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不幸は突然やってくる「幻のシンガポール・タイツアー」

≪Eチケットをめぐる国際摩擦についての体験的問題提起≫

 ㈱オーテック
事業本部 千脇 信夫

「雨の成田空港」

本年2月27日、シンガポール・バンコクツアー4泊5日食事8回付き54,800円の格安ツアーに、淡い期待を胸に抱きながら6人の仲間と成田空港を飛び立ちました。
ところが、出発直後僅か(わずか)4時間で、シンガポールもバンコクも8回の食事もその日の宿も淡い期待も、それどころか帰りの飛行機も全て消え去るという驚天動地(きょうてんどうち)のトラブルに遭遇してしまいました。
事の顛末(てんまつ)を知れば「バカだなー」と思う人がほとんどだと思います。しかし、得難い数々の教訓を学びながらなんとか無事に戻って参りました。
 ここに自分たちの恥を忍びお役に立てればと考え、敢えて報告致す次第であります。

第1章「雨の成田空港:極めて順調なスタート」

忘れもしません2月27日(土曜日)は、未明から激しい雨が降り続き我々の前途を暗示すかのようでしたが、お気楽6人組みはルンルン気分で出発3時間前の7時30分頃には空港に集合し余裕で搭乗手続きを済ませ、9時過ぎには出発ロビーでビールや冷酒などを各自思い思いに飲みながら待機しておりました。
そうなんです!
我々は一昨年も同じメンバーで台湾ツアーを成功させたベテランなのであります。
ここでは、普段からお腹の具合の良くないNさんも冷えたワインなどを飲んでおりました。これが、後に起こる阿鼻叫喚(あびきょうかん)の大騒動の引き金になるとは夢にも思っておりませんでした。また、出発日が土曜であったことも騒動を長引かせ加速させる要因であったことも後で知りました。さらに、このベテランであるとの思い込みが追い討ちを掛けるように、錯誤を生み決定的な誤判断を下した最大の要因であったことを思い知らされる結果となったのでありました。
 何はともあれCX航空の飛行機に乗り込み、無事離陸した時には「このツアーの成功は間違いない!」と確信を持ったものでした。機内のドリンクサービスで冷たいジュースなどを飲んでいるうちに、機内食のサービスが始まりました。この機内食は、ツアーの8回の食事とは別であることを確認した時には、とても儲かった気分になり、Nさんを始めみんなで揃ってワインを飲み干していました。
この冷たいワインが第二の引き金となる危険なものだったのでした。

第2章「喧騒の香港空港:立ち往生で茫然自失」

 さて、数々の破綻の予兆を抱えながら飛行機は、乗り換えの為に香港空港に着陸しました。時刻は日本時間で午後3時、香港時間で午後2時でした。シンガポール便は日本時間4時の出発予定ですので、乗り換え時間は1時間あり余裕で構えておりました。到着ロビーは2階で、3階の出発ロビーに行くには関門を通って行く必要が有り、そこには長い行列が出来ていました。ベテランの我々は、出発ロビー方面は混雑しているので、とりあえず到着ロビーのトイレに行くことにしました。代わる代わるトイレに行き、最後にNさんがパスポートをはじめとして携帯電話や財布など身の回り品一切をそばに居たSさんに預けて、丸腰でトイレに入ったのですがこの丸腰が命取りでした。冷たいものを散々飲んだNさんは、通常より長くトイレで時間が掛かってしまい、丸腰である不安感とすっかり遅くなった焦りで、一目散に出発ロビーに行ってしまったのでした。トイレの前で雑談をしながら待っていた5人は、3時30分過ぎにようやく異変に気付きトイレの中や周辺を探し出しました。
トイレの個室の一つにずっと閉まったままで、呼び掛けても返事の無いところがありました。この個室に拉致されているのではないかと疑い、思い切って上から覗いてみたら点滴を打っている小父さんに睨まれてしまいました。丸腰のNさんは絶対に3階の出発ロビーには行けないと固く信じていた我々は、お金もパスポートも持っていないNさんを置き去りには出来ないと、再度広い空港内を探し回り空しく時間を浪費させたのでした。4時近くなって空港職員に「仲間が一人行方不明になった!」と、拙(つたな)い英語で話し掛けた所、その女性は事情を知っていたと見えて大声で出発ロビーに行くようにと英語で捲(まく)し立てられたのですが、「我々は仲間を置いては行けない!見つかるまでNさんを探す!!」と断固拒否したのでありました。(実際には女性が何を言っているか良く分らず、こちらも逐一事情を説明する英語力も無く、なんとなくそんなような会話と結果になったものです)。
 とうとう出発時刻の4時が過ぎてしまい、Nさんは国際組織に拉致されたか神隠しにあったかのどちらかしか考えられないと話し合っていたところに、女性職員に連れられたNさんがヒョッコリ帰って来たのでありました。無事な姿を見てホッと胸を撫ぜ下ろし、異国の地での再会を喜び合ったのも束の間、我々は更に恐ろしい現実に直面することになりました。

第3章 「空しい抗議:国際常識の壁」

トランジットに失敗した我々は、CX航空のカウンターに行くように言われ、6人揃って行って見ると、いきなり「ツーレイト!ウエイト!シットダウン!」と中年男の職員に一方的に言われ、それ以外何の説明も無い状態で放置されてしまったのです。我々はEチケットを持っており、予約は確保されていると確信を持って抗議を試みましたが、如何(いかん)せん英語が上手く喋れず聞き取れずの状態で埒(らち)が明きません。その内、やっとのことで日本語の分る女性職員から「Eチケットは、一旦乗らないと残り全てのチケットがキャンセルされますので、皆さんは今後このEチケットでは飛行機に乗れません。これは、世界の常識です。」と言われた時には、耳を疑うと同時に愕然としてしまいました。
なにしろ世界の常識です。
 旅行代理店のH社に国際電話を掛けた所、とにかく自力でCX航空と交渉してシンガポールへ行けと言うばかりです。そして、シンガポールから先のことは月曜日にCX航空と交渉して見なければ分らないという冷たいものでした。必死の思いでCX航空のカウンターで交渉をしている内に、「現在4時間後の最終便にキャンセル待ちをしている。上手(うま)くその最終便に乗ってシンガポールに行くことが出来れば、後のツアーも続けることが出来る。それに乗れなければ、翌日の便で片道航空機代金5万円強を別途支払ってシンガポールに行く事になるが、それから先のツアーが継続出来るかどうかは旅行代理店と交渉しなければ分らない」という状況がなんとなく分ってきました。今出来ることは午後8時の最終便に乗れるかどうかひたすら待つことだけでした。暇なので免税店で高級ウイスキーを買ってロビーで飲むことになり、買う寸前までいったのですが、今すぐ飲むのでコップが欲しいと言った途端、免税品は空港内で飲んではいけないと言われ買うことができませんでした。
 ここでも国際常識の壁に阻まれた訳です。香港ドルを持っていなかったので、千円札で安い買い物をしてそのお釣りで、一杯300円程度の蝦団子入り中華麺などを食べました。値段の割には満足のいくものですが、日本のラーメンとは全く異なる味で少し慣れる必要を感じました。
 さて、午後7時頃満を持してCX航空のカウンターにいくと、中年の男の職員から手で×印を作りながら「ノーシート!!!」と大声で言われました。カウンターはごった返しており、その中年はそれ切り見向きもしません。満席でキャンセル待ちがだめだったと悟った我々は、どうするかH社吉祥寺に携帯電話を掛け捲(まく)ったのですが、月曜にCX航空と交渉するからそれまではどうにもならないと言うことが理解出来たのは午後9時近くでした。搭乗前に預けた荷物はシンガポールに行ってしまったのではないかと思いきや、香港空港にあることが分ったので、とにかくもうこれ以上空港に居たくない!早く宿に入りたい!とH社香港に宿を予約してもらい一目散に宿に向おうとしましたが、分っているのは「パンダホテル」という宿の名前だけです。多少金は掛かるが確実なタクシーにするか電車かバスにするか迷いましたが、これからいくら掛かるか皆目検討が付かない状況なのでバスにすることにしました。この決断は結果的には正解でした。なんと言っても料金は300円位で2階建てバスに乗ることが出来たのです。このホテル名だけを頼りに何回も人に尋ねながらやっとの思いで宿に着いたのは10時半過ぎでした。
 やはりすんなりとチェックインは出来ませんでしたが、やっと部屋に入ったあとは、夜の街に食を求めて放浪しなければなりません。ツアーからドロップアウトした我々は、自力で生きていくしか道は残されていないのでありました。
ここに、香港サバイバルの幕が切って落とされたのであります。

