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活動報告(東北・北海道)

東京電力㈱廃炉資料館/中間貯蔵工事情報センター見学会

実施日令和5年(2023年)11月30日(木)9:30~17:30
場所東北電力株式会社 ①廃炉資料館②中間貯蔵工事情報センター
参加者30名 (内計装士会9名)
主催一般社団法人 電気設備学会東北支部
協賛なし
共催公益社団法人 日本技術士会東北本部電気電子部会
計装士会
報告者株式会社ユアテック エンジニアリング本部 電気設備部
阿部 哲也

1.はじめに

今回の見学会は、東京電力ホールディングス株式会社殿、中間貯蔵・環境安全事業株式会社殿(JESCO)のご厚意により一般社団法人電気設備学会東北支部主催、公益社団法人日本技術士会東北本部電気電子部会及び計装士会の共催で実施しました。

今回見学させて頂いた東京電力廃炉資料館は、原子力事故の事実と廃炉事業の現状等を確認する場として、同社の旧エネルギー館を改修し開館されました。

中間貯蔵工事情報センターは、中間貯蔵工事(福島県内各地からの除去土壌等の輸送、処理・貯蔵、再生利用の取組など)の全体像の紹介、説明を聞くことができる施設です。

見学させていただいた内容につきまして下記に報告いたします。

2.見学内容

(1)東京電力廃炉資料館

東京電力廃炉資料館は、以前は原子力発電をPRするエネルギー館として使用されていたため、立派な外観です。入場して最初に案内されたのは、シアターホールです。正面には大きな曲面スクリーンが広がっており、床面にまで映像が映し出されます。ここでは福島第一原子力発電所にて地震発生から原子力事故発生時に起きていたこと、そして当時の対応について臨場感あふれる再現映像で振り返ることができます。

次に移動した先には、原子力発電の説明パネルや核燃料の模型が展示しており、発電の仕組みや安全設計について、職員の方が分かりやすく説明してくださいました。

その後、福島第一原子力発電所の1号機から4号機で起こった原子力事故の詳細、廃炉作業の進捗状況、そして今後の予定について、映像を交え、丁寧に説明していただきました。現在、使用済燃料は3、4号機については取出しを完了、1、2号機は使用済燃料プールに入っており、各号機共に冷温停止状態を継続しております。今後は、水素爆発の影響で上部が鉄骨むき出しとなった1号機への大型カバーの設置を行った後、1、2号機の使用済燃料の取出しや、燃料デブリの取出しが計画されています。

続いて移動したブースでは、事故の反省と教訓を映像とパネルを用いて振り返りました。事故の根本原因は過酷事故対策の不備、津波対策の不備、事故対応の準備不足にあること、その背景は、安全意識、技術力、対話力の不足に起因する負の連鎖が招いたものであることが述べられています。そして、決して天災として片づけることなく、負の連鎖を断ち切り、安全を最優先とする組織に生まれ変わることが東京電力の責務であることが語られました。

次に昨今ニュースでも話題となっているALPS処理水の放出についての説明がありました。ALPS処理水とは、放射性物質を含む汚染水を多核種除去設備(ALPS)等の浄化設備でトリチウム以外の放射性物質濃度が国の規制基準値を下回るまで取り除いた水です。さらに海洋放出時には、ALPS処理水を100倍以上に希釈し、トリチウムも国の規制基準値(1ℓあたり60,000ベクレル未満)を大幅に下回る値(1ℓあたり1,500ベクレル未満)としたものを放出しています。

その後は、今後の課題である燃料デブリの取出しについての現状説明です。燃料デブリは形状や分布が十分に把握できていないことに加え、原子炉格納容器内部は放射線量が高く人が近づくことができません。そのため、現在は遠隔操作ロボットを使用した内部調査および試験的取出しを行う準備をしています。

最後のブースでは、原子力発電所構内の様子をコの字型の三方面スクリーンにて閲覧することができました。ドローンにて撮影された上空からの映像は足がすくむほどでした。1号機を間近で見られる映像もあり、現地で実際に見ているような臨場感を感じました。

今回の見学では時間の都合上割愛したブースもございました。機会があればまた改めて訪れてみたいと思います。また、東京電力ホールディングス株式会社殿ホームページでは、廃炉作業やALPS処理水に関する現状、取組などの情報が確認できます。興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。

写真① 東京電力㈱廃炉資料館
写真② 東京電力㈱廃炉資料館 内部

(2)中間貯蔵工事情報センター

中間貯蔵工事情報センターでは、最初に職員の方から中間貯蔵施設の役割などの説明をしていただきました。搬入された土壌は可燃物と土壌に分別されます。可燃物は焼却処理をしたのち、灰を廃棄物貯蔵施設にて保管します。土壌は、土壌貯蔵施設にて浸出水(土壌に触れた水)が外部に漏れないように遮水シートを二重に敷いた上で管理されます。敷地内に運び込まれる土壌の量は約1,400万㎥を予定されています。土壌は2045年3月までに福島県外にて最終処分をする予定です。最終処分量の低減を図るため、放射能濃度が低い土壌の再生利用に関する実証実験が進められています。また、現在は県内53市町村のうち46市町村からの土壌受入が完了しています。

写真③サンライトおおくま展望デッキより
写真④ 土壌貯蔵施設

職員の方からの説明のあとは、バスに乗車して中間貯蔵施設の区域を見学しました。中間所蔵施設と聞くと建屋を想像しますが、福島第一原子力発電所を取り囲む形で、全体面積は約16k㎡あり、東京ドームの約340倍の広さの区域になります。バスで移動し、最初に到着したのはサンライトおおくまです。サンライトおおくまは、元は特別養護老人ホームとして使われていた施設です。原発事故直後に避難指示が出たため、室内や車両が今もあの日のままの状態で残っています。敷地が高台にあることに加え、仮設の展望デッキが設置されているため、中間貯蔵施設そして福島第一原子力発電所が一望できます。ここでは職員の方から、目の前に見える施設がそれぞれ何なのか、その用途も含め説明していただきました。写真③の正面の盛土作業を行っているのが土壌貯蔵施設です。土壌は高さ5m×3段にて貯蔵されます。その右手にあるのが浸出水処理施設です。土壌貯蔵施設とセットで設置され浸出水の処理を行い、放射性セシウムの濃度などを測定し、問題ないことを確認してから放流します。

3おわりに

お忙しい中、案内や説明をしていただきました、東京電力ホールディングス株式会社、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の方々には心より御礼申し上げます。

今回の見学会を通し参加者からは、漠然としていた福島第一原子力発電所事故に関する概要や現状、そして今後の課題についての理解が深まったとともに、廃炉に関する安全性は想像よりも高いことを知ることができました、との声が聞かれました。貴重な機会を設けていただき、深く感謝いたします。

東京電力㈱廃炉資料館にて(参加者一同)

【執筆者紹介】

阿部 哲也

株式会社ユアテック

エンジニアリン本部 電気設備部