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コラム

リサイクルについて

株式会社関電工
水野 初男

 リサイクルの必要性・・・

地球に生物が生まれ、人類が誕生した。人類は他の動物と異なり道具と火を使うことで他の生き物には真似できない環境破壊をしてきた。地球が、生命の出現するまえから蓄えてきた資源を、人類がそれまでの蓄積を食い潰してきた。河川や湖沼の汚染は排水を流したことだけが原因でなく環境と生物の相互関係の破壊が農業や漁業に影響を与え、食料生産量が落ち、地球温暖化による海水温の上昇と海水汚染で珊瑚礁が破壊されればそこに生息していた魚たちも死ぬ。人類だけが生き残る地球はありえない。20世紀は次々と製品を作り出し生活を便利なモノで満たしてきた。新しい機能、製品の出るスピードが早くなるほど、古い機能や製品が捨てられる量も増える。資源そのものが捨てられていたのだ。さらに産業活動が健康被害を引き起こしていることがわかり環境への危機感が生まれるようになった。
それまでの資源浪費型の社会構造は環境汚染と資源の枯渇を招き、さらに人口増加による食糧不足に陥ると警鐘されてきた中から環境と人間活動が折り合うため、限りある資源を有効に利用するためのリサイクルへの取り組みが世界で拡大した。地球環境に壊滅的な打撃を与える一歩手前で人間はふみとどまった。
 人間は地球のあらゆる資源に依存して生きているのであり、地球環境は人類存続のために考えなければならない問題であり国際的な共通認識になっている。
 いま、人類はその生存の危機に面している。地球がダメになったら元も子もない。だからこそリサイクルは国際的な政治課題であり、全ての個人が取り組むべき課題である。
 21世紀は資源不足の時代となる。とくに地下資源の多くは21世紀中に完全に枯渇すると言われ、資源の危機的状況を迎える今、貴重な資源のムダのない活用、あるいは使用済み製品を含む廃棄物の再資源化への取り組みは本格化せざるを得ないだろう。資源を浪費せず、使い捨ての資源の流れを循環型にさせる。端的に言えば、焼却処理や埋め立てなどのからの脱却である。
 世界の焼却炉の約7割がこの狭い日本の国土に集中しているのが現状である。焼却処理の目的は廃棄物の減溶化だが、焼却後には焼却灰が残る。生産→消費→廃棄という 一方通行の流れである。
廃棄物を如何に抑制するかと同時に排出されたものを再利用するリサイクルのしくみが必要となる。

リサイクルとは・・・

 地球環境は水の循環、動物と植物による酸素と二酸化炭素の循環などから成るさまざまな物質によって成り立ってきた。
 産業革命以来人間は化石燃料を大量消費するようになり、特に20世紀には資源浪費により地球の物質循環バランスをくずしてきた。これが地球破壊である。
 バランスを補正するには自然界で分解しきれない排出物を除去し、排出源を減らし、あるいは排出源を止める。また資源の枯渇を目前にした今こそすべきことは、人為的なリサイクル、つまり一度使った資源を再利用するリサイクルの推進である。リサイクルには再使用、再資源化、分別・分解、発生・抑制・減量・減容化、エネルギー回収が挙げられる。

① 再使用とは、古本、古着、古道具、 中古車、中古住宅、フリーマーケットなどあるがままにものを再使用するシ
  ステムだ。リサイクル以前の、いわば人間の知恵とでも言える。また、再使用するに当たって住宅リフォームのよ
  うに不具合の補修、改修の需要も高まってきた。
 人口が多く、需要と供給のバランスがとりやすい都市部から形成されている。

② 再資源化とは、牛乳パック、ペットボトルなど製品になったものを解体、分解して改めて資源として利用できる形
  にするものである。資源を最大限に利用し、廃棄物を減らすことで長期的にみた環境負荷の低減である。

③ 分別・分解とは、ペットボトル、牛乳パック、食品トレーなどに分けて回収する。消費者が分別 しやすいように
  各々素材を表示する事を製造業者に義務づけている。素材ごとに分けて、はじめて再資源化が可能となる。
  製品の設計段階で 分解しやすいだけでなく、素材が識別しやすいよう製造され、さらに分解しやすい部品の開発
  も行われている。