「深浅(しんせん)の町並み」

第4章 (最終章)「香港サバイバル:自力で生き抜いた4泊5日」

 黙っていても食べ物に有り付けるツアー客は本当に恵まれています。我々は、お金の心配をしながら何処で何を食べるか悩まなければなりません。ともかく夜11時頃ホテルの近所の安そうな食堂に入りました。何はともあれ、声高らかに「ビール!!」と注文しました。ところが、ビールは無いと断られてしまったのです。店を間違えたと思い帰りかけた所、店の主人に手招きで近所のコンビニ(サークルK)に案内され、そこで缶ビールを買って店で飲めばよいと教わりました。このシステムは放浪生活を営む我々にとっては、安く済む大変良いシステムで、以後あらゆる店で活用してなんとか食費を安く浮かせることが出来て感謝しております。特に地元香港の”サンミゲールビール” 500ml缶が11HK$(12倍すると日本円になるので132円)と安くて美味しくてお薦めです。セブンイレブンでは、どういう訳か2缶なら15HK$(180円)になるという安売りの存在を知ったのはずっと後のことでした。
ただし、このビール持ち込みシステムは高級店ではやっておりません。大衆店だけの制度です。制度と言うより、食堂でビールを持ち込んで飲んでいるのは我々だけでした。香港の人たちは共働きが多く自宅で料理を作らず、もっぱら外食ばかりでほとんどの店が食事専門でした。店は定食のメニューが豊富で朝メニュー・昼メニュー・夜メニューと時間帯で分かれており、朝6時から夜12時位まで営業していました。香港の人たちはここでビールも酒も飲まず、三度三度食事をしている訳です。料理は、所謂(いわゆる)中華料理と言うか麺類・炒め物・揚げ物が主体で野菜や魚介類がほとんど無いのに堪えました。味付けがどこかエスニック風で、肉類は香辛料が強く少し努力をしないと食べ辛い気がしました。でも、20~30HK$(300円程度)でいろんな定食が食べられて本当に助かりました。

 今の所、帰りの目途も立っていない我々ですが、食事は何とかなると分りましたので後は観光です。やはり香港ならあの慕情の丘、澳門(まかお)ならカジノを覗(のぞ)いて見なくてはなりません。また、国境の町深浅(しんせん)にも行って本場中国の実態を垣間見たいなどいろいろな希望が出ました。取りあえず日曜日は香港島に行くことにし、後のことは月曜日のH社との交渉次第でどうなるか分らないので考えないことにしました。そして月曜日の火の出るような交渉の結果、本来のツアーの最終日の飛行機に追加料金一人2万円で帰ることが出来るようになりました。なんのこともありません、本来我々が乗るはずだった香港発の飛行機に追い銭を払って乗っただけのことだったのでした。
 終わってみると、香港・澳門(まかお)・深浅(しんせん)を巡るおっかなビックリの手づくりツアーは、失敗も多かったけれど得難い数々の経験をすることが出来て感謝の気持ちで一杯です。
 最後に一つ教訓を書きます。空港で帰りの航空券代をカードで支払う際、一人だけカードが使えないという事態が発生しました。カウンターの端末画面に「廃用」と大きく表示されていました。カード会社に国際電話を掛けようとしましたが「0120」は繋がらず、他の番号も分らず結局別の人のカードで支払ったのですが、もし一人だったらどうにもならないのでゾッとしました。やはり予備カードを持っておくべきであると痛感した次第であります。
 ともかく、宿代と航空券代を除く4泊5日の食費・交通費など諸費用は1人2万円程度で済みました。香港の人たちがみんな明るくて親切で助かりました。今思い出しても、恥ずかしいような懐かしいような気持ちがして、再度行く機会があるとしたなら、やはり手づくりツアーで行きたいと思っています。
 つまらない話を書きましたが、今後の参考にしていただければ幸いです。
 最後になりますが、計装士会の益々の発展をお祈りいたします。

「香港のダウンタウン」
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千代田計装㈱「計装工事施工資格認定制度」のご紹介

千代田計装㈱
                             計装本部 本部付
                                   計装士会副代表幹事 六平 克

はじめに

当社では、水島地区・鹿島地区の顧客、当社、元請会社が一体となって実施している計装工事共通認定制度を基本ベースとして、当社独自の認定制度を制定し当社4事業所を拠点とした全国展開を図っています。
 以下に、当社の「計装工事施工資格認定制度」の概要を紹介致します。

「計装工事施工資格認定制度」

1.目的

顧客との継続的な信頼関係の構築、関係会社/協力会社との 関係維持の為に、認定制度の目的を下記の通りとする。
 1) 計装工事施工技術の維持、向上、技能伝承。
 2) 品質維持、安全作業の遂行。

2.組織及び役割

運営組織及び役割は「添付-1」(省略:以下同じ)の通りとする。

3.認定制度概要

計装工事施工技術者に対し筆記試験、実技試験を実施し、合格者に対して認定シールを発行する。             又、合格者の所属会社に対して合格認定書を発行する。

資格認定項目は下記の通りとする。
 1) 耐圧パッキン施工士
 2) ケーブル端末処理士
 3) 解・結線士
 4) ガスケット装着士
 5) チュービング施工士
 6) 銅管施工士

4.運営要領

下記の資格認定手順により運営を行う。
  運営フローは「添付-2」(省略)を参照。

1) 認定試験官育成の為の教育者の任命
国内事業本部長は、認定試験官を育成する為の教育者を、下記の条件を全て満足する者の中から任命する。
・条件-1:計装士1級を取得し、現場監督経験20年を有する者。
・条件-2:「水島地区共通技術認定制度」に関して、設立当初から顧客と一体となって参画し、設立後も積極的な運営協力、教宣活動を行い、その地域で顧客に認知されている者。
・条件-3:国内事業本部長が、教育者として技術的に十分な技量を有すると認めた者。

2) 認定試験官の任命
国内事業本部長は、認定試験官を、下記の条件を全て満足する者の中から任命する。
・条件-1:計装士1級を取得し、現場監督経験10年を有する者。
・条件-2:所属の事業所長が技術的に十分な技量を有すると認めた者。

・条件-3:上記1)項の教育者により技術教育を受け、教育者が認定試験官として技術的に十分な技量を有するものと認めた者。
・条件-4:国内事業本部長が、認定試験官として技術的に十分な技量を有すると認めた者。
尚、教育内容、教育資料、教育時間については下記の通りとする。

No.書 類 名 称教育時間
1資格認定制度による工事の信頼性向上とコスト削減90分以上
2耐圧パッキン施工30分以上
3ケーブル端末処理施工60分以上
4解、結線施工45分以上
5ガスケット装着施工30分以上
6チュービング施工60分以上
7銅管施工45分以上

3)技術教育

認定試験官は受験者に対して、計装工事施工技術の教育を実施する。
教育内容、教育資料、教育時間は上記2)項の認定試験官教育と同じとする。

4)筆記試験、実技試験及び合格点

認定試験官は受験者対し、上記6項3)の技術教育を行った後に、筆記試験及び実技試験を実施する。
試験結果を各事業所長経由で資格認定制度実行委員会(以下、実行委員会」という)へ提出する。
実行委員会は試験結果を精査し、国内事業本部長へ報告する。
筆記試験、実技試験の試験問題及び、合格点は下記の通りとする。

No.書 類 名 称筆記試験実施試験
1耐圧パッキン施工士 試験問題(実技)90点
2ケーブル端末処理士 試験問題(実技)90点
3解・結線士 試験問題(実技)91点
4ガスケット装着士 試験問題(筆記・実技)90点91点
5チュービング施工士 試験問題(筆記・実技)80点88点
6銅管施工士 試験問題(筆記・実技)85点85点

5) 合格者の認定
実行委員会は試験結果を国内事業本部長へ報告し、国内事業本  部長が合格者を認定する。

6) 認定シール及び認定証の発行
実行委員会は合格者に対して「添付-3」(省略)の認定シールを、合格者の所属会社に対して「添付-4」
(省略)の計装工事資格認定   認定証を発行する。
合格者の認定番号は「添付-5」(省略)により決定する。

5.その他規定

1) 受験の申込み
・受験を申込む場合は、受験者の所属会社が「添付-6」(省略)受験申込用紙に必要事項を記入して、「添付-1」組織図に示される管轄事業所長へ提出する。

2) 資格認定者の義務
・認定シールをヘルメットに貼り作業を行うこと、また工事監督者は作業前に認定シールの確認を行うこと。
・随時、教育資料を熟読して施工技術の維持及び向上に努めること。

3) 資格認定の有効期限及び更新
・資格認定試験合格者の有効期限は、資格取得から2年後の年の12月31日までとする。
(例:2006年4月に合格した者の有効期限は2008年の12月31日までとする。)
・有効期限が切れるために再認定を受ける場合は、技術教育及び実技試験を実施し、筆記試験は免除する。
・実行委員会は資格認定者の所属会社に対して、有効期限の切れる6ヶ月前に再受験の案内を行うこと。

4)認定シールの再交付
  ・資格認定者がヘルメット交換等の理由により認定シールの再交付を依頼した場合、資格認定合格の有無を確認
   し再交付する。

5) 費用
・資格認定試験に係わる費用(教育資料、試験問題、実技試験用消耗品等)は当社負担とする。

6) 実行委員会の開催
・定期的に実行委員会を開催し、運営方法、教育資料、筆記試験問題、実技試験問題等について検討、見直しを実施する。

7) 役割
・本部長、実行委員会、事業試験官、認定試験官の役割は「添付-1」組織図に示す通りとする。

8) 試験の免除
・「水島地区共通技術認定制度」及び「鹿島地区共通技術認定制度」での認定をうけている者は、当社の認定制度の合格者として認め、認定試検を免除する。また、当社の認定制度合格者が上記の水島地区及び鹿島地区での作業を行う場合は、各事業所長がその地区の顧客の承認を得なければならない。

