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コラム

電気自動車(EV)化への急速な流れについて

株式会社 関電工
プラント設備部
金子 啓市

 現在の主流を占める内燃機関(ガソリンやディーゼルエンジン)を動力源とする方式の自動車から、電力で走る電気自動車(Electric Vehicle=EV)への移行の流れが急速に進行しています。
 その理由を考えますと、
  1.地球温暖化の主因と考えられる二酸化炭素の排出量を減らす必要がある。
  2.中国の北京やインドのニューデリーなどの都市の自動車の排出ガスによる
    環境悪化を改善する必要がある。
  3.国の産業育成政策の中で、新しい産業分野としての電気自動車製造分野を
    創出し、経済発展の原動力とする。
 等の項目があげられます。
 以下に、もっと具体的内容および、日本の経済に対する影響などを考えたいと思います。

二酸化炭素(以降CO2と表記)の排出量削減の効果について

 電気自動車は、駆動源の電気モーターを蓄電池に蓄えた電気により回転させて馬力を得ています。したがって、電気自動車単体では、使用時にはCO2は排出していません。しかし、エネルギー源の電気は、現在、おもに火力発電所で石炭・石油・LNGなどの化石燃料を燃焼させることにより得ています。したがって、走行時の電気消費量により、電気自動車のCO2排出量が算出できます。発電所からの送電ロスを含めた総合的な計算で、1km走行あたりのCO2排出量(g-CO2/km)はガソリン車の25%程度のようです。電気自動車への移行は確実に環境対策としてのCO2削減に効果がありそうです。
 さらに、発電所は集中的に化石燃料を燃焼させて電気を得ているため、新しい技術による高効率化や環境対策の効果を得やすい。このことは、現状の自動車では個々に対策をしなくてはならない場合と比較すると大変効率的です。

各国のEV化への対応とその思惑

 欧州では2021年以降のCO2以降の規制強化に備えて、ディーゼル車からEVへのシフトが予想されていましたが2015年にフォルクスワーゲン(VW)による排ガス不正問題が、この動きを加速させています。ディーゼルエンジンの規制強化に対応するために、多くの時間やコストを掛けるくらいならEV化により一気に解決したいとの思惑があるようです。
 中国では政府により、今年9月末にEVシフトを大きく加速させる政策は発表されました。EV車等の新エネルギー車にポイントを与え、メーカーは一定以上のポイント割合で自動車を生産しなければならない政策です。大まかに言って、電気自動車の生産割合を一定以上にしなければならず、年ごとにその割合は増加させるとの政策です。中国国内のメーカーではすでに目標値をクリアーしているところもあり、かなり中国国内のメーカーに有利なものです。
 自動車製造業界で他国に差をつけられた製品開発力、製造能力をEV化により逆転させたいとの大胆な政策です。

日本のEV化への対応

 日本の自動車メーカーはつい最近までEV化に積極的に対応していませんでした。部分的には、トヨタ、ホンダがハイブリッドカー(HEV)を、三菱自動車・日産がEV車を販売していました。積極的でなかったのはなぜでしょうか?理由は EV化を進めれば自分達の首を絞める結果になると考えていたからです。既存の自動車は、一台当たり数万点の部品から出来ています。
 パワートレインと呼ばれるエンジンで発生した動力を車輪に伝えるための機構(エンジンやトランスミッション)をメインに、冷却系・振動防止系・排ガス処理系・制御回路系と様々な役割を持った機構からなる複雑な構造となっています。
 ちなみに、最近の日本国内の自動車工場新設設備投資の例として、ホンダが行った例があげられます。
 埼玉県小川町にエンジン専用の工場建設に450億円を投資し、さらに近くの寄居町に車体のメインの部品製造や最終車組のための工場建設に1100億円を投資しました。いかに、自動車製造の設備投資に巨額の金額が必要となるかがわかります。
 大量製造大量販売を前提とした業界なのです。新規参入が困難な業界なのです。
 既存自動車メーカーは先行メリットを守りたかったのです。
 EV化は劇的にこの新規参入障壁を崩す可能性を含んでいます。EVの部品点数は既存の自動車に比べ半分以下になるといわれています。EVの部品を機能分類すると、動力源のモーター、それを制御するインバーター、エネルギー源の電池などに分類できます。既存の自動車のエンジン・トランスミッション・排気系を始めとして多くの部品が必要なくなります。これは、巨大な設備投資や高度な技術開発力なしに自動車製造業界への参入が容易になることを意味します。先般、サイクロンクリーナーで地位を確立した英家電大手のダイソンが2020年までにEV市場に参入を表明しましたが、もっとも、端的な例です。既存メーカーは新規参入障壁が無くなり、経営環境が独占的でなくなる環境に対応するために様々な経営努力が求められています。

既存メーカーの業態の変化

 このような環境変化は、企業の組織体制の在り方さえも変えてしまう力があります。
 従来の自動車メーカーは大手メーカーがピラミッドの頂点に位置し、下部に部品メーカーを配置して製品開発や生産計画を連携を取りながら、最大のコストパフォーマンスを求めてきまた。しかしEVの生産では、組織体制は今までのピ ラミッド型は必要なくなります。シャシー・ボディーは今までのピラミッド型の組織を維持しながらも、EVの重要要素であるパワーコントロールユニット関係は水平連携の形になって行く可能性が大です。ここでいう水平連携とは、EVに必要なバッテリー・モーター・インバーターなどの部品をそれぞれに特化した企業から買い付け、それをメーカーが組み立てて出荷するという「組み合わせ型(モジュール型)」の生産で、チームワークより各部品それぞれの能力を最大限に利用してうまく統合するというニュアンスです。うまく、ハンドリングして、環境変化に対応すれば、それぞれの立場で存続ができます。しかし、このことは、日本のパソコンメーカーが最終的にはコンピュータの心臓部であるCPUをインテルにOSをマイクロソフトに独占され、単なる部品組み立て会社になり、主な利益はすべて2社に吸い上げられ、ほとんどのメーカーが外国に買収されてしまった現象と既存自動車メーカーが同じ運命をたどる可能性を秘めています。

エネルギー業界へのインパクト

 EV化の進展は、使用燃料が従来の石油から電気に変わるため、エネルギー業界にも大きな影響を与える可能性があります。
 ここでは、エネルギー業界の中でも特に変化を求められる電力業界について考えてみます。
 今日、電力業界では、発電量が一定ではない再生可能エネルギーの増加に伴い系統が不安定化しています。
 一例をあげますと、太陽光発電装置の発電量は、昼間には発電量が増加し夜にはほとんどゼロとなり、さらに天気にも左右され、必要とされる電力の需給量とうまくマッチングしないことがあげられます。そのため、定置用大型蓄電池な どの電力の需要量と供給量を必要に応じて調整する機能(以下、需給調整機能)が不可欠となってきています。この対応策として、今後普及が見込まれるEVはいわゆる走る蓄電池であるため、電力業界からは需給調整機能としての役割を期待されています。EVの車載電池から系統に融通する技術がうまく確立されれば、再生可能エネルギー導入のための調整力に貢献できる可能性があります。EVの車載電池を群制御できれば、需給調整用の大型蓄電池の導入を抑制できるため、系統整備のコストを引き下げられる可能性があります。

まとめ

 EV化は時代の大きな流れとなることは、間違いのない事実になります。
 日本にとって、プラスとマイナスの要素が混在して、様々な業界に影響を与えながら進行します。変化はチャンスと捉え、日本の技術開発力を信じ、フットワークを軽くしてタイムリーに対応すれば、日本の発展の大きな原動力になるのではないでしょうか。