④ 発生・抑制・減量・減溶化とは、廃棄物による環境負荷を減らすためには廃棄物を製造段階での排出抑制し、無駄
  をなくして廃棄物を減らし、また長寿命化を図る。廃棄物を圧縮、破砕、熔解などの方法による減量,減容があ
  る。回収されたアルミ缶やスチール缶をプレス機にかけて圧縮したうえでリサイクルのルートにのせる。
  一般廃棄物の有料化が進むことから市民にとってもごみを減らすことは資源と家計の両面で節約になる。

⑤ エネルギー回収とは、ゴミ焼却場で発生する熱を利用した温水プールや温室のように、廃棄物をエネルギー源とす
  ることによって有効活用するのがエネルギー回収である。ごみ焼却熱による発電や一般廃棄物からつくった廃棄物
  固形燃料による発電システム、さらに下水汚泥などの有機性廃棄物をメタン発酵させて得るメタンガスを利用した
  発電システムも実用化されている。

リサイクル法・・・

① 資源を有効利用する循環型社会への転換を図るため社会のあり方を法的に規定したのが循環型社会基本法(基本的
  枠組法)。資源を再生利用する事とともに広く発生抑制を促進する目的とした資源有効利用促進法。容器包装に使
  われているアルミ、プラスチック、紙は再資源化が可能であることからリサイクルを促進する法律を容器包装リサ
  イクル法。

② 家庭から廃棄・排出される家電製品のうち、冷蔵庫、洗濯機、エアコンを主に再商品化を図る目的で設けられた家
  電リサイクル法。食品の製造、流通、販売のほか外食産業やホテルなどの事業者を対象に食品廃棄物の排出抑制、
  再資源化の促進を目的とした食品リサイクル法。

③ 建設廃棄物自体は減量化が難しいうえ、不法投棄も問題になっている。この建設廃棄物を削減し、資源の有効活用
  を目的とした建設リサイクル法。

④ 自動車とそのシュレッダーダスト、カーエアコン使われてい るフロン類、エアバックについて自動車メーカーや輸入
  業者に回収・再資源化を義務づけた自動車リサイクル法。

⑤ 循環型社会の形成を促進するために国などの公的部門が環境配慮形製品を積極的に利用する事を定めたグリーン購
  入法。

リサイクルの活用・・・

① パルプや古紙は50%は新聞紙になり、トイレットペーパ、コピー用紙、包装紙などさまざまな紙に再利用されて
  いる。週刊誌などの雑誌は紙の表面に塗料を塗った紙質や本を閉じるのに使われている脇糊でリサイクルを困難に
  している。
  またリサイクルを繰り返して品質が劣化した古紙は圧縮して乾燥させ棒状に押し固めて成型した固形燃料として活
  用している。

② 家庭や事業所から年間500万㌧発生するプラスチックの約70%はペットボトルなど容器包装物が占めている。
  ペットボトルを圧縮梱包し再生PET樹脂に加工して制服やスーツなどの繊維製品のほか卵パックなどに使われる
  シート製品として多様化している。また発泡スチロー ルは体積の98%は空気であり重量のわりにかさばることが
  回収や処理にてこずって4割近くが焼却もしくは埋立処分されている。

③ スチール缶のりサイクル率は80%以上に上がっている。製鉄工場で鋼鉄の原料として再利用されている。
  スクラップを用いることで鉄鉱石から鋼材を作る場合に比べてエネルギー消費量を75%も削減できる。 スチール
  缶をはじめ自動車、家電、鉄道、船舶の材料、ビルや橋梁といった建設原料として利用されている。
  アルミ製品は再生地金として何度もリサイクル可能のためアルミ缶からアルミ缶へ再生する。使用済みアルミ缶を
  リサイクルすれば新地金を製造するときの約3%のエネルギーで済む。

④ 電化製品や自動車部品などの工業製品や日用品の原料として再利用されている。エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯
  機などの家電 、パソコンおよび自動車は引取先で機能診断や動作確認して再商品化できるものは中古販売、レン
  タルとして利用されている。