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低圧配電システム「TLDシステム」

TOENEC Low-voltage Distribution System

㈱トーエネック
                                       伊藤 公一

 

1.はじめに

従来から、自家用電気工作物の低圧配電システムにおける接地方式は、直接接地方式および用途の異なる接地極(A種~D種等)をそれぞれ単独に設ける個別接地方式が多く採用されている(以下、「現状システム」とする)。
 この現状システムは、インバータやOA機器などが多数導入される最近の建物において、ノイズ障害や漏電遮断器(ELCB)の不要動作障害など、様々な問題が顕在化している(1)(2)。特にノイズ障害は、事後の調査や対策が困難であり、多大な時間と費用を浪費することになるため事前対策を行うことが望まれる。
 当社では、上記問題の解決策として、TLDシステム(以下、「本システム」とする。)を提案しており、既に、半導体工場や病院等へ多くの実績を持つ。
 以下に、現状システムの問題点と本システムの概要について紹介する。

2.現状システムの問題点

現状システムにおける主な問題点を以下に示す。

【問題点1】:インバータによるノイズ障害
 最近の建物では、省エネルギーや制御性のメリットからインバータが多用されている。インバータの高周波漏れ電流は、図1に示す通り、インバータの2次側電路から大地に流れ、再びB種接地極から電路に進入し、元のインバータへ還流する。
また、対地静電容量(浮遊容量等)を通して隣接の変圧器バンクに回り込む場合もある。
 このように、最近の建物ではインバータの高周波漏れ電流が建物内を広範囲に流れることから電磁環境が悪化しており、放送設備や情報通信設備等にノイズ障害を発生させる場合がある(1)
 ノイズ障害が発生した場合、その原因調査は困難を極め、多くの時間と費用を浪費する。仮に、ノイズ源が見つかったとしても、①設備を停止できない、②対策機器の設置スペースが無い、などの様々な制約条件により対策は容易でなく、事前対策を行うことが重要である。

【問題点2】:ELCB等の不要動作障害
 最近の建物内では、OA機器等の電子機器が多用されている。一般に、電子機器の電源部分には、ノイズ除去を目的としたフィルタが付加され、電路と大地との間にコンデンサが接続される。また、電子機器を多用すれば、機器への配線量が増えるため、配線の浮遊容量が大きくなる。このため、電子機器を多用した建物では、低圧電路の対地静電容量が大きくなる。
 対地静電容量が大きくなると、商用周波数の漏れ電流が増加し、わずかな絶縁劣化等によって漏電遮断器(ELCB)や漏電警報器(ELR)が不要動作しやすい。
 また、図2に示す通り、地絡事故が発生した場合、地絡電流が対地静電容量を通して隣接の変圧器バンクに回り込み、ELCB等を不要動作させる場合がある(2)。これらの対策として、ELCB等の整定値を高くすることが考えられるが、感電、火災等の安全面のリスクは高くなる。

図1 インバータによるノイズ障害
図2 地絡電流の回り込みによるELCB等の不要動作

【問題点3】:感電および火災危険性
 図3に示すように、現状システムでは、D種(又はC種)接地抵抗がB種接地抵抗より大きい場合、接触電圧が電源電圧に近づき感電の危険性が高くなる。
また、地絡電流や漏れ電流が大きいので火災が発生する危険性も高い。

図3 感電および火災危険性

【問題点4】:接地電位差による絶縁破壊

  図4に示すように、現状システムでは、建物への落雷があった場合、異なる接地極間に大きな電位差が発生し、電子機器内部で絶縁破壊を生じる場合がある。

 図4 接地極間の電位差による絶縁破壊

3.TLDシステムの概要

 本システムには、新設対応型と既設対応型がある。

3-1 新設対応型TLDシステム
 本システムは、2項で示した現状システムの問題点を全て解決するものである。

図5に本システムの基本構成を単線結線図で示す。
同図に示すように、本システムは以下の3つの要素で構成される。
① 非接地式電路
② 地絡電流補償装置
③ 構造体共用接地

図5 TLDシステムの基本構成

(1) 非接地式電路の効果
 非接地式電路は、混触防止板付の高低圧変圧器を採用して低圧電路を非接地とするものである。以下の理由により、2項の問題点2および3の解決策となる。

a.問題点2 (ELCB等の不要動作障害)の解決

 非接地式電路は、従来システムにおけるB種接地抵抗が無限大になったものと考えることができる。したがって、図3に示した式から接触電圧はほぼ0Vとなり、感電事故を防止できる。また、漏れ電流や地絡電流が極めて小さいため、電気火災の危険性も極めて小さい。

(2) 地絡電流補償装置の効果

本装置は、問題点1の対策として開発したものである。
非接地式電路は、地絡電流が小さくなるので地絡事故の検出が困難になる。
このため、一般に地絡電流を補償するための接地コンデンサが電路に設置される。コンデンサは、周知の通り、周波数が高くなるとインピーダンスが小さくなる。このため、負荷にインバータ等の高周波スイッチング機器が接続されている場合、高周波漏れ電流が接地コンデンサに流れ込むことになり周辺の電子機器へのノイズ障害等が懸念される。
本装置は、接地コンデンサを平常時は大地から切り離し、高周波漏れ電流が流れ込むことを防止し、地絡事故発生時には、零相電圧を検出し、速やかに接地コンデンサを大地に接続してELCB等を動作させる。また、このとき、地絡警報の発報を行うことも可能である。

(3) 造体共用接地の効果

構造体共用接地とは、電気設備技術基準で定められているA種、B種、C種、D種の各接地線を全て鉄骨等の建物構造体に接続し、建物の基礎を接地極の代用にするものである。
接地を共用することにより、接地電位差による絶縁破壊の恐れが無く、また、複数の接地極を布設する必要が無くなる。したがって、2項の問題点4の解決策となる。ただし、採用の条件は、建物基礎の接地抵抗が2Ω以下の場合に限る(電気設備技術基準の解釈による)。
構造体共用接地には、この他以下のメリットがある。
① 接地幹線に利用する鉄骨は、電線を使用する場合より低インピーダンスであるため、建物内を等電位化でき、電子機器の安定動作に寄与する。
② 接地極、接地幹線が不要のため、経済的なメリットがある。

3-2 既設対応型TLDシステム

新設対応型では、非接地系統を構成する方法として、混触防止板付高低圧変圧器を使用している。しかし、このような変圧器を一般に使用することは少ない。
このため、既設対応型では、混触防止板付高低圧変圧器に替えて、一般の変圧器のB種接地線に、高低圧混触事故時のみ導通するスイッチである「対地電位抑制装置」を接続して非接地系統を構成する。
「対地電位抑制装置」は、平成15年度の電気設備技術基準適合評価委員会(日本電気協会)において安全上問題の無い装置であることを認められている。
本システムの基本構成を図6に示す

図6 既設対応型TLDシステムの基本構成

4.実験による検証 

本システムを当社本店ビル(名古屋市)に導入し、従来システムとの比較を行った。本店ビルでは、本システムと従来システムの切り替えが行えるように設備している。
 本店ビルの設備概要を以下に示す。

本システムを当社本店ビル(名古屋市)に導入し、従来システムとの比較を行った。本店ビルでは、本システムと従来システムの切り替えが行えるように設備している。
 本店ビルの設備概要を以下に示す。
(1) 変圧器構成
 ・ 電灯1,2(1φ3W210-105V、2バンク)
 ・ 動力1,2(3φ200V、2バンク)
(2) 接地コンデンサ  
 4μF×3(各変圧器バンクに設置)
(3) 接地抵抗(測定値)   
 A種:4.5Ω B種:5.5Ω D種:0.5Ω
(4) 電路の対地静電容量(測定値)
 電灯1:1.8μF 電灯2:2.4μF
 動力1:0.5μF 動力2:0.6μF

評価項目は、漏れ電流、地絡電流(隣接変圧器バンクへの回りこみ電流を含む)、インバータ(エレベータ)の高周波漏れ電流の4項目とした。結果の一例を表1、表2および図7に示す。

<漏れ電流(表1)について>
 本システムに比べて従来システムの漏れ電流は極めて大きい。特に動力回路は対地静電容量が電灯回路より小さいにも係わらず、漏れ電流が極めて大きくなっている。これは、通常、動力回路ではΔ巻線の一端子にB種接地を施すため、零相電圧が大きくなっていることによる。

<地絡電流(表2)について>
 地絡電流は、従来システムでは接地抵抗(B種+D種)に、また本システムでは接地コンデンサによってそれぞれ制限された値になっており、従来システムは本システムより極めて大きくなっている。

<回り込み電流(表2)について>
 従来システムの場合、電灯2の回路に100mAを超える電流が回り込んでいることがわかる。これは、例えば、感度電流100mAの漏電警報器を設置した場合には、不要動作することを示唆している。これに対し、本システムの回り込み電流は極めて小さい。

