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活動報告(四国)

『計測・校正における不確かさの意味』

活動名『計測・校正における不確かさの意味』
講 師
田村 純 講師
 三興コントロール㈱ 計測制御サービス事業所 校正技術部 部長
実施日平成29年(2017年)7月14日(金)14:00~17:00
場所サンポートホール高松 62会議室
 香川県高松市サンポート2-1
参加者22名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
はじめに

 四国地区では、平成29年度上期の地区活動として、7月14日に勉強会を開催いたしました。以下に概要を報告いたします。

テーマ内容

  ① 計測と精度
    ・計測と計量の用語や計測の意味
    ・直線性の評価が大切
    ・まちがえやすい言葉「繰り返し性」、「再現性」
    ・精度は、正確さ(カタヨリ)と精密さ(バラツキ)の度合いを示す。
    ・メーカーは設計基準でカタログ精度を決定するが、ユーザーは自分たちの使用環境で計測した時の性能が知りたい。

  ② 計測と校正
    ・計測(測定)は目盛の無いモノに目盛を付け、校正は付けられている目盛の検証である
    ・校正とは計器の性能評価や性能保証する行為ではない
    ・保全(メンテナンス)は製造工程の計器を信頼ある状態にすることで、校正(キャリブレーション)は計器の履歴データの特性の検証
  ③ 初めての不確かさ
    ・不確かさとは、確かでない程度のこと
    ・不確かさのイメージ
     名人の結果:的の中心(上位標準値)に近く(カタヨリが小さく)集まって(バラツキが小さく)当たっている。
     初心者の結果:一応、的の中心を狙っているがカタヨリが大きくバラツキも大きい。
    ・真値は存在しないので、誤差は求められない
    ・不確かさ評価では、なるべく信頼性の高い(≒真の値?)校正値を求め る努力をする
    ・不確かさとは、バラツキの存在を仮定して、測定や校正を考えようという「約束」事。

  ④ 不確かさの使い方
    ・不確かさの悪い使い方
     「このデジタル温度計は○○○の不確かさをもっていた。」
    ・正しい使い方
     「このデジタル温度計は「校正証明書」に記載してある条件では100.00℃ と表示したときに0.03℃の『不確かさ』を持っていた。

  ⑤ 校正結果の見方
    ・校正値は多くの観測値(採取データ)の「平均値」
    ・観測値は少なからずバラついており、バラツキ量を統計的に処理して、数値化したものが「不確かさ(数値)」になり、校正値の信頼性の目安となる。

  ⑥ 試験、検査と校正
    ・計測、校正から検査・試験へ
     標準器を用いて対象計測器を計測、校正すると、不確かさを伴った計測、 校正データが得られる。そのデータを適合性評価基準(客先要求、メーカ ー仕様、誰もが認める基準)で合否判断して、適合性評価
     書の試験・検査 データとする。

  ⑦ ISO9001-2015
    ・2015年度版では、証拠書類ではなく、何故、その数値にしたのか? 何 故、そのアウトソースを選んだのか、理由を求められる。

田村講師
勉強会の様子
所 感

 講師の田村様は、三興コントロール株式会社 計測制御サービス事業部校正技術部の部長で、計測・校正分野に日本で初めて不確かさ(Uncertainty)という概念を持ち込んだご本人であり、校正に必要な機器は、無ければ開発している部門の長でもあられ、仕組みや規格を作る側にも精通していらっしゃいます。
 その田村様に今回は、「計測、校正における不確かさの意味」と題して新概念の「不確かさ」についてご紹介いただくとともに、これまでの精度や誤差との違いおよび「不確かさ」の使い方などについて、内容の濃いご講演を頂きました。
 計測や校正において「不確かさ」という用語を最近、聞くようになりましたが、誤差や精度と、どう違うのか、どういう概念なのか、気になってはおりましたが、良くは知りませんでした。
 今回の勉強会で良くわかったというには、難しい概念ですが、「不確かさ」とは、計測値や校正値の信頼性を示すための指標で、カタヨリが小さくバラツキが小さい=不確かさが小さく信頼性が高いということ、また、校正とは、ある標準的な環境で、計測器が標準器と比較してどの程度の測定ができているのかを確認するところまでで、計測器の調整は含まないことがわかり、今まで勘違いしていたことも明らかになりました。
 今回の講演を聞いて、現在のグローバル化の流れの中で、日本でも「不確かさ」の概念が校正や計測の分野で当たり前になっていくとともに、校正結果を踏まえて、より現実的な計測器の管理精度を、使用環境に合わせて自主的に設定、管理することが求められるようになっていくと感じました。
 最後に、ご多忙中にもかかわらず講師をお引き受けいただいた田村様に厚くお礼申し上げるとともに、講師ならびにご参加いただいた皆様の今後とも益々のご活躍をご祈念致します。

以 上