⑤ 乾電池などの一次電池はマンガン約25%、亜鉛約30%を含んだ亜鉛カスを回収しフェライトなどの磁性材料と
  して活用しているがリサイクル率は1割しかなく大半は埋立処分される。 また充電式電池(二次電 池)のニッカ
  ド電池からニッケルとカドミウム、ニッケル水素電池からニッケル、リチウムイオン電池からコバルトと稀少金属
  が回収され6割ちかくのリサイクル率を達成している。

⑥ 衣料品は中古衣料品店や新しいデザインの衣服に仕立てなどリサイクルしているが全排出量の1割にも満たないで
  処分されている。

⑦ 日本で年間約2000万㌧発生する食品廃棄物のうち一般家庭から発生する生ごみは半分の約1000万㌧を占め
  ている。なんといっても堆肥化だ。
  発酵や熟成の過程を経て生産された堆肥は各農家で有機肥料として活用され、これによって育てられた野菜などの
  農産物が各家庭に戻ってくる。

⑧ これまで食品加工工場などから排出される廃食用油は家畜飼料や石鹸、塗料の原料などにリサイクルされてきたが
  活路を開く用途として活用してきたのがバイオディーゼル燃料である。
  廃食用油にメチルアルコールを反応させてつくるメチルエステルを原料としたものでディーゼル車輌の燃料として
  使用している。
  廃食用油100㍑から95㍑のバイオディーゼル燃料が精製可能だ。

⑨ 下水汚泥は焼却の後に陸上や海に埋め立てられているが下水汚泥を受入れる最終処分場はあとわずかである。
  現在、下水汚泥のリサイクルり率は約6割で、建設資材としての利用が4割、緑地・農地での利用が約2割を占め
  る。建設資材としての用途のうち2割は汚泥焼却灰をセメント原料(エコセメント)に利用する。
  焼却灰をセラミックの製造技術を用いて圧縮、焼成してレンガも製造する。また脱水した汚泥を溶融炉に投入し、
  溶融スラグを製造して道路などの路盤材として活用している。

⑩ 空気のない状態で活動する嫌気性微生物によって一般家庭から排出される生ごみや下水汚泥などの有機物を分解す
  るとメタンガスが発生する。メタン、炭酸ガス、水素などで構成されているメタンガスの実用化が進み発電機の燃
  料として使用して電力(バイオガス発電)が得 られる。

⑪ 建設廃棄物であるコンクリート塊のリサイクル率は96%で再生骨材、砕石、路盤材に利用される。またアスファ
  ルト塊のリサイクル率は98%で道路の舗装材、合材に利用されているが道路など公共工事の削減で先細りしてお
  り新規用途の開発が必要とされている。

⑫ 木造住宅の解体で排出される建設発生木材のリサイクル率は40%で半分以上は焼却処分されている。木くず焚き
  ボイラーの老巧化や銭湯の廃業で減少して来たためである。そうした中で、木質チップに再生され、紙パルプ原料
  や木質ボード、石こうボードへの混入、炭化によって作られる防湿剤、吸着剤、土壌改良剤などに使われている。

⑬ 4ヶ月程度で新機種に入れ替えられるパチンコ台は重量比でおよそプラスチック30%、鉄30%、木材25%、
  その他(非鉄金属、液晶、基盤など)15%で構成される。 液晶、基盤コード類は手作業で取り外され再利用す
  る。残りは破砕して鉄を回収した後固形燃料化、セメント原  料・燃料化される。

⑭ 廃タイヤのリサイクル率は90%を達成している。カットされたタイヤや丸タイヤはそのままセメント炉、製鉄
  炉、ボイラーで燃料として使用している。またゴム粉、再生ごゴム、ゴムタイル、ゴムブロック、靴底に再使用さ
  れているが、最近は陸上競技場のトラックなどに使われる弾  性舗装材が注目されている。

さまざまな地下資源は近い将来に枯渇することがわかってきっている。
地球の環境は危機的状態である。動植物の絶滅や温暖化、酸性雨、砂漠化だけではないのだ。
地球そのものが危機に瀕していることを一人一人が認識すべきである。
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