品の品質目標に対するサービスの対
応。
⇒作業環境から「プロセス(工程)の運用環境」へ
⇒監視機器及び測定機器から。 「監視及び測定の為の資源(resource)」
③日本工業規格から「日本産業規格」へ
⇒日本のGDPの約7割をサービス業が占めている。
⇒「役務」としてサービス分野を対象に追加する。
⇒法律の名称を工業標準化法から「産業標準化法」に
⇒マークはそのまま使う。
④現状の品質管理システムは
1)レガシーシステムの再評価 → 生産者側
2)DUTか製品のCPの設定とその根拠
3)DUTか製品の許容範囲(値)の設定とその根拠
4)DUTと標準との校正の不確かさ(精度)比
5)DUT、標準の校正間隔/期間/周期は
6)その他
まとめ
不確かさを現場の校正で使う
1)「不確かさ数値(バラツキ)」は引き取り校正事業者が理想的な環境で校正した結果
2)現場では同じ「不確かさ数値」では計測や校正は出来ません。
3)上記1)と同じ環境、同じ校正方法・手順を実現できれば添付された数値での計測、校正結果が期待でき
ます。
4)でも校正されていないより校正されている計器、測定器を使った方が「安心」だと思います!
所 感
今回の勉強会は、普段私達が工事を行う際、常に行わなければならない計測が題目になっており、 とても興味深く講義を聞かせていただきました。内容的にも様々な考え方や例えなどを挙げられ、 噛み砕いた言い回しにて判りやすく説明をしていただき非常に参考になりました。
ご多忙中にもかかわらず、講師をお引き受け頂きました田村講師に厚くお礼を申し上げると共に、 今後とも益々のご活躍をお祈り申しあげます。
以 上