<高周波漏れ電流(図7)について>
 インバータ式エレベータが運転すると、従来システムにおけるB種接地線に図7のような高周波漏れ電流が流れる。これに対し、本システムは接地コンデンサを通して流れる高周波漏れ電流が極めて小さくなっていることがわかる。
 また、この高周波漏れ電流に起因して発生する電界強度の測定も合わせて行っており、本システムは従来システムに比べ、電気室内の電界強度が極めて小さくなることを確認している。
 以上の結果から、本システムは、現状システムと比較して、漏れ電流、地絡電流、回り込み電流、インバータの高周波漏れ電流の全てが極めて小さく、EMCおよび電気安全の面で優れていることがわかる。

表1 漏れ電流    単位:mA 
表2 地絡電流および回り込み電流 単位:A
図7 高周波漏れ電流の比較

(a) 従来システムの場合

 

(b) 本システムの場合

5. 関連技術の動向

 欧米では、TN方式という接地方式が主流になっている。この方式は、日本の接地方式で言えば、B種接地とD種接地を共用する場合と同等である。特に、保護接地線(PE)と中性線(N)を共用にしない方式をTN-S方式といい、EMCに有効とされている。しかし、以下の点について懸念される。

① TN方式では過電流遮断器による地絡保護が一般的であるが、地絡時に短時間遮断領域となる短絡電流相当の大電流が流れるので、保護協調が困難になる。
  また、遮断に伴う電極の劣化も大きくなる。
② 絶縁物を介した地絡事故が発生した場合、過電流遮断器で保護できず、電気火災に至る危険性が高い。
③ 零相インピーダンスが極めて小さいので、インバータの高周波漏れ電流が大きくなり、電磁障害が発生しやすい。

 また、学会などの動向をみると、EMCに有効な構造体共用接地(統合接地とも呼ばれる)が注目されている。
 しかし、B種接地を他の接地と共用することは、先に述べたTN方式と同等になり、上記①~③の問題が懸念され
 る。

 ①、②の解決のため、B種接地線にB種接地抵抗に相当する10Ω程度の抵抗を挿入して地絡電流を抑制し、漏電遮断器(または、漏電リレー)を使用して地絡検出を行う方法が提案されている(3)しかし、この方法は、図1に示すイ
 ンバータの高周波漏れ電流の流れるルートのインピーダンスは、現状システムと変わらないために、③の対策にはならない。
 これらに対して、本システムは、3項および4項で示したようにEMCおよび電気安全面に優れている。

6. おわりに

2項に示したインバータによるノイズ障害やELCBの不要動作障害などは、今後、インバータやOA機器の多用により、工場だけでなく一般のビルでもさらに増加すると考えられる。本システムは、これらの障害を比較的安価に解決するものである。
本システムが今後のIT社会を支えるインフラ技術となることを期待する。

<参考文献>
(1) 例えば,酒井:「誘導障害と接地システム」,電設技術pp.64-68(2007-9)
(2) 例えば,森下:電気設備トラブル対策pp.82-89(平成18年),オーム社
(3) 昼間:「品川インターシティーの統合接地システム」,
  電気設備学会誌Vol.19,No.10,1999

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コラム

坂出発電所中央制御室集中化工事について

四国計測工業株式会社
                                     電気計装部 設計課
                                  佐久間 博文

はじめに

 四国電力株式会社坂出発電所は、昭和40年代後半に1号機から4号機まで連続して建設した四国電力殿最大の火力発電所であり、石油と共に近隣の企業から送られてくるコークス炉ガスを燃料とし、常時2機以上運転の運用を行っている。
 これまでは、1,2号機は第一中央制御室、3,4号機は第二中央制御室にて運転監視を行ってきたが、昨今の電力自由化に対応すべく、「プラントの安定運転」「設備信頼度の維持」及び、「コスト競争力の追及」のため、二つの制御室を一つに集中化し、コンパクト且つ少人数による運転を実現する「中央制御室集中化工事」を平成13年から、各ユニット定検にあわせて順次実施してきた。
 現在、2,3号集中化工事の無事完遂を経て、最後のユニットである4号集中化工事の工場試験を鋭意実施しているところである。
 今回は、集中化システムの概要について、以下に説明する。

1.中央制御室集中化工事の経緯

 中央制御室集中化に向けての工事は、一括して大規模工事を実施するのではなく、運用面、経済性、実施時期を計り、弁類遠制化等の「基盤整備」、主要制御装置の「老朽更新」、中央制御室の「統合」の3つのフェーズに区分して実施してきた。
各フェーズの概要を以下に記す。

(1) 基盤整備工事(平成14年~15年)

a.現場で手動操作をしている手動弁を、中央制御室から操作できるようにするなど、現場設備の遠制化、操作性向上を図り、起動停止時に中央制御室にて運転監視操作が行えるようにする。
   ・現場の操作端(手動弁他)を遠隔制御化
   ・現場監視カメラの増設
   ・機器異常検知システムの新設

(2) 老朽更新(平成16年~20年)

a.プラント制御装置、バーナ制御装置、ユニット計算機(DL)*1の老朽化が進んでいる制御装置を更新し、デジタル化するとともに、ネットワーク対応機能を付加することにより、ユニットネットワーク*2を構築して、CRTオペレーション化を実現する。
   ・プラント制御装置更新
   ・自動バーナ制御装置更新
   ・ユニット計算機更新
b.ワンループコントローラ等で構成しているローカル制御装置も制御装置と同様に更新しCRTオペレーション化を行う。
   ・ボイラローカル制御装置更新
   ・タービンローカル制御装置更新

(3) 統合工事(平成17年~20年)

a.新中央制御室建屋を新設し、第一中央制御室から順次、中央制御室における操作監視機能を移行する。
b.既設BTG盤*3にある操作スイッチ、指示計、記録計、警報などの操作監視機能を、それぞれの制御装置、計算機、OPS*4等の各装置に取り込み、統括オペレーションを実現する。
c.ASP機能*5を付加することにより、プラントの起動停止および通常運転操作をサポートする。
   ・BTG盤他改造工事
d.大型スクリーンシステムを構築し、情報の共有化を図る。
   ・共通監視盤新設工事

2. 集中化システム構成概要

 集中化システム構成は、ボイラ制御装置(APC,BC)*6、ローカル制御装置(LC)*7、 遠制化制御装置(SQ)*8、ユニット計算機(DL)の主要機器とOPSをユニットネットワークで結び、4台のOPSと大型スクリーンでプラントの起動停止、通常運転における監視操作を集中して行えるシステムを構築した。集中化システム構成における主な特徴を以下に記す。

(1) 4台のOPSで運転

 OPSにはAPS機能を導入し、プラントの起動停止、通常運転における運転員の監視操作を補完することにより、少人数化に対応できるようにしている。
 このAPSの進行はブレイクポイント方式*9を採用して、あくまでも運転員判断の元に工程を進めていく方法をとっている。また,操作は全てマウスオペレーションで行うことができるとともに,プラントの運転情報を2秒周期で系統画面やトレンドグラフに表示させることにより,操作面,監視面を両立させた,統括オペレーションシステムを構築している。

(2) 警報情報の差別化

 プラントの警報は、ユニットネットワークのダウンを考慮しOPSに直接取り込むことにより、ネットワークを介さないシステムとして他の運転信号との差別化をはかった。また、プラントが非常停止した場合の要因を判断するために、トリップシーケンス機能*10も設けている。プラントの非常停止やシステム故障等の重要警報については,監視補助盤に直接表示している。

(3) 大型スクリーンの採用

 プラントの系統状態のみならずOPSでの操作画面、現場監視カメラの映像などいろいろな映像情報を50インチ4面の大型スクリーンに表示させることにより、情報の共有化および監視機能の向上をはかっている。
 休転ユニット*11の大型スクリーンの有効活用の観点から、休転ユニットのスクリーンには異なるユニットの画面も運転員が選択することで表示可能としている。

(4) FAシステムとの連係

 ユニットネットワーク上の全ての情報を計算機用ゲートウエイ(GWD)を通してユニット計算機に取り込み、そこから火力FAシステムへ1分周期でデータ連係、運転データの蓄積を行っている。また、警報や操作ログデータも情報系LANを通して10分周期でデータを連係している。それらの連係されたデータは、事務所のFA端末で確認することができ、運転状態の把握や各種データの管理が可能となっている。

(5) 共通ネットワーク

 共通監視装置、送電線操作監視装置、環境計算機で共通ネットワークを構成しており、共通関係の情報は2台の共通OPSに表示する。共通ネットワーク上のデータはあらかじめ選定したデータと環境計算機が直接取り込んだデータを火力FAシステムへ伝送している。

図1 集中化システム構成(2号機)
図2 坂出発電所 システム構成(全体)

3.2・3号中央制御室集中化工事概要

 坂出発電所中央制御室集中化工事のうち,BTG盤他改造工事について、その基本計画や工事概要を説明する。

(1) 2号BTG盤他改造工事

 本工事は、既設中央制御室で運転員がプラントの運転監視操作を行ってきたBTG盤の操作機能、監視機能を各制御装置に取り込むための既設盤の改造工事と、第一中央制御室機能の移管工事を行う。

