アズビル㈱
ビルシステムカンパニー・マーケティング本部
福田 一成
~全国のジャズスポット・ジャズフェスを巡って~
ジャズは米国の音楽である。しかし今やヨーロッパ、アジアをはじめ世界中にジャズを愛好するリスナーと、演奏するミュージシャンがいる。海外に行くとそれなりの街にはジャズスポットがあり、CD・レコードショップにはジャズコーナーがある。旅行では必ずチェックして行くようにしている。そして我が国にも全国津々浦々にジャズを聴ける、聴かせる、時には演奏させる場があるのである。多くはあまり目立たない、そして一般の方には近寄りがたい雰囲気を漂わせ、自分達の孤高の世界を作っているようにも見える場がある。
このコラムでは、私がこれまでに出かけて行ってその土地の方々と親交を深めた全国のジャズスポットやジャズフェスを紹介します。
まずは北から、札幌狸小路のジャマイカ。レゲエの店ではありません、50年以上続いている老舗です。
巨大スピーカJBLパラゴンの周りにレコードがびっしり並んでます。青森はJazz Time Disk 、きれいなターンテーブルが二つ並んでいる昔ながらのジャズ喫茶、地元のファンが暑くジャズを語ってました。
仙台、ここは一般にも有名な定禅寺ストリートジャズフェスがあります。どう見てもジャズではないステージもありますが、東北・関東のビッグバンドが集まるいくつかのステージはアマチュアジャズの殿堂です。
私も会社のビッグバンドで4年ほど出演していますが、その楽しさは仙台の温かいリスナーの皆さんのおかげかもしれません。その仙台のちょっと北、鳴子温泉でもミニ定禅寺フェスみたいのがありまして、鳴子温泉音楽祭という、演奏者もリスナーも温泉入って、こけし眺めて、ジャズ(的な)音楽を聴けるフェスです、温泉にはジャズよりボサノバが似合うと勝手に判断し、ここにはボサノババンドで1回出演しました。
で、ちょっと越後方面に行きますと、新潟の一つ手前長岡に「音食(ねじき)」という少々恐ろしい名前のジャズカフェがあります。ここは地元のビッグバンドでテナーサックスを吹いているマスターがジャズのCDやライブを聞かせるはずなのですが、私が行ったときはビッグバンド野郎だと知れて、自分のバンドの映像DVDをたっぷり見せられました。
バンドへの思いが場を作っているお店です。
さて、地元の関東は飛ばしまして、静岡。ここも夏にジャズフェスやってまして野外のステージと結構充実したライブハウスでのステージが同時進行します。
IN OUT というキャッチフレーズがついてました。いくつかのステージ見て、友人が最後にちょっと外れたところの「炉辺人」という店に連れて行ってくれて、もちろん楽器持参でしたが飛び入りで2ステージたっぷりセッションできたのはほんとに楽しかった思い出です。IN とOUTのステージ帰りや、明日出ますなんてミュージシャンが次々にやってきて、メンバーがその場で曲名言うとすぐ始まっちゃう息の合い方はジャズの醍醐味です。私はスタンダードブックのページめくって途中から参戦なんてのもありでしたが。それと同時に一つ隣駅にあるグランシップ静岡でビッグバンドジャズフェスティバルもやってて、2日目の午後はそこへ出かけました。ステージに2バンドが右左に並んで、次々に演奏していく静岡ビッグバンド連盟の企画でどれもハイレベルでした。そうビッグバンド連盟ってのは、80年代の前半にローグスってバンド主催している伊波さんが全国に仕掛けていったもので、私も当時名古屋にいて、地元のビッグバンドが競い合うBe Happy Jazz Fesってのに毎年出ていたものです。
その名古屋ですが、今も健在の私の古巣バンド Rare Sounds Jazz Orchestraがよくリサイタルに使っているボトムラインやジャズインラブリーなど、ジャズスポットには事欠きません。Be Happyまだやってんですかね。本当は京都も捨て がたいのですがページも足りなくなるので大阪へ行きます。
行きつけの店は、Royal Horse。
