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サイバー攻撃の脅威、その現状と対策

講演者:電気通信大学教授

情報理工学研究科

 知能機械工学専攻 電子制御システムコース

工学博士 新 誠一

講演会 報告書作成

計装士会 企画・研修委員

奥住 俊明

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解  説

  サイバー攻撃とは、ネットワークやサーバに対してIT技術を使って行われる攻撃のことを言 い、サイバーテロと呼ばれる場合もあります。初期はウェブサイトの閲覧機能を失わせたり、ホームページの改ざん、ウィルスの感染などがありました。
  ここ数年は特定のターゲットに特定の目的をもって攻撃を加える、いわゆる標的型攻撃が増加してきて大きな社会問題になってきています。企業や官庁から情報を盗んだり改ざんしたり破壊する行為が、現代社会における新しい脅威となってきています。
  近年は、サイバー攻撃の影響を受けづらいとされてきた電力・ガス・水道・交通・ビルなどの社会インフラを監視制御するシステムに対しても、その攻撃が発見され、重大な事象に発展する事例も出てきています。
  このような社会的背景の中、この分野の権威であられます新 誠一先生に、「サイバー攻撃の脅威、その現状と対策」と題して、情報システム分野と我々のビジネスフィールドである計装制御システム分野についての現状と対策について、講演していただきましたので報告します。

プロフィール

1980年 東京大学大学院工学系研究科修士課程終了、同年同大学工学部計数工学科助手
1987年 工学博士(東京大学)、同大学講師を経て1988年筑波大学電子・情報工学系助教授
1992年 東京大学工学部助教授、2001年同大学情報理工学系研究科助教授。現在に至る。

講演の内容について

第1部では、情報システムに対するセキュリティについて、解説いただきました。
・情報とは言葉。情報セキュリティとは言葉の改竄防止である。
・昔はソースコード(文字列)をコンパイルして初めてコンピュ ータで実行できたが、今は文字列自体で実行できる(フラッシュ、HTMLなど)。
・生体に感染するウィルスと、情報のウィルスは類似性がある。共に自己増殖機能がない。
・Dos(Detail of Service:ドス)攻撃、みんなで電話をかけまくれば輻輳して通信不能に。
インターネットでも同じ手法で、相手の業務を妨害することができる。
・フィッシング詐欺、ホームページを似せて作り利用者をだす。
・Brute force attack、パスワードを総当たり式に暗号解読る。4桁ならコンピュータで数秒で解読できる。
・ファジング、ソフトウエアの脆弱性を見つけるためのテスト。
・人の能力を越えた機械、機械による攻撃で、高速、広範囲、執拗な攻撃が可能に。
・ファイヤーウォール、インターネットから内部のネットワークを守る。ファイヤーウォールの外側にハニーポットを置く。 情報や資源がありそうな部分を用意して、それにつられた侵
入者を観察したり、肝心なものを守る。ハニーポット付の製品もある。
・ホワイトリスト型セキュリティ対策ソフト、不正侵入対策機能により基地のネットワークウィルスの感染を防止する。
・マルウエアセンサ、サイバー攻撃・マルウエア感染に確実に気付く。ネットワークに侵入したマルウエアをキャッチし通知する。

【第2部 計装制御システム分野】

 第2部では、我々の業務にもっとも関連が深い制御系システムのセキュリティについて、解説いただきました。
・1971年、世界初のマイクロプロセッサの「4004」が誕生。 計算機の心臓部となり、パーソナル・コンピュータをはじめ、 生命のないものに知性を与えた。
・アナログ計装からDCS(分散制御システム)へ、DCSは進化た。
・専用から汎用へ。メーカーの専用機器と専用ソフトウエアの時代は終わった。
・人と機械の関係も変化・機械は小型軽量化、いつでもどこも。
・商売は、販売から維持管理の時代に。維持管理で稼ぐ。エンジニアはチェンジニア(調子がわるくなったら交換するだけ)に。
・Stuxnet(スタックスネット)、2010年9月、イランの核燃料施設のウラン濃縮用遠心分離機を標的としてサイバー攻撃が実行された。Windowsの4つの脆弱性を利用、独シーメンスのPLCが標的に。イスラエルとアメリカが開発し攻撃したと言われている。
・神話の崩壊、
1)非インターネット環境の神話崩壊、USBおよびエンジニアリングツール経由で感染させた。
2)非汎用OSは攻撃されないという神話崩壊、特定OSを用いたコントローラを狙い撃ちした。
3)専門家善人神話崩壊、エンジニアリングツールやコントローラの専門家が攻撃へ参加。
・制御系セキュリティ対策の難しさ、
1)容易に止められない → クラウド、予備機によるシミュレーションの活用。
2)保有が長期 → ソフトウエア、ハードウエアの新陳代化。
3)ソフトの暴走はメカの暴走 → ハードも含んだシミュレーション。

 【技術研究組合 制御システムセキュリティセンター(CSSC)について】

 経済産業省が主催して2011年に「制御システムセキュリティ検討タスクフォース」を立ち上げ、2012年3月は「技術研究組合制御システムセキュリティセンター」を設立しました。
 新先生は当初からタスクフォース座長を務められており、CSSC設立と同時に理事長に就任されました。CSSC設立の目的は、制御システムのセキュリティ確保を目指すこと。そのために検証、研究開発、インシデントサポート、認証スキーム、国際連携、人材育成・普及啓発、そしてテストベッドの構築を行います。
 現在、宮城県多賀城市のソニー(株)仙台テクノロジーセンター敷地内のみやぎ復興パーク内に、テストベッドを構築中で、お台場のCSSC本部と結び、実際のオフィスビルと同様なネットワーク構成を用いてシステムセキュリティ検証試験を2013年4月から行う予定になっています。またCSSCの認証活動は、2014年の4月から行う予定とのことです。

          奥住 俊明

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活動報告(関東・甲信越)

『サイバー攻撃の脅威、その現状と対策』   第1部 情報システム分野   第2部 計装制御システム分野

活動名『サイバー攻撃の脅威、その現状と対策』
  第1部 情報システム分野
  第2部 計装制御システム分野   
講師
電気通信大学 教授 新 誠一 先生
実施日平成25年(2013年)3月1日(金) 14:00~17:00
場所東京電業協会 第会議室 (地下1階)
  東京都港区元赤坂
参加者132名(うち計装士会11名)
主催(一社)日本計装工業会
協賛計装士会
報告者企画・研修委員 奥住 俊明
1.はじめに

 平成24年度の関東・甲信越地区下期活動として、日本計装工業会主催、計装士会共催で上記の講演会を開催しました。
 当日は事務局も含めて全員で133名の方が聴講しました。
 サイバー攻撃とは、ネットワークやサーバに対してIT技術を使って行われる攻撃のことを言い、サイバーテロと呼ばれる場合もあります。初期はウェブサイトの閲覧機能を失わせたり、ホームページの改ざん、ウィルスの感染などがありました。
 ここ数年は特定のターゲットに特定の目的をもって攻撃を加える、いわゆる標的型攻撃が増加してきて大きな社会問題になってきています。
 企業や官庁から情報を盗んだり改ざんしたり破壊する行為が、現代社会における新しい脅威となってきています。近年は、サイバー攻撃の影響を受けづらいとされてきた電力・ガス・水道・交通・ビルなどの社会インフラを監視制御するシステムに対しても、その攻撃が発見され、重大な事象に発展する事例も出てきています。                        
 このような社会的背景の中、この分野の権威であられます新 誠一先生に、「サイバー攻撃の脅威、その現状と対策」と題して、情報システム分野と我々のビジネスフィールドである計装制御システム分野について、講演していただきましたので報告します。

新 誠一 先生

講師紹介

  新 誠一 先生  電気通信大学 教授

   情報理工学研究科 知能機械工学専攻 電子制御システムコース 工学博士

・プロフィール
    1980年東京大学大学院工学系研究科修士課程終了、同年、同大学工学部計数工学科助手、1987年工学博士(東京大学)、同大学講師を経て1988年筑波大学電子・情報工学系助教授、1992年東京大学工学部助教授、2001年同大学情報理工学系研究科助教授、2006年電気通信大学教授現在に至る。

・主な実績と活動
    1991年、1993年、1998年計測自動制御学会論文賞ならびに1992年同賞武田賞受賞
    2006年同技術賞受賞。
    制御理論を中心に広く工学全体に興味を持つ。計測自動制御学会フェロー、同副会長。
    日本応用数理学会評議員。(財)製造科学技術センター評議員。
    IAF(Industrial Automation Forum)運営委員長。日本能率協会2012GOOD FACTORY賞審査委員長。2012年3月、技術共同組合 制御システムセキュリティセンター(CSSC:Control System Security Center)理事長。
    日本計装工業会はもとより、計装士会とのつながりも深く、2003~04年に「ユビキタスセンシングと計装」、2009~10年には「未来の車」というテーマで、計装士会の講演会としてそれぞれ全国7カ所で実施。

講演会会場の様子

  講演の内容について

  【第1部 情報システム分野】

   第1部では、情報システムに対するセキュリティについて、解説いただきました。
  ・情報とは言葉。情報セキュリティとは言葉の改竄防止である。
  ・昔はソースコード(文字列)をコンパイルして初めてコンピュータで実行できたが、今は文字列自体で実行できる(フラッシュ、HTMLなど)。
  ・生体に感染するウィルスと、情報のウィルスは類似性がある。共に自己増殖機能がない。
  ・DoS(Denial Of Service:ドス)攻撃、みんなで電話をかけまくれば輻輳して通信不能に。
   インターネットでも同じ手法で、相手の業務を妨害することができる。
  ・フィッシング詐欺、ホームページを似せて作り利用者をだます。
  ・Brute force attack、パスワードを総当たり式に暗号解読する。4桁ならコンピュータで数秒で解読できる。
  ・ファジング、ソフトウエアの脆弱性を見つけるためのテスト。
  ・人の能力を越えた機械、機械による攻撃で、高速、広範囲、執拗な攻撃が可能に。
  ・ファイヤーウォール、インターネットから内部のネットワークを守る。ファイヤーウォールの外側にハニーポットを置く。情報や資源がありそうな部分を用意して、それにつられた侵入者を観察したり、肝心なものを守
   る。ハニーポット付の製品もある。
  ・ホワイトリスト型セキュリティ対策ソフト、不正侵入対策機能により基地のネットワークウィルスの感染を防止する。
  ・マルウエアセンサ、サイバー攻撃・マルウエア感染に確実に気付く。ネットワークに侵入したマルウエアをキャッチし通知する。

  【第2部 計装制御システム分野】

   第2部では、我々の業務にもっとも関連が深い制御系システムのセキュリティについて、解説いただきました。
  ・1971年、世界初のマイクロプロセッサの「4004」が誕生。計算機の心臓部となり、パーソナル・コンピュータをはじめ、生命のないものに知性を与えた。
  ・アナログ計装からDCS(分散制御システム)へ、DCSは進化した。
  ・専用から汎用へ。メーカーの専用機器と専用ソフトウエアの時代は終わった。
  ・人と機械の関係も変化・機械は小型軽量化、いつでもどこでも。
  ・商売は、販売から維持管理の時代に。維持管理で稼ぐ。エンジニアはチェンジニア(調子がわるくなったら交換するだけ)に。
  ・Stuxnet(スタックスネット)、2010年9月、イランの核燃料施設のウラン濃縮用遠心分離機を標的としてサイバー攻撃が実行された。Windowsの4つの脆弱性を利用、独シーメンスのPLCが標的に。イスラエルとアメリカが開発し攻撃したと言われている。
  ・神話の崩壊
   1)非インターネット環境の神話崩壊、USBおよびエンジニアリングツール経由で感染させた。
   2)非汎用OSは攻撃されないという神話崩壊、特定OSを用いたコントローラを狙い撃ちした。
   3)専門家善人神話崩壊、エンジニアリングツールやコントローラの専門家が攻撃へ参加。
  ・制御系セキュリティ対策の難しさ
   1)容易に止められない → クラウド、予備機によるシミュレーションの活用。
   2)保有が長期 → ソフトウエア、ハードウエアの新陳代謝化。
   3)ソフトの暴走はメカの暴走 → ハードも含んだシミュレーション。

  【技術研究組合 制御システムセキュリティセンター(CSSC)について】

    経済産業省が主催して2011年に「制御システムセキュリティ検討タスクフォース」を立ち上げ、2012年3月には「技術研究組合制御システムセキュリティセンター」を設立しました。
    新先生は当初からタスクフォース座長を務められており、CSSC設立と同時に理事長に就任されました。
    CSSC設立の目的は、制御システムのセキュリティ確保を目指すこと。そのために検証、研究開発、インシデントサポート、認証スキーム、国際連携、人材育成・普及啓発、そしてテストベッドの構築を行います。現在、宮城県多賀城市のソニー(株)仙台テクノロジーセンター敷地内のみやぎ復興パーク内に、テストベッドを構築中で、お台場のCSSC本部と結び、実際のオフィスビルと同様なネットワーク構成を用いてシステムセキュリティ検証試験を2013年4月から行う予定になっています。またCSSCの認証活動は、2014年の4月から行う予定とのことです。

以 上

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コラム

地震について

東光電気工事株式会社
東京支社リニューアル部
吉野賢治

 3.11東日本大震災から1年が経ち、震災にあわれた方にとっては、忘れられない 事だと思います。
心より御冥福をお祈りいたします。
 多少の知識はありますが、私が関心を持ったので調べた事を書いてみました。

1. 地震とは

 地震は、地下の岩盤のずれ、破壊によって起こる。
 岩盤は、非常に硬くある一定の圧力により、破壊が起きる。
 圧力が耐えられなくなり限界を超えると破壊し、エネルギーが一気に放出する状態。
 日本全国には、陸域で約2000の活断層があるそうです。

2. 地震波について

 地震波は、速度が速いP波(縦波)、速度が遅いS波(横波)に分けられる。
 はじめに感じられる細かい震動(初期微動)がP波、激しい震動が、S波となり、通常たてゆれを感じるのが、P波となり、その後、激しい横ゆれが起きるのが、S波となる。

3. マグニチュードと震度

 『マグニチュード』は、そのものの大きさを表す。
 『震度』は、ゆれのつよさを表す。
 マグニチュードは、エネルギー量を表す指数で、地震計の最大振幅等を用いて計算する。
 専門的な計算式なので、省略する。
 日本の表記は、気象庁マグニチュードを採用しており、世界では、異なるとされている。
 マグニチュードの大きさは、1増えると約32倍、2増えると約1000倍になる。
 ちなみに、関東大震災は、M7.9、阪神淡路大震災は、M7.3、東日本大震災は、M9.0であった。
 従って、東日本大震災は、阪神・淡路大震災の約1000倍のエネルギーの地震であった。 震度は、気象庁が定めている震度階級がある。
 震度0~7(0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7)の10段階でわかれている。
 昔は、体感や被害状況により判断していたが、今は、地震計を用いて判断している。
 震度は、各地にある震度計による物で、設置してある地盤等の条件により、異なる。
 又、気象庁の観測点は、全国で約4,200地点ある。(各自治体等分含む)
 マグニチュードは、地震そのものの大きさ、震度は、各地の規模の大きさの目安とさ れる。

4. 緊急地震速報について

 日本の気象庁が提供している地震警報システムの一つである。
 主要動の到達前に速報を行うシステムとしては、世界初であるとされている。
 震源に近い観測点の地震計で捉えた地震波のデータ解析し、震源位置、規模を即座に推定し、各地での到達時間、震度を推定して可能な限り素早く知らせるもの。
 テレビ等の一般向けが拡大していき、携帯電話にも広く導入されている。その他、高度利用者向けを提供する端末や、ソフトウェアが多様な方式の事業者によって提供されて いる。
仕組みとしては、初期微動のP波と、S波の伝播速度の差を利用して予測する。
 (P波は、毎秒約7km、S波は、毎秒約4km)
 ある資料によると、対応時間が5秒(5秒前に地震速報を知る)あれば、死傷軽減率が約80%軽減できるとされている。
 現在は、携帯電話、スマートフォンアプリにて速報を利用する人がいるが、その情報としては、気象庁の速報にて情報を得ている。
 東日本大震災から注目されるようになった。一般向けから、企業向けまで様々な機器があり、使用目的により選ぶことができる。
 3.11東日本大震災から1年が経過し、日本国民が地震の恐ろしさを痛感したと思う。
 各メディアで、地震に関する報道をされているが、各自住んでいる地域他、日ごろ生活している場所の特長を把握し、防衛することが大事だと思う。

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コラム

「オモパラクッカー」

カシオ計算機㈱ 現在フリー

地域少年のボランティア 山下 優

ヒント

所在なく、ごろ寝テレビのナガラ視でチャンネルを適当に切り替えていたらタイ国の街道風景をバラエティ風にレポーターが取材している映像が飛び込んできた。
 カンカン照りの中、穴のあいたデコボコの舗装道路を大勢の人々がゆったりと行き交わっている。
 カメラがぐるっと回って痩せぎすの目付きの鋭い一人の男性を映し出した。ニコリともせず何か品物を真剣に売っている。二言三言、言葉があって男の手元がクローズアップされた。そこには数本の串刺しの焼き鳥が並べられていた。彼は露天の焼き鳥屋だった。
 再びカメラが回った。今度は何やら異形の構造物を映し出した。それは屏風のような枠組みをしていて結構大きい。その枠組みには手の平より多少大きめのきらきらと光る小さな部品がきちんと並べて取り付けられている。その部品をカメラはまたクローズアップした。手鏡だ。
相当な数の手鏡を枠にぶら下げたその構造物は太陽を真正面にしてそそり立っていた。この屏風ごとき代物の中心にこの男の商売品、竹串に刺された鶏肉が何本か並べられていた。
判った!、これ、手鏡利用太陽熱集熱器、パラボラクッカーだ!このところエコの話題がマスコミでもとりあげられるようになってきた。原理そのもののこの装置はシンプルで わかりやすい。俄然興味が湧いてきた。これ、いいんじゃないか!

地域の子供体験教室

おもろば大南という地域の小・中学生を集めて体験遊びさせる活動に参加している。
 「大南子供おもしろ広場体験教室」がフルネームで「子供も大人も一緒に体験遊びを楽しもう」という目的で有志の人々で8年前に立ちあげられ現在に至っている。
 参加する子供たちは地域の小学生、中学生で登録制になっている。
 昔遊び、化石採集~標本つくり、縄文調理遊び、農作業~収穫祭、理科実験パズル、科学工作などなどがあり、 年行事としては地域のお祭りに参加、ここでキッザニヤ風テントを張って「おもろばグッズ」の販売体験をする。
 「おもしろ科学工作」これが私の担当で、理科・算数の原理を身近にある材料を使って工作遊びで楽しみながら 知ってもらおうとしている。
 パラボラクッカーに興味をひかれたのはこの背景があったからで、作ってみようかなという思いが閃いたのは このテーマ担当としての成り行きだったわけです。

企 画

「パラボラで太陽熱を集めて調理体験をしてみよう」、思いつきを早速スタッフに持ち込んだ。了解は即決、企画案の作成に取り掛かった。
 ネットで検索すれば設計情報は簡単に手に入ると思っていたのだがこれが甘かった。検索ではクッカーの商品カタログばかりがあふれていてどうもおもしろくない。結局、自前で考えることにした。初歩の問題がある。焼き鳥をつくるのにはど
れくらいの大きさのパラボラが必要なのか? ネット情報のあてが外れたわけで、出だしからつまずいている。何とかしなくてはならない。やむなく近場の図書館を訪ねた。本棚の前をうろついてみたけれどこれという書籍は見当たらない。
所詮、パラボラ設計の手引きなんて都合のよい本があることを期待すること自体が甘いのだ。ふと思いついた。理科年表、そう、あれに太陽関連のデータがあるのではないか。再び本棚の前、しかしこの年表が見当たらない。やむなく司書の方に所在を訪ねてみる。うーんと言って考えている。あのような本は見る人もまずいないのだろう。ちょっと間があって「こちらです」。図書室の片隅のなんという分類に入っていたのかは忘れたけれど、とにかくとてもわかりにくいところに目的の理科年表は置いてあった。
 久しぶりにこの小型の分厚い書籍を手にした。版は4年前のものだけどそんなこと構わない。パラパラっと見る、スッとページがすぎて何もヒントになるものが引っかかってこない。ジワリとあせりが生まれてきた。スタッフにはすぐできるような言い回しでかっこよく話をしてしまっている。困った。軽率は癖だから仕方ない。ちょっと弱気になりながら慎重に索引を見る。太陽・太陽・太陽・・・。
にらめっこすることしばらく、「正午直達日射量瞬間値の月平均」という項目が目に飛び込んできた。ん! これ使えそう。 ページを開く、単位面積当りに降り注ぐ太陽熱を実測した月平均の瞬間値が記載してある。 よかった!これ使える!後は計算だけだ。やれやれである。肩から力がすっと抜けた。
でも、ほっとしたのはつかの間で、また難問が湧きあがってきた。焼き鳥を焼くってどれくらいの熱量がいるのだろうか? この問題については流石に参考文献なんてものは期待できない。深く考えもしないでしゃべってしまった話は後が怖い。 焼き鳥はずいぶんと食べたけど、焼きあがる火力なんて気にしたことはない。
結局、エイヤで決めた。20℃の水1リットルを15分で100℃にするとした。根拠はあいまいで模糊。何しろ焼き鳥と水の相関関係なんてことも飛躍があり過ぎて知る由もない、根拠はと言えば自宅のガスコンロをガチャガチャと捻ってお湯を沸かして「こんなものかなあ」と個人的に感じただけで、この判断は恥ずかしくてあまり人には言えない。

設計・パーツ製作

パラボラの焦点位置は外周の高さとした。
パラボラの外に焦点を置くと周辺の「もの」を燃やしてしまう危険がある。火事になる、実際に事件は有ったらしい。危険は避けなければならない、やはり焦点の位置は面の高さが限度だ。構造要求のこの1件はこれで良い。後は計算だけ。太陽熱を受けるパラボラの必要表面積を計算、続いてパラボラの直径を割り出した。1.8mと出た。スタッフと2回目の話し合い。クレームがついた。「だめだよそんなに大きいのは、子供の手が届かない」ごもっとも。子供仕様でどのくらいの大きさががいいのか。結局、直径1.5mと結論づけた。
 この寸法で熱量が足りるのかどうかは判らない。まずは試作機という名称で性能確認をすることにした。
 パラボラを設計、構造は木製でねじ止め組み立て式、子供たちが組み立てられる仕様だ。続いてパーツを設計、仕様に合う材料を指定、部品表ができた。この部品表を手に材料の仕入れに走る。行先は100均ショップ。このお店、なんでも売ってる。驚きを感じる。たかが100円なんて言っては失礼という気持ちになる。
仕入れした材料を目の前に山積みにした。結構な量だ。そのボリュームにたじろぐ。中学校の工作室の設備を使わしてもらえないか交渉、了解を得た。よかった。
幸いなことに必要な工作機器はここにすべてそろっていた。スタッフとお父さん方の協力で朝から作業に入る。即席の作業チームとは思えない。順調に作業を終了、
試運転の日にちを決めて本日は御苦労さん。

組立・試運転&性能確認

  反射板となるプラスチックの板を計算の寸法で切り出し、反射フイルムを張り付ける。これですべてのパーツが揃った。 組立てが始まる。部品の加工寸法は思いのほか精度良好。1.5mのクッカーの姿が徐々に見えてきた結構でかい。 組上がったパラボラクッカーを晴天の公園中央に引っ張り出してセット。天気は良い。太陽の光を受けて焦点部分が白っぽく 輝やいた。
  この装置、遠めに見ても結構派手だ。周囲の人たちが興味深げに集まってきた。装置を太陽に正確に正対させる。最初は「燃焼テスト」だ。新聞紙を筒状に丸めてパラボラの焦点に近づけた。 1秒、2秒、紙が焦げる匂いがして煙が出てきた。3秒ほどで炎が出た。結構凄い。

目玉焼き

 フライパンにサラダ油を少し入れて生卵を落としてみた。 一瞬静止した状態があって、すぐに卵白が白色に変わる。 黄身は7分くらい。これで目玉焼きができあがった。焼けていく状態が目で見ていてわかる。待ち時間はそう気にしなくてよさそうだ。おもしろい。食べてみた。ガスコンロで焼いた目玉焼きよりも滑らかで、軟らかくて、しっかりしていて口当たりがよい。おいしいという
評価がでた。成功である。

焼き餅

 お餅をあみの上に乗せて焦点部分にセットしてみた。煙が出ない。シーンとした感じで極めて静的である、???。
しばらくそのままにして置いたら、急に乗せていた1個のお餅の横っぱらが膨らんだ。焦げ目はない。 赤外線だ!低温やけどのように中から加熱されている。これはおいしそうではない。お餅の焼き方は考え なくてはならない。

ウインナー

 目玉焼きと同じ。フライパンに少量のサラダ油を入れて炒める感じで焼いた。 しばらくするとフライパンの温度が上がりピチパチという音がして脂がはじけ飛んだ。ウインナーの表面も焦げ茶色に変わってきた。
妙な音がしてウインナーの横腹が裂け、大きな油玉が飛んだ。
大成功、一回で数個のウインナーが焼ける。
量産向きでこれは良い。 ただし、ウインナーには切れ目をつけておいた方がやけどをしなくて済みそうだ。

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焼き鳥

本命の登場だ。
鶏肉を串にさし塩を振る。パラボラの焦点に金網を取りるけその上に鳥クシを並べた。3分時間が経過した。鶏肉が白っぽく変色してきたけれど大きな変化は現れない。 5分、鶏肉に付いていた皮の部分から脂が滴り落ちてきた。
煙は出ない。 焼き餅と同じだ。赤外線が肉の内部に浸透して表面は焼けずに、内側からローストされてきている。 にらめっこ数分、取り出して肉片を切ってみるとすでに全体にきれいに火が通っていた。
  試食、これは結構おいしい。歯あたりも軟らかくて仕上がり上々だ。

ただし、子供向けということについてこのレシピは若干の抵抗感が芽生えていた。
 1.5mパラボラは、調理器としての性能はこのサイズでも十分に備えていいることが分かった。
試作器は1号機と名称が変わった。
  実際に運転してみて熱源が炭火などとは性質が全く異なっていることを知らされた。 赤外線は浸透して物の内部の温度を上昇させる、これが性質だ、直火表面焼きとは全く異なる。
焦げ目をつけたい調理品はフライパンなどの容器を高温にしておいて、その高温度を利用して食材を加熱すればよいということが判った。

ネーミング

 これはスタッフと手伝ってくれたお父さんたちに提案を募った。結局、おもしろ広場から「おも」、パラボラの「パラ」そして機能としての「クッカー」を組み合わせ、名称を 「オモパラクッカー」と決めた。まあ、語呂も悪くはない、覚えやすい、いいんじゃないか。

教室開催

当日、子供たちが集まってきた。お父さん、お母さんと一緒の 子もいる。
おはようございます。まずは太陽熱の蘊蓄とパラボラ調理器の話を全員にする。
子供たちへの質問もする。物知りの子は自分の知っていることを大きな声で話す。 「ぼくつくったよ、ビニ傘にね、アルミホイル張って、お茶の筒に 水を入れておくとゆで卵ができるんだ!」
しばらく子供たちの自由な声が飛び交った後、いよいよ オモパラクッカーの組み立てになる。
まずは骨組み、部品を ネジで止めていく。真剣だ。子供同士が上下で協力して組み 立てていく、そして反射板を取り付ける。

 クッカーの姿が子供たちの前に顕わになった。「すげー、でっかい、俺ウインナー持ってきた!」 最後に台車に乗せて運びだし、隣接している公園の中央にクッカーを備え付ける。
天気は良い。クッカーはまぶしく太陽の光を集め始める、焦点の位置にフライパンをセットした。
参加した子供たちは濃いめのサングラスを全員着用する。目を 太陽光の反射から保護するためだ。 サングラスをかけた子供がクッカーの回りを走り回る。大勢のちびギャングが出現した。 その姿が結構様になっていてかわいらしい。
こどもの一人がクッカーの焦点近くに手を入れた。 「アチィー!◎?X△☆□ムニャムニャ」、自然は凄い! 肌で実感、目で確かめる。理論は後、現象を知る、このことが 重要だ。

「君もやってみな」、怖気づいた子供は逃げていく。
フライパンにサラダオイルを少し注ぎ込む、お餅を数個放り込む、 油がすぐに跳ね始める、餅の表面が茶色になった。プッと 膨らんだところで取り出し、ちょっとさまして食べる。おいしい。 目玉焼き、焼きウインナーも調理。
目玉焼きは自分で卵を割って自分でフライパンに入れる。 焼きあがってくる食材の変化を興味深げに見ている。 「いいか?」「まだ半熟」「もう少し!」。
サングラスをかけた男の子が神妙な顔をして公園の片隅で 目玉焼きを食べている。
「おいしいか?」「 うん、今まで食べた目玉焼きの中で一番 うまい!」、神妙な顔付きがなかなかよい。
焦げ目のついた焼き餅も、しっかり熱の通ったウインナーも好評だ。あっという間に売り切れた。
子供たちの感想、「今日は楽しかったですか?」に、全員が 「おいしかった!」。
太陽熱はおいしいものだ、こんな発想が彼らの気持ちに残ってくれれば、これはこれで大成功なのだ。

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体験教室雑感

 工作をしている時の子供たちの目はいつもきれいだと感じる。言葉では言いあらわせない。
工作が完成して「ヤッタ!」と叫んだときの子供たちの表情は輝いていてさらに生き生きとしている。
リニヤモーターカーの御先祖;永久磁石で車体もどきを浮きあがらせてスライドさせる。

光を食べるパンダ;光電素子を使って懐中電灯を向けるとモーターが回って後をついてくる。
 電気パン焼き器;電極の間にホットケーキミックスの粉を溶いて入れて100ボルトを懸ける。 ふかふかとした蒸しパンのような代物が10分ほどで出来上がる、結構おいしい。
 ダイオードラジオ;鉱石ラジオの代替え、バリコン・コイルは手作り、放送を捉えた時、感動がある。
 わたあめ機;複雑でちょっと難しい。砂糖はアルミ缶の底を加工したドラムで溶かす。熱源はニクロム線、回転は直流モータ。穴をあけたドラムに砂糖を入れる。溶け始めたら回転、直径10センチメートル位のわたあめが自分で作れる。とても評判がよい。
 などなど、子供たちは動きのある機能工作が大好きだ。狙いの機能が実現したその瞬間、彼らの感動が直に伝わってくる、理科・算数が苦手という子供が多い。
 残念なことだとつねづね思っている。この教科は本当は日常の生活の中にある事象そのものの確認で、もっとも身近にあることの「ナゼ」の勉強だと思っている。難しく考えることはないのだけれど実際は苦手とする子が多い。
 理科・算数を体験しよう、そう、体で皮膚で実感できればよい。理論は実感の上に乗ってくればよい。
 やじろべえをつくる。重力・重心なんてことは言わない。ひねくりまわした結果で重力・重心のあることを実感する。重りに換えて磁石を両端に取り付けてみる。南北にみんなのやじろべえが向きをそろえる。地球が磁石になっていることを知る。
 自分の手で工作したものが、機能を発揮して動作を開始する。ハッとした喜びがあって表情が輝く。以前はお爺いちゃん、お父さんが子供にこうした感動を伝えていたように記憶している。今は望めない。
手間はかかるけど実感と言う蓄積があれば理論や法則と言う「こむずしい」代物の理解はしやすくなるだろう。
 科学技術は実生活から離れてきてとっつきにくい分野になってきたのだろうか、そうは思いたくない、とっつけるトリガーがかかりにくい世相に今はなっているだけだと思う。
 人には、本来軽いノリを実現する能力がそなわっている。大げさにいうとこれは人の人たる遺伝子で、太古からの生存競争を生き延びてきた人類の財産といってもよいのではないかと考える。
 この思ったことを実現できる楽しさを子供たちに多少なりとも伝えられればといつも願っている。

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生活の中のPID制御動作

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不幸は突然やってくる「幻のシンガポール・タイツアー」

≪Eチケットをめぐる国際摩擦についての体験的問題提起≫

 ㈱オーテック
事業本部 千脇 信夫

「雨の成田空港」

本年2月27日、シンガポール・バンコクツアー4泊5日食事8回付き54,800円の格安ツアーに、淡い期待を胸に抱きながら6人の仲間と成田空港を飛び立ちました。
ところが、出発直後僅か(わずか)4時間で、シンガポールもバンコクも8回の食事もその日の宿も淡い期待も、それどころか帰りの飛行機も全て消え去るという驚天動地(きょうてんどうち)のトラブルに遭遇してしまいました。
事の顛末(てんまつ)を知れば「バカだなー」と思う人がほとんどだと思います。しかし、得難い数々の教訓を学びながらなんとか無事に戻って参りました。
 ここに自分たちの恥を忍びお役に立てればと考え、敢えて報告致す次第であります。

第1章「雨の成田空港:極めて順調なスタート」

忘れもしません2月27日(土曜日)は、未明から激しい雨が降り続き我々の前途を暗示すかのようでしたが、お気楽6人組みはルンルン気分で出発3時間前の7時30分頃には空港に集合し余裕で搭乗手続きを済ませ、9時過ぎには出発ロビーでビールや冷酒などを各自思い思いに飲みながら待機しておりました。
そうなんです!
我々は一昨年も同じメンバーで台湾ツアーを成功させたベテランなのであります。
ここでは、普段からお腹の具合の良くないNさんも冷えたワインなどを飲んでおりました。これが、後に起こる阿鼻叫喚(あびきょうかん)の大騒動の引き金になるとは夢にも思っておりませんでした。また、出発日が土曜であったことも騒動を長引かせ加速させる要因であったことも後で知りました。さらに、このベテランであるとの思い込みが追い討ちを掛けるように、錯誤を生み決定的な誤判断を下した最大の要因であったことを思い知らされる結果となったのでありました。
 何はともあれCX航空の飛行機に乗り込み、無事離陸した時には「このツアーの成功は間違いない!」と確信を持ったものでした。機内のドリンクサービスで冷たいジュースなどを飲んでいるうちに、機内食のサービスが始まりました。この機内食は、ツアーの8回の食事とは別であることを確認した時には、とても儲かった気分になり、Nさんを始めみんなで揃ってワインを飲み干していました。
この冷たいワインが第二の引き金となる危険なものだったのでした。

第2章「喧騒の香港空港:立ち往生で茫然自失」

 さて、数々の破綻の予兆を抱えながら飛行機は、乗り換えの為に香港空港に着陸しました。時刻は日本時間で午後3時、香港時間で午後2時でした。シンガポール便は日本時間4時の出発予定ですので、乗り換え時間は1時間あり余裕で構えておりました。到着ロビーは2階で、3階の出発ロビーに行くには関門を通って行く必要が有り、そこには長い行列が出来ていました。ベテランの我々は、出発ロビー方面は混雑しているので、とりあえず到着ロビーのトイレに行くことにしました。代わる代わるトイレに行き、最後にNさんがパスポートをはじめとして携帯電話や財布など身の回り品一切をそばに居たSさんに預けて、丸腰でトイレに入ったのですがこの丸腰が命取りでした。冷たいものを散々飲んだNさんは、通常より長くトイレで時間が掛かってしまい、丸腰である不安感とすっかり遅くなった焦りで、一目散に出発ロビーに行ってしまったのでした。トイレの前で雑談をしながら待っていた5人は、3時30分過ぎにようやく異変に気付きトイレの中や周辺を探し出しました。
トイレの個室の一つにずっと閉まったままで、呼び掛けても返事の無いところがありました。この個室に拉致されているのではないかと疑い、思い切って上から覗いてみたら点滴を打っている小父さんに睨まれてしまいました。丸腰のNさんは絶対に3階の出発ロビーには行けないと固く信じていた我々は、お金もパスポートも持っていないNさんを置き去りには出来ないと、再度広い空港内を探し回り空しく時間を浪費させたのでした。4時近くなって空港職員に「仲間が一人行方不明になった!」と、拙(つたな)い英語で話し掛けた所、その女性は事情を知っていたと見えて大声で出発ロビーに行くようにと英語で捲(まく)し立てられたのですが、「我々は仲間を置いては行けない!見つかるまでNさんを探す!!」と断固拒否したのでありました。(実際には女性が何を言っているか良く分らず、こちらも逐一事情を説明する英語力も無く、なんとなくそんなような会話と結果になったものです)。
 とうとう出発時刻の4時が過ぎてしまい、Nさんは国際組織に拉致されたか神隠しにあったかのどちらかしか考えられないと話し合っていたところに、女性職員に連れられたNさんがヒョッコリ帰って来たのでありました。無事な姿を見てホッと胸を撫ぜ下ろし、異国の地での再会を喜び合ったのも束の間、我々は更に恐ろしい現実に直面することになりました。

第3章 「空しい抗議:国際常識の壁」

トランジットに失敗した我々は、CX航空のカウンターに行くように言われ、6人揃って行って見ると、いきなり「ツーレイト!ウエイト!シットダウン!」と中年男の職員に一方的に言われ、それ以外何の説明も無い状態で放置されてしまったのです。我々はEチケットを持っており、予約は確保されていると確信を持って抗議を試みましたが、如何(いかん)せん英語が上手く喋れず聞き取れずの状態で埒(らち)が明きません。その内、やっとのことで日本語の分る女性職員から「Eチケットは、一旦乗らないと残り全てのチケットがキャンセルされますので、皆さんは今後このEチケットでは飛行機に乗れません。これは、世界の常識です。」と言われた時には、耳を疑うと同時に愕然としてしまいました。
なにしろ世界の常識です。
 旅行代理店のH社に国際電話を掛けた所、とにかく自力でCX航空と交渉してシンガポールへ行けと言うばかりです。そして、シンガポールから先のことは月曜日にCX航空と交渉して見なければ分らないという冷たいものでした。必死の思いでCX航空のカウンターで交渉をしている内に、「現在4時間後の最終便にキャンセル待ちをしている。上手(うま)くその最終便に乗ってシンガポールに行くことが出来れば、後のツアーも続けることが出来る。それに乗れなければ、翌日の便で片道航空機代金5万円強を別途支払ってシンガポールに行く事になるが、それから先のツアーが継続出来るかどうかは旅行代理店と交渉しなければ分らない」という状況がなんとなく分ってきました。今出来ることは午後8時の最終便に乗れるかどうかひたすら待つことだけでした。暇なので免税店で高級ウイスキーを買ってロビーで飲むことになり、買う寸前までいったのですが、今すぐ飲むのでコップが欲しいと言った途端、免税品は空港内で飲んではいけないと言われ買うことができませんでした。
 ここでも国際常識の壁に阻まれた訳です。香港ドルを持っていなかったので、千円札で安い買い物をしてそのお釣りで、一杯300円程度の蝦団子入り中華麺などを食べました。値段の割には満足のいくものですが、日本のラーメンとは全く異なる味で少し慣れる必要を感じました。
 さて、午後7時頃満を持してCX航空のカウンターにいくと、中年の男の職員から手で×印を作りながら「ノーシート!!!」と大声で言われました。カウンターはごった返しており、その中年はそれ切り見向きもしません。満席でキャンセル待ちがだめだったと悟った我々は、どうするかH社吉祥寺に携帯電話を掛け捲(まく)ったのですが、月曜にCX航空と交渉するからそれまではどうにもならないと言うことが理解出来たのは午後9時近くでした。搭乗前に預けた荷物はシンガポールに行ってしまったのではないかと思いきや、香港空港にあることが分ったので、とにかくもうこれ以上空港に居たくない!早く宿に入りたい!とH社香港に宿を予約してもらい一目散に宿に向おうとしましたが、分っているのは「パンダホテル」という宿の名前だけです。多少金は掛かるが確実なタクシーにするか電車かバスにするか迷いましