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活動報告(東北・北海道)

東北電力株式会社 原町火力発電所

活動名東北電力株式会社 原町火力発電所 
発電所中央制御室
タービンフロア、1号機ボイラートップ
シアタールーム(発電所概要説明)
実施日平成25年(2013年)9月6日(金)15:00~16:00
場所東北電力株式会社 原町火力発電所 
福島県南相馬市原町区金沢字大船迫
参加者28名 (内計装士会 10名)
主催(一社)電気設備学会 東北支部
協賛計装士会 (一社)日本電設工業協会 東北支部
報告者東北・北海道地区担当幹事 三澤 寛士
1.はじめに

 今回の見学会は東北電力㈱殿のご厚意により一般社団法人電気設備学会東北支部主催、計装士会及び一般社団法人日本電設工業協会東北支部の共催で実施しました。
 同社は、民間電力会社です。
 供給区域は東北6県および新潟県で、1951年(昭和26)電気事業再編成の一環として旧東北配電の供給区域を継承して設立され、現在、原町火力発電所は、南相馬市をはじめ東北電力管内に電力を供給しています。
 御担当の方の案内で設備を見ることが出来たので、下記に報告します。

2.見学内容

 はじめに、原町火力の概要及び東北地方太平洋沖地震による被害から復興までの説明をしていただき、中央制御室及び1号機タービンの見学をさせて頂きました。
 以下に説明していただいたことを記述させていただきます。

 原町火力発電所について

 当発電所は、石炭を燃料とする火力発電所です。石炭は世界中に広く分布し、当発電所で使用する石炭の多くは、オーストラリア、インドネシアなどから輸入しています。石炭は、熱量あたりの単価が、他の化石燃料に比べ安価なため高い経済性が図れます。また、当発電所は東北電力様の重要な供給戦力となっておりベース電源として高い稼働率を誇り、平成22年における石炭火力発電所の総発電電力量は、全体発電電力量の15%を占めています。

 主要設備について

 主要設備は、国内最大規模の出力1,000MWを誇る設備が2機あります。
 表1に設備の概要を示します。
 写真1は1号機タービンです。写真左側に1次タービン(四角型)、右側に2次タービン(半円型)があります。タービン建屋は14F建ですが、屋上は80mもの高さになっております。写真2は中央制御室です。1日2交代制4チームで運転管理しています。
 写真右側に1号機の運転状況を把握するための大スクリーン、左側に2号機の大スクリーンが見えます。スクリーンに映し出される情報、制御盤点灯ランプ等で異常を把握し制御を行います。

表1 設備概要

1号機 2号機 
営業運転開始 1997年7月 1998年7月 
出力(MW)  1,000 1,000 
タービン蒸気圧力( MPa)24.5 24.5 
タービン(℃) 566 600 
再熱蒸気温度(℃) 593 600 
発電端熱効率(%)
※LHV換算値
43.3 44.1
※LHV:低位発熱量(燃料の燃焼によって生成された水蒸気の蒸発潜熱を除いたもの)
写真1 1号機タービン
写真2 中央制御室

 環境対策には様々な設備が採用されております。排煙処理工程を図1に示します。以下に記します各装置の説明も簡単に示してあります。
 大気汚染物質である窒素酸化物の抑制には、二段燃焼、低NOxバーナー、排ガス混合方式、さらに排煙脱硝装置を採用しています。ばいじんの抑制に電気式集塵装置、排煙脱硫装置(除じん効果)を採用しています。排煙脱硫装置は同時に硫黄酸化物の排出量の抑制を図ります。粉じんの抑制には、貯炭場の周囲に遮風フェンスを設置し、適切な散水を行い飛散しないように処置しています。
 また、処理過程で発生する石膏は再利用を促進しています。
 温排水になる復水器冷却水の取放水に関しては、当発電所港湾内から深層取水し、防波堤護岸外側の水中放水口より港湾外へ放水しています。取水と放水の温度差は7℃以下とし、環境に与える影響の低減を図っています。
 その他、設備排水は構内に浄化槽を設けております。騒音の発生源となる機器に対しては、建屋内に収納し低騒音型機器を採用しています。

図 1 排煙処理の仕組み (東北電力原町火力発電所パンフレットより)

東北地方太平洋沖地震による被災から復旧まで

 以下には、東北地方太平洋沖地震が起きてからの状況を説明していただいた内容を記述させていただきます。平成23年3月11日14時46分に東北地方太平洋沖地震が発生し、大ダメージを受けました。
 1号機に、タービン軸振動(大)などの多数の警報が発生しましたが、軸振動値はいずれも自動停止未満のため停止しておりません。発生から6分後1号機の負荷を、1,000MWから800MW、800MWから600MWに降下させていき、津波の襲来の報により運転不可能と判断し手動で停止を行ったようです。
 15時35分に巨大津波が発電所に18mの高さで直撃し、事務本館4階電源室より火災が発生し、所員の方々が一晩中バケツリレーで消火活動を行い、苦労の末に無事消火ができたようです。また、当時入港中の石炭船は座礁し、石炭を荷揚げする揚炭機は倒壊するなど甚大な被害が発生しました。当時、東北に居られた方はこのような説明を聞くと、当時の悲惨な状況が思いだされるのではないでしょうか。
 また、18mもの津波が来ましたが、当発電所港湾の防波堤は全壊せず残ったようです。理由としては、発電所港湾の形状は台形型であり、そのことが要因で残ったのではないかとの事です。
 復旧工事は基本方針を5項目(大項目)挙げ行ったようです。
 第一に無事故・無災害・無事件であること。安全の取り組みとして、年に2回安全大会の開催、月に1回災害防止協議会を開催、日常では管理職や担当者が毎日安全パトロールを実施し、指摘事項の書き出し等を行い、全員に周知できるような体制が取られているようでした。第二に一日も早く復旧すること。第三に放射線の管理を徹底すること。第四に復旧工事費の抑制を図ること。第五に津波対策の検討・実施すること。これらを基に工事は進み、平成23年度中に撤去工事を完了させ、平成24年度から復旧工事を本格化、11月に2号機の発電を開始させ、25年1月に1号機の発電を開始させております。復旧工事に対する延べ作業員数は約120万人にも至るようです。これらの説明を聞き、短期間で計2,000MWもの発電能力を有する発電所を再始動させたことに驚いております。私たちの見えないところで、多くの方々の頑張り、知恵を絞り合い、様々な苦労があったのだと思います。
 最後にですが、作業員の安全・安心確保の観点から、24時間体制で放射線測定を実施し、その結果を入構者へ周知しているようです。見える化が図られている事はとても良いと思いました。

3.おわりに

 今回の見学会で、東北電力株式会社 原町火力発電所の皆様にはお忙しい中、説明及び見学のご案内をして頂き、こころより御礼申し上げます。

以 上

正面入り口前モニュメントにて(参加者一同)