ステージを演出する店の姿勢がいい、昔ながらのジャズライブハウス。出演者もどんなにベテランでもこの店では客一人一人に挨拶して回る礼儀を見せる。こういったのが本当の格式と思う。そうそう、神 戸のSONEもおんなじ雰囲気あるな、関西の遊び。そして値段は安い。ということで、大阪の宿泊は東梅田にするんですが、最近よく泊まるホテルの裏にインタープレイ8があることに気が付いた。山下洋輔の話にも出てくる伝説の店ですが、チャージなし、演奏が気に入ったらレジ横の壺に投げ銭入れてね、の緩い雰囲気もまたいい。
山陽は倉敷、美観地区にあるアベニューはほぼ毎晩ライブやってます。地元のプロ、アマがたっぷり聞けます。海を渡って高松、元警察官のマスターのきれいなお店スピークロウはちょっと離れた住宅街にありながらライブもあります。
一方雑然とした(ピアノの上にレコードが山積み)UP-TOWNは音にうるさい頑固おやじの、でも選曲が絶妙なお店です。そのすぐ近くのmimosa bird は飲める中古レコード・CDショップです。テーブルのお菓子食べ放題。瀬戸内海を戻って 広島もいいお店がひしめきあってます。
中国・四国へ行きます。
広島もいい店があります、老舗Satin Dollは棚のレコードが美しく見えるように背表紙柄で並べてます、それでもマスターはすぐお目当てのレコードを出せるんです。Jazz in Mingas はその名の通りチャールス・ミンガス命のベーシスト井上博義さんのお店で、丸いカウンターで5~6人でいっぱいになるお店ですがそのカウンターの中で若手数人と毎日ライブやってます。目の前でベースがぶんぶん唸る迫力は他では味わえません。シャープス&フラッツのベースだったのですがビッグバンド時代は結構苦労した話も聞いたのが印象的でした。
さて、とうとう九州へ行きます小倉のコルトレーンはショットバーです。
博多はたくさんありますが、中洲のリバーサイドがおすすめ、地元のみならず九州在住のプロ・アマが毎晩集まってます。熊本は私が高校時代まで過ごした地です。
通ったお店ソワレ、CATなどもうありませんが、上京と同時にできた小倉(おぐら)が老舗です、地元の学生がたむろしライブが頻繁に行われてます。そして最近開店したジャレットは一番のおすすめです。東京にもまだないハイレゾジャ ズスポットです。退職金はたいて装備した音源保存用のNAS(ネットワークアタッチトストレージ)と最高の再生装置を終日プログラム再生します。もちろんリクエストなどにはタブレット操作で割り込み、モニターにジャケット写真が同時に写ります。こんなハイテクジャズスポットほかにない!それに最近はライブも充実していて、最近佐藤允彦氏の伴奏でボーカルの上杉亜希子という豪華なセットもありました。
そして海を越えて沖縄。
ここはもう本格的なお店がいっぱいですが私のお気に入りは、「寓話」です。決して広くないスペースに熱気むんむんでライブが繰り広げられます。ほかにもスナックみたいなところで結構うまい歌手が歌っていたり沖縄のジャズはすそ野が広いんです。
さて、もどってお膝元の首都圏ですが、Blue Note, Cotton Club, など様々な有名店もいいのですがライトハウスを紹介します。客が4人も入るといっぱいの狭い住宅街のアパートの一室で、できるだけ人目に触れないようにおじいさんが一人でやってる店です。パスタの注文を受けてもすぐには茹でず、レコードを変えてからゆで始めます、茹でてる間にレコードを変えることはパスタにも音楽にもよくないようです。一説で国分寺から市ヶ谷に移転したピーターキャットを引き継いで営業し、今この店をやってるとか。そう、ピーターキャットって村上春樹がデビューしたころにやってた店です。私の自宅から歩いて10分のところですが絶対に場所を他人に教えるわけにはいきません。
というところで時間(いやページ)もなくなりましたのでここらで。最後は今年横濱ジャズプロムナードでの演奏写真を添えましてお別れを。