【改造工事】

a.弁類遠制化制御装置改造
   ・プラントの補機、電動弁等の操作信号の取り込みを行い、遠制化する。
   ・各種条件を取り込むことにより、シーケンスマスター*12での運転を行う。
 b.警報入力装置の新設
   ・既設警報リレー盤を改造して警報情報をOPSに直接取り込み警報を画面に表示させる。
   ・現地盤の個別警報についても、取り込みを行う。
   ・警報は重故障警報、軽故障警報に区分して表示する。
   ・重要警報(トリップ、手動トリップ要因、システム重故障)については、監視補助盤にシステムを介さずに直接表示る。
 c.既設汎用シーケンサ改造
   ・各装置の汎用シーケンサ(PLC)を連係し一括して情報を取り込むために、マスターPLCを新設する。
   ・対象装置は、EP装置*13、復水脱塩装置、薬注装置、スートブロワ装置*14などとする。
 d.OPS改造
   ・プラントの全体系統図、タービン監視画面など、大型スクリーンの4面全てを使用した専用画面を追加する。
   ・APS機能を追加する。

【移管工事】

a.第一中央制御室から新中央制御室への機器移設
   ・ユニットOPS、共通OPS、工送OPS、その他共通設備機器の移設を行う。
   ・電話装置、ページング装置等の通信機器を移設する。
 b.新中央制御室内への機器新設
   ・監視補助盤を新設し、プラントの保安上必要な操作スイッチ、警報、指示装置を設ける。
   ・ユニット操作卓、当直長卓、時計装置、総合監視モニタを新設する。
なお、大型スクリーンシステムの新設は、ユニット計算機更新および共通監視盤新設工事にて実施する。

(2) 3号BTG盤他改造工事

 本工事は、前述の2号BTG盤他改造工事の基本計画を踏襲しており、既設第二中央制御室で運転員がプラントの運転監視操作を行ってきたBTG盤の操作機能、監視機能を各制御装置に取り込むための、既設盤の改造工事を行う。
 移管工事は第二中央制御室が対象となるが、4号機が残るため第二中央制御室機能の移管工事は4号BTG盤他改造工事で受け持つ。

(3) APS機能の基本方針(2号機)

 今回の集中化工事での主要な機能であるAPS機能の基本方針について以下に記す。
 a.基本方針
 プラントの起動・停止操作および通常運転操作を自動化する。また、制御性・信頼性および保守性の向上を図った合理的なシステムを構築して、運転員がプラント全体の運転監視・操作を集中化できるようにする。
また、運転員が培ってきた運転ノウハウを可能な限り反映させる。
 b.改造範囲
 ブレイクポイント方式を採用したAPS機能として既設OPS装置に構築する。
 また、既設遠制化制御装置のマスターシーケンスを追加、改造するとともにプラント制御装置、バーナ制御装置および、ボイラローカル制御装置のロジックについても改造を行い、APSとの連係を図り自動化範囲の拡大を行うものとする。
 c.自動化範囲
 自動化はOPS装置のAPS機能を中心として行い、プラント起動準備から目標負荷到達、通常運転からプラント停止に至るまでの過程をブレイクポイント方式により自動化する。

4.4号中央制御室集中化工事の近況

 中央制御室集中化工事の最終工事となる4号機は、既設盤の改造、機器移設工事に加え第二中央制御室機能の移管工事を含んでいる。
 現在、設計、製作段階を終えて工場試験を行っており、2月上旬のユニット計算機の工場御立会検査、下旬の総合工場御立会検査に向けて順調に仕上がってきている。
 現地工事側では、大型スクリーン、入出力装置の機器の搬入を終え、ケーブル工事に取り掛かっているが、4号機は運転中であるため、本格的な工事は3月上旬から始まるプラントの定期検査からとなる。
  ●ユニット計算機工場御立会検査 :平成20年2月5日~6日
  ●総合工場御立会検査      :平成20年2月25日~28日
  ●中央制御室集中化工事竣工   :平成20年5月30日 

新制御室イメージ図

おわりに

 平成13年の4号弁類遠制化工事の計画から始まった、中央制御室集中化工事も7年あまりの歳月をかけ、いよいよ大詰めとなりました。
 コスト低減、技術力向上、設備信頼度維持と厳しい課題の中、2号機、3号機と無事に工事を完遂することができました。今後もランニングコストの低減、機能改善に努めてまいります。
 ご指導、ご協力をいただいた関係各社の皆様に、この場をかりてお礼申し上げます。

(用語の説明)

*1 ユニット計算機(DL) :Data Logger発電設備の監視、性能管理、日誌作成用計算機
*2 ユニットネットワーク:発電設備全体(ボイラ、タービン、発電機他)に亘る監視制御用ネットワーク
*3 BTG盤 :B=ボイラ、T=タービン、G=発電機 発電設備の操作・監視用制御盤で、従来は警報窓、指示
  計、記録計、操作器などが全面に配置されていた
*4 OPS : Operators Station 運転操作用端末
*5 APS : Automatic Plant Startup System 運転条件に応じてシーケンスマスターの進行を制御するシステム
*6 ボイラ制御装置(APC,BC):Automatic Power Plant Controller 主にボイラー関係の圧 力、温度、流量
  を制御、Burner Controller バーナーの点消火を制御
*7 ローカル制御装置(LC):Local Controller ボイラ、タービン関係のローカル的な制御装置
*8 遠制化制御装置(SQ):Sequential Controller あらかじめ定められた順序または手続きに従って制御の各段階
  を逐次進めていく制御装置
*9 ブレイクポイント方式:自動化された一連の発電所起動停止制御をステージごとに区切り、運転員の判断で起動
  する制御方式でAPSにおいて採用
*10トリップシーケンス機能:重大事故発生時に、あらかじめ選択して入力された接点情報を時系列に並べて出力
  し、事故解析を支援する機能
*11休転ユニット:停止している発電ユニット
*12シーケンスマスター:補機、弁類駆動をシーケンス制御する回路ごとに付けられた名称
*13EP装置:Electrostatic Precipitator ボイラの排気に含まれるダストを帯
  電させ捕集する装置
*14スートブロワ装置:Soot Blower ボイラ伝熱面に付着した煤、ダストを蒸気の噴霧により落とす装置

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コラム

ロードバイクの愉しみ

ダイダン株式会社
研究開発センター
渡辺 洋平

スポーツ自転車乗りが増えている

 近年,我が国の都市部を中心にスポーツ自転車に乗る人が増えている。健康を意識して乗る人の他,季節を肌で感じ,風を切ることに魅了されて走る趣味人が多いようだ。自転車は,徒歩よりも速くクルマよりもスロー。この程良いスピードは,今まで見逃していたものを再発見させ,よもやま事を考えるきっかけを与えてくれる。ぜひ,みなさんも自転車を生涯の趣味,生活の一部として活用するのはいかがだろうか。本当に愉しいのだから。自転車にも様々な種類がある。
 シティサイクル(ママチャリ),マウンテンバイク,BMX,クロスバイク,ロードバイク,リカンベント,フォールディングバイク・・・など。自分の目的や嗜好で選べば良い。シティサイクルでも自転車の楽しみを享受できるが,できることならシティサイクル以外のスポーツ自転車をお勧めしたい。
 これは散策や食べ歩き,小旅行にも便利な乗り物だ。運転も楽で適度に速く,行動範囲が広がる。今回紹介させて頂くのは,私が専ら生活・趣味に愛用しているロードバイク。
 ロードバイクは舗装路を高速で走る自転車。「ロードバイクはツール・ド・フランスを走っている自転車」と言えばイメージして頂けるかもしれない。ロードバイクは乗り慣れると日帰りで100~200km位の距離のサイクリングもできる。
練習すれば一般人でも30km/h以上で車道を巡航することができる(もっと速く長距離を走る強者もいる)。

ロードバイク

  自転車を趣味としない人に,何十万円もする自転車を買う理由を説明することは難しい。
 私は苦労して妻を口説き落とし,20万円強のロードバイクを買った。ロードバイクの値段は10万円弱~200万円程の幅があるが,私には20万円の自転車だって十分に高価だ。
 各社カタログを読みあさり研究した。私は一目惚れしたイタリアン・ブランドの少々古めで伝統を感じさせるデザインのロードバイクを選んだ。
 趣味なのだから,性能よりも”自分なりの嗜好”を尊重した。ロードバイクに美意識は大切だと思う。

元々スポーツが苦手で健康にも無頓着なタイプだった私は,中年になってからロードバイクに格好良く乗ることを目指し,身体の事(健康・体力・体型)を意識するようになった。
  速く走る事を第一に設計された自転車。乗り心地よりもスピードと操作性を重視。車体重量はママチャリの1/3程度(9kg前後)。片手で楽に持てる程だ。細いチューブ素材を構造計算して造形・溶接した軽量フレーム。細いタイヤにホイール。剛性と軽量化のバランスを考えながら肉抜きされた部品。乗り手の筋力をスポイルすることなくクランクに伝えるための固く高いサドル軽いギアから重たいギアまで選択可能な20段の変速装置。現在の最新変速装置やブレーキは,昔に較べてかなり操作性が良いので驚かされる。
 ロードバイクの機能美と造形美部屋で眺めていて飽きない(このような自転車はマンションの駐輪場などに置くと盗まれるので室内保管が基本。)

サイクリング

  日頃,私は2台の自転車を乗り分けている。
 どちらも大切な自転車だが,古いクロスバイクは普段乗り用(近所の買い物や雨天時)に使っている。
 一方のロードバイクは,愉しみで走る時に部屋から引っ張り出して乗る。多分,この趣味の人は私と同じような使い方をしている人が多い。
 さて,ロードバイクでどこを走るか。
これは個人差があり,河川沿いのサイクリングロードを流すのが好きな人もいれば,アマチュア・レースやライド・イベントに参加する人もいる。
また,自転車を分解して専用袋に入れ,クルマや鉄道等で海や山に出掛けて(輪行という)好きな土地で乗る人も居る。

埼玉県に住んでいる私の場合,土地の利を活かして奥多摩や秩父方面の山間部の峠へ出掛けることが多い。
 往復路を自走する。山は緑も多く坂も多い。森林の空調のおいしい空気を吸い,鳥の声を聞きながら自分のペースで峠を登っていく。反対車線を下ってくる同志を見れば,互いに手をげたり声を掛けて挨拶したりもする。
急坂は辛い反面,愉しみがある。汗をしたたらせ,身をよじらせながら激坂をフラフラになりながら登る。足を着かずに峠の頂上に到達した時は何とも言えない達成感がある。
息切れし,脚はガクガクになるがココロは爽やかだ。ストレス解消。辛い上り坂があれば楽な下り坂がある。だから頑張れるのかもしれない。サイクリングは仲間と走る楽しみもあるが,私はどちらかというと1人で走るのが好きだ。ただ走ることに集中して無心になる。時には,走りながら日常のことをじっくり深く考えることもある。こうした1人の時間は,私にとって大切なリフレッシュ時間だ。
 休日,朝から夕方まで自転車で出掛けたままの私。家族には本当に感謝している。

機械・制御

  本誌をご覧のような機械や制御の専門家なら,自転車に触れていると”メカ”としての魅力にも惹かれると思う。
 形状だけでなく,例えば,ギア比と走行能力の関係,各部品の動きの連携,部品同士の相性,素材の特性を気にしてみる。クルマと違い,自転車は少々の工具と知識があれば殆ど自分で分解整備もできる。部品1つを手にとって眺めても様々な工夫が見て取れる。
 ロードバイクの部品には,ほぼ汎用性がある。規格があり,国内外各社から部品が販売されている。
自分の好み,期待する性能に改造・グレードアップするのも愉しい。サドルやハンドルポジション等のセッティング追求も奥が深い。
  そんなロードバイクは,操縦も”計装的”だと思う。私はロードバイクのハンドルにサイクルコンピュータと心拍計という計測器を取り付けて走っている。この計測器では,現在速度,平均速度,走行距離,積算走行距離,クランク回転数,走行時間,心拍数がリアルタイムでモニタリングできる。
 自転車のエンジンは自分の身体。特に心拍数は大切だ。私は身体中に酸素を運ぶ血液ポンプ(心臓)の回転数(心拍数)をリアルタイムにモニタリングする。長い急坂などで自分の最大心拍数を超えるような負荷が長く続くと,いずれエンジンは壊れ,私は倒れてしまうであろう。
しかし,私はロードバイクの状態や心拍数変化を把握しているおかげで,負荷に応じた安全走行で朝から夕方まで平地や坂をマイペースで走り続けることができる。その他にも走行中はエンジンへの燃料(水分,糖分や塩類など)補給も常に意識し,身体や車体の状態を確認しながら自身を”制御”している。機械を操る愉しみ。計装士の皆さんなら,自転車は仕事のごとく魅了されるスポーツ・遊びかもしれない。

【健 康】

  まじめにロードバイクに乗り始めた私は,速く遠くまで走るため,目標の峠で足を着かずに登るために,20年近く愛していた煙草をやめた。そして,前述の心拍数モニタリングによって体脂肪燃焼に適した有酸素運動状態を維持することも出来る。私は昨年に心拍数管理(有酸素運動)をしながら自転車に乗り,食事制限もせずに半年で10kg近く減量できた。
 健康診断で肥満や血中の中性脂肪が多いとか高血圧を指摘されていた私は,それらの課題をほぼクリアしつつある。
自転車は,体重がサドルとハンドルとペダルに分散されるため,ランニングより身体への負担が小さいながら大きな運動量が期待できる。
よく「自転車に乗ると競輪選手みたいな太い脚になるから嫌だ」と言う人が居る。しかし,競輪選手のような太く強靱な脚になるには,過酷なトレーニングが必要で,趣味人が多少頑張ってもあのような立派な脚は欲しくても得られない。
実際,中年である現在の私の腹周りはメタボで悩ましいところだが(腹周りは今後の課題。
走った後のおいしいビールが原因か。),脚は以前よりも締まって細くなってきている。
私には原文を見つけることができないのだが,ドイツには『トラック1台分の薬よりも1台の自転車を』という意のことわざがあるらしい。「病気になって薬に頼る前に自転車に乗ろうよ。
そうすれば病気になりにくく健康でいられるのだから。」である。今の私なら,それを信じることができる。
実際,ヨーロッパの人は,アジアの人よりもよく自転車に乗ると聞く。社会的地位がある高齢者も「自分はまだこれだけの体力と気力があるのだ。」というアピールで自転車に乗る風潮があるそうだ。知的で意識が高いことだと思う。

道路環境・地球環境

  ヨーロッパ等の自転車先進国は,街の道路環境や政策も自転車にフレンドリーだ。
 田舎のクルマは別として,市街地中心部の交通インフラは,徐々にクルマから公共交通機関・自転車・徒歩スタイルにシフトしてきている。一方,日本はそうではないし,自転車が走りやすい場所が少ない。先進国と呼ばれる国々の中,自転車が歩道を当たり前に走っているのは日本だけだという。
 我が国の道交法では,原則(幼児や高齢者,警察官等が判断した場合などの例外を除き),自転車は車道走行だ。
2008年6月1日施行の改正道交法の中でも,それは改めて明文化された。
しかし今も自転車が車道を走れば危険のままであるし,歩道では自転車は加害者になりやすく,歩行者は事故に遭いやすい。自転車同士の事故も起きやすい。自転車対歩行者の事故でも, 大怪我や死亡に至るケースもある(自転車対歩行者事故でも,極端なケースで加害者の自転車高校生に5,000万円もの賠償命令の判例あり。注意していても事故は起こり得る。
 手軽にはクルマ保険の特約にある安価な賠償責任保険などの加入だけでも勧め。)。今の我が国の交通慣習(マナーの悪い自転車乗りが多いことも含め)が残念である。
 「車道にはクルマ以外に自転車も走っている。」ということが国民に広く認知されるだけで,自転車とクルマ達はもっと安全に共存できると私は考える。変化を始めている我が国の交通行政に期待したい。
  ささやかながら地球環境の話も。自転車も製造・流通過程では,鉱物資源・エネルギー等を消費するが,クルマ製造や走行よりは二酸化炭素排出量は少ないはずだ。大袈裟に言うならば,自転車のルールやマナーが遵守され,交通インフラとしてクルマ等と共存・活用されれば,我が国はもう少し健やかで環境にやさしい社会になるのではないか。
ちょっとした1人移動なら,なるべくクルマを控えて自転車を活用してはいかがだろうか。
個人差があるが,私は半径20~30kmの移動なら殆ど自転車で用事を済ませるようになった。
もちろん,みんなが自転車に乗ったからといって地球温暖化が大きく抑制されることはないだろう。でも微力ながら出来ることから始めたい。私の自転車仲間にも多いが,自転車に乗っていると地球環境や行政のことを考える機会が増えるらしい。自分たちの暮らしと子供達の未来
私は今日もサドルの上でよもやま事を考える。

  いや,私は別に難しいことを考えるためでなく,ただ自転車が好きだからロードバイクに乗っている。まだ自転車の魅力に気付いていない方には,ぜひ自転車生活をお勧めしたい。
ちょっぴり人生がシンプルかつ豊かに変わる・・・かもしれない。

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リサイクルについて

株式会社関電工
水野 初男

 リサイクルの必要性・・・

地球に生物が生まれ、人類が誕生した。人類は他の動物と異なり道具と火を使うことで他の生き物には真似できない環境破壊をしてきた。地球が、生命の出現するまえから蓄えてきた資源を、人類がそれまでの蓄積を食い潰してきた。河川や湖沼の汚染は排水を流したことだけが原因でなく環境と生物の相互関係の破壊が農業や漁業に影響を与え、食料生産量が落ち、地球温暖化による海水温の上昇と海水汚染で珊瑚礁が破壊されればそこに生息していた魚たちも死ぬ。人類だけが生き残る地球はありえない。20世紀は次々と製品を作り出し生活を便利なモノで満たしてきた。新しい機能、製品の出るスピードが早くなるほど、古い機能や製品が捨てられる量も増える。資源そのものが捨てられていたのだ。さらに産業活動が健康被害を引き起こしていることがわかり環境への危機感が生まれるようになった。
それまでの資源浪費型の社会構造は環境汚染と資源の枯渇を招き、さらに人口増加による食糧不足に陥ると警鐘されてきた中から環境と人間活動が折り合うため、限りある資源を有効に利用するためのリサイクルへの取り組みが世界で拡大した。地球環境に壊滅的な打撃を与える一歩手前で人間はふみとどまった。
 人間は地球のあらゆる資源に依存して生きているのであり、地球環境は人類存続のために考えなければならない問題であり国際的な共通認識になっている。
 いま、人類はその生存の危機に面している。地球がダメになったら元も子もない。だからこそリサイクルは国際的な政治課題であり、全ての個人が取り組むべき課題である。
 21世紀は資源不足の時代となる。とくに地下資源の多くは21世紀中に完全に枯渇すると言われ、資源の危機的状況を迎える今、貴重な資源のムダのない活用、あるいは使用済み製品を含む廃棄物の再資源化への取り組みは本格化せざるを得ないだろう。資源を浪費せず、使い捨ての資源の流れを循環型にさせる。端的に言えば、焼却処理や埋め立てなどのからの脱却である。
 世界の焼却炉の約7割がこの狭い日本の国土に集中しているのが現状である。焼却処理の目的は廃棄物の減溶化だが、焼却後には焼却灰が残る。生産→消費→廃棄という 一方通行の流れである。
廃棄物を如何に抑制するかと同時に排出されたものを再利用するリサイクルのしくみが必要となる。

リサイクルとは・・・

 地球環境は水の循環、動物と植物による酸素と二酸化炭素の循環などから成るさまざまな物質によって成り立ってきた。
 産業革命以来人間は化石燃料を大量消費するようになり、特に20世紀には資源浪費により地球の物質循環バランスをくずしてきた。これが地球破壊である。
 バランスを補正するには自然界で分解しきれない排出物を除去し、排出源を減らし、あるいは排出源を止める。また資源の枯渇を目前にした今こそすべきことは、人為的なリサイクル、つまり一度使った資源を再利用するリサイクルの推進である。リサイクルには再使用、再資源化、分別・分解、発生・抑制・減量・減容化、エネルギー回収が挙げられる。

① 再使用とは、古本、古着、古道具、 中古車、中古住宅、フリーマーケットなどあるがままにものを再使用するシ
  ステムだ。リサイクル以前の、いわば人間の知恵とでも言える。また、再使用するに当たって住宅リフォームのよ
  うに不具合の補修、改修の需要も高まってきた。
 人口が多く、需要と供給のバランスがとりやすい都市部から形成されている。

② 再資源化とは、牛乳パック、ペットボトルなど製品になったものを解体、分解して改めて資源として利用できる形
  にするものである。資源を最大限に利用し、廃棄物を減らすことで長期的にみた環境負荷の低減である。

③ 分別・分解とは、ペットボトル、牛乳パック、食品トレーなどに分けて回収する。消費者が分別 しやすいように
  各々素材を表示する事を製造業者に義務づけている。素材ごとに分けて、はじめて再資源化が可能となる。
  製品の設計段階で 分解しやすいだけでなく、素材が識別しやすいよう製造され、さらに分解しやすい部品の開発
  も行われている。

④ 発生・抑制・減量・減溶化とは、廃棄物による環境負荷を減らすためには廃棄物を製造段階での排出抑制し、無駄
  をなくして廃棄物を減らし、また長寿命化を図る。廃棄物を圧縮、破砕、熔解などの方法による減量,減容があ
  る。回収されたアルミ缶やスチール缶をプレス機にかけて圧縮したうえでリサイクルのルートにのせる。
  一般廃棄物の有料化が進むことから市民にとってもごみを減らすことは資源と家計の両面で節約になる。

⑤ エネルギー回収とは、ゴミ焼却場で発生する熱を利用した温水プールや温室のように、廃棄物をエネルギー源とす
  ることによって有効活用するのがエネルギー回収である。ごみ焼却熱による発電や一般廃棄物からつくった廃棄物
  固形燃料による発電システム、さらに下水汚泥などの有機性廃棄物をメタン発酵させて得るメタンガスを利用した
  発電システムも実用化されている。

リサイクル法・・・

① 資源を有効利用する循環型社会への転換を図るため社会のあり方を法的に規定したのが循環型社会基本法(基本的
  枠組法)。資源を再生利用する事とともに広く発生抑制を促進する目的とした資源有効利用促進法。容器包装に使
  われているアルミ、プラスチック、紙は再資源化が可能であることからリサイクルを促進する法律を容器包装リサ
  イクル法。

② 家庭から廃棄・排出される家電製品のうち、冷蔵庫、洗濯機、エアコンを主に再商品化を図る目的で設けられた家
  電リサイクル法。食品の製造、流通、販売のほか外食産業やホテルなどの事業者を対象に食品廃棄物の排出抑制、
  再資源化の促進を目的とした食品リサイクル法。

③ 建設廃棄物自体は減量化が難しいうえ、不法投棄も問題になっている。この建設廃棄物を削減し、資源の有効活用
  を目的とした建設リサイクル法。

④ 自動車とそのシュレッダーダスト、カーエアコン使われてい るフロン類、エアバックについて自動車メーカーや輸入
  業者に回収・再資源化を義務づけた自動車リサイクル法。

⑤ 循環型社会の形成を促進するために国などの公的部門が環境配慮形製品を積極的に利用する事を定めたグリーン購
  入法。

リサイクルの活用・・・

① パルプや古紙は50%は新聞紙になり、トイレットペーパ、コピー用紙、包装紙などさまざまな紙に再利用されて
  いる。週刊誌などの雑誌は紙の表面に塗料を塗った紙質や本を閉じるのに使われている脇糊でリサイクルを困難に
  している。
  またリサイクルを繰り返して品質が劣化した古紙は圧縮して乾燥させ棒状に押し固めて成型した固形燃料として活
  用している。

② 家庭や事業所から年間500万㌧発生するプラスチックの約70%はペットボトルなど容器包装物が占めている。
  ペットボトルを圧縮梱包し再生PET樹脂に加工して制服やスーツなどの繊維製品のほか卵パックなどに使われる
  シート製品として多様化している。また発泡スチロー ルは体積の98%は空気であり重量のわりにかさばることが
  回収や処理にてこずって4割近くが焼却もしくは埋立処分されている。

③ スチール缶のりサイクル率は80%以上に上がっている。製鉄工場で鋼鉄の原料として再利用されている。
  スクラップを用いることで鉄鉱石から鋼材を作る場合に比べてエネルギー消費量を75%も削減できる。 スチール
  缶をはじめ自動車、家電、鉄道、船舶の材料、ビルや橋梁といった建設原料として利用されている。
  アルミ製品は再生地金として何度もリサイクル可能のためアルミ缶からアルミ缶へ再生する。使用済みアルミ缶を
  リサイクルすれば新地金を製造するときの約3%のエネルギーで済む。

④ 電化製品や自動車部品などの工業製品や日用品の原料として再利用されている。エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯
  機などの家電 、パソコンおよび自動車は引取先で機能診断や動作確認して再商品化できるものは中古販売、レン
  タルとして利用されている。

⑤ 乾電池などの一次電池はマンガン約25%、亜鉛約30%を含んだ亜鉛カスを回収しフェライトなどの磁性材料と
  して活用しているがリサイクル率は1割しかなく大半は埋立処分される。 また充電式電池(二次電 池)のニッカ
  ド電池からニッケルとカドミウム、ニッケル水素電池からニッケル、リチウムイオン電池からコバルトと稀少金属
  が回収され6割ちかくのリサイクル率を達成している。

⑥ 衣料品は中古衣料品店や新しいデザインの衣服に仕立てなどリサイクルしているが全排出量の1割にも満たないで
  処分されている。

⑦ 日本で年間約2000万㌧発生する食品廃棄物のうち一般家庭から発生する生ごみは半分の約1000万㌧を占め
  ている。なんといっても堆肥化だ。
  発酵や熟成の過程を経て生産された堆肥は各農家で有機肥料として活用され、これによって育てられた野菜などの
  農産物が各家庭に戻ってくる。

⑧ これまで食品加工工場などから排出される廃食用油は家畜飼料や石鹸、塗料の原料などにリサイクルされてきたが
  活路を開く用途として活用してきたのがバイオディーゼル燃料である。
  廃食用油にメチルアルコールを反応させてつくるメチルエステルを原料としたものでディーゼル車輌の燃料として
  使用している。
  廃食用油100㍑から95㍑のバイオディーゼル燃料が精製可能だ。

⑨ 下水汚泥は焼却の後に陸上や海に埋め立てられているが下水汚泥を受入れる最終処分場はあとわずかである。
  現在、下水汚泥のリサイクルり率は約6割で、建設資材としての利用が4割、緑地・農地での利用が約2割を占め
  る。建設資材としての用途のうち2割は汚泥焼却灰をセメント原料(エコセメント)に利用する。
  焼却灰をセラミックの製造技術を用いて圧縮、焼成してレンガも製造する。また脱水した汚泥を溶融炉に投入し、
  溶融スラグを製造して道路などの路盤材として活用している。

⑩ 空気のない状態で活動する嫌気性微生物によって一般家庭から排出される生ごみや下水汚泥などの有機物を分解す
  るとメタンガスが発生する。メタン、炭酸ガス、水素などで構成されているメタンガスの実用化が進み発電機の燃
  料として使用して電力(バイオガス発電)が得 られる。

⑪ 建設廃棄物であるコンクリート塊のリサイクル率は96%で再生骨材、砕石、路盤材に利用される。またアスファ
  ルト塊のリサイクル率は98%で道路の舗装材、合材に利用されているが道路など公共工事の削減で先細りしてお
  り新規用途の開発が必要とされている。

⑫ 木造住宅の解体で排出される建設発生木材のリサイクル率は40%で半分以上は焼却処分されている。木くず焚き
  ボイラーの老巧化や銭湯の廃業で減少して来たためである。そうした中で、木質チップに再生され、紙パルプ原料
  や木質ボード、石こうボードへの混入、炭化によって作られる防湿剤、吸着剤、土壌改良剤などに使われている。

⑬ 4ヶ月程度で新機種に入れ替えられるパチンコ台は重量比でおよそプラスチック30%、鉄30%、木材25%、
  その他(非鉄金属、液晶、基盤など)15%で構成される。 液晶、基盤コード類は手作業で取り外され再利用す
  る。残りは破砕して鉄を回収した後固形燃料化、セメント原  料・燃料化される。

⑭ 廃タイヤのリサイクル率は90%を達成している。カットされたタイヤや丸タイヤはそのままセメント炉、製鉄
  炉、ボイラーで燃料として使用している。またゴム粉、再生ごゴム、ゴムタイル、ゴムブロック、靴底に再使用さ
  れているが、最近は陸上競技場のトラックなどに使われる弾  性舗装材が注目されている。

さまざまな地下資源は近い将来に枯渇することがわかってきっている。
地球の環境は危機的状態である。動植物の絶滅や温暖化、酸性雨、砂漠化だけではないのだ。
地球そのものが危機に瀕していることを一人一人が認識すべきである。
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コラム

大原ヒラメ三昧

株式会社きんでん
 稲垣 常彦

 千葉県外房の大原港は昔からヒラメや真鯛釣りで有名なところでヒラメは10月~4月を遊漁船の漁期とし資源保護を計っています。
 20年以上前に初めてヒラメ釣りに連れていってもらった時に40~50㎝のヒラメを3枚釣りました。それ以来今日迄50回はヒラメ釣りに行き,釣れる釣れない含めて1.5枚/回平均ですので高級魚にしては確率がかなり高い釣り物です。しかしヒラメは簡単に釣れると思ってはいけません。釣り仲間と切磋琢磨を繰り返した結果です。
 ただ貧乏人ですので道具に凝れません。釣り漫画でも見たのか高価な釣り道具と格好いい服装で全然釣れない若い客の団体を時たま見ます。金をかければ釣れるものではありません。
そうです能書きでなく『腕』が要るのです。
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 私は昔買った安い竿をいくつかヒラメに合わせて改造して釣っています。専用のヒラメ竿は数万円もして高すぎとても手が出ません。
 そうは言ってもヒラメは案外気まぐれで真鯛みたいに上級者が一番釣れるわけでもなく初心者のエサに食いつき初心者が一番釣れることがあります,不思議ですね。
 10月解禁のヒラメ釣りに大原の義丸(よしまる)へ行きました。朝4時半の集合時刻には神奈川県からも多数釣り客が来ており素泊まりの宿泊者も含めて船宿は一杯です。
皆さん自分が竿頭(船中で一番釣れた人)になる夢を見ながら釣り談義に花を咲かしています。
 仕掛けを購入し船代を支払い船宿から港の船へ移動すると港は煌々と灯りを付けた釣り船が一杯で船に乗り込んだ釣り客がさかんに用意しています。私の乗る義丸は船長一家が総出で港へ来て準備中で釣り客は自分が取った場所番号札を見ながらクーラーボックスを置いています。
 私はオオドモにクーラーボックスを置き竿掛けをセットし準備完了です。大原漁協協定時刻の5時に釣り船が順次港を出港して行きます。義丸も出港で港では船長一家がお客の大漁を願って「頑張ってー」と言いながら手を振っています。波もなく順調に船ごとに魚場を目指して港から散って行きます。30分位走ると船のエンジンがスローダウンし船室にいた釣り客が各自の釣り席へ移動します,海は凪で廻りはもう明るくなっており良い釣り日和で海岸の崖やホテルが良く見えます。中乗りが元気の良い餌にするマイワシをバケツに数匹ずつすくって客に渡します。
船は釣り場所を決めるためゆっくり旋回しています。仕掛けにマイワシを丁寧に鼻掛けし船長の釣り開始の合図を待ちます。 船長のさあどうぞのマイクの声を合図に皆一斉に海に80号のオモリと仕掛けを降ろして行きます。イワシは魚編に弱と書くように弱りやすいので仕掛けをゆっくり20mの海底に降ろします。イワシが元気な程ヒラメが釣れます。
 イワシは元気で盛んに竿先を引き込みます,ヒラメの当たりとそっくりな引き込みもよくあります。最後の大きな引き込みでヒラメが食ったと喜んで竿を上げリールを巻き上げると無傷のエサのイワシが元気に泳いでいる事も良くあります。 そのうち船中一番で私の竿に当たりが来ると同時にグングン引っ張ります。これはエサのイワシの引きではないなとリールを巻き始めると船長がタモを抱えて素っ飛んで来ます。船中の羨ましそうな視線が痛い程集まるのを肌で感じながらリールを巻きますがヒラメの引きではありません上がってきたのはブリの幼魚青物のイナダでがっかりです。 そのうち私の二人隣の竿が大きく曲がり上がってきたのは50㎝の立派なヒラメです。しばらくするとまたその人がヒラメを釣り上げます,隣の我々は焦るばかりです。
 神様が可哀想だと思ったのでしょう私の竿にヒラメの当たりをくれました,ヒラメ40と言われるように当たりで合わせると必ずすっぽ抜けます,ゆっくり間合いを計って大きな引き込みを待ち合わせてリールを巻きましたが軽い引きです,上がってきたのは30㎝のヒラメでソゲと呼ばれるものでした。
 それから潮が速くなり20mの海底に仕掛けが流され落ち着きません,幹糸がドンドン出て行きます。船長からオモリ100号に変更と指示が出て全員交換です。オモリは重いし潮は速いしで釣るどころでなく根掛かりの連続で仕掛けやオモリを数個失いやや戦意喪失気味です。
 オモリと仕掛けを交換し再度降ろすと潮流で斜めに幹糸が強く引かれます,底に落ちると同時にまた根掛かりです,参ったなと思って幹糸を手で引っ張るべくリールを巻くと船長がタモを持って飛んできてヒラメだと言います。私が「根掛かりだ」と答えると「根掛かりでリールは巻けねーべ」と船長が言います。そりゃそうだとリールを巻くと確かに少しずつ上がってきます。
全然暴れなくただ重いだけです。ゴミかいなと思っていたら船長の言う通りヒラメで1.4㎏でした重いオモリと潮流で重かっただけです。おとなしくしていたヒラメが船長のタモに入ったとたん大暴れで船の中で跳ね回っています。ヒラメの力は強いので相手にせずしばらく放置です。
 そのうち二人隣の竿が曲がり大きなヒラメが3枚目です,私と二人隣の間の客は当たりがなく両側で釣られて焦って不運をひがんでブツブツ言っているので私がそのうち釣れますからと慰めました。
 私の2枚のヒラメを血抜きしていると置き竿が激しく上下しています当たりです,すぐ竿を外すと完全に釣れていてどんどん幹糸を引っ張ります,リールをゆっくり巻くと激しく抵抗して糸を引き出します,周囲の客もこりゃヒラメでなく青物だんべと言っています。 ゆっくり巻いてゆくとうねりが持ち上がった中にヒラメがいます,廻りがヒラメだと叫んでおり,船長がタモを構えて船に近づけたヒラメをサッと掬ってドサッと投げ入れます,ヒラメはドッタンバッタン暴れています,後検1.8㎏52㎝でした。これで私と二人隣がヒラメ3枚で気の毒に間の客はついに坊主でした。
 船長の「ハイどうもご苦労さんでした」の声で11時に沖上がりです。 この日は15名の乗客で7名坊主でした,高級魚なので仕方ありません,坊主も明日の我が身なので海の神に感謝しました。
 結局ヒラメ3枚(52㎝1.8㎏50㎝1.4㎏30㎝0.5㎏)とイナダで家に帰ってから大型は翌日以降に捌いて薄作りの刺身にして大変美味しく戴きました。余りは-50℃の冷凍庫で保存したので半年後でも鮮度良く戴けます。 高級魚は活き作りにしません,大型は翌日以降に捌いた方が美味しさの元であるアミノ酸が増え更に美味しくなるためです。
 ヒラメの刺身はフグみたいになるべく薄作りが美味しく,安い包丁はいくら研いでも魚の身がベタついて薄く切れません。そのため刺身包丁を日本橋の木屋で1万円で買いました,手入れは大変ですが安い包丁と比べると雲泥の差で高級魚の味が引き立ちます。 なお一昨年は義丸で大型ヒラメ3枚合計9㎏も釣りました。 船宿は義丸(よしまる)で20年以上前から通っている親切な船宿です。  
(TEL 0470-62-3440  〒298-0004 千葉県いすみ市大原町大原10575-4)

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幻の高級魚アラの大型13kg 85cmが釣れました

稲垣 常彦

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株式会社きんでん

技術本部 プラントエンジニアリング部 工場計装チーム

勝木 誠

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日本人と富士

株式会社ユアテック

笠原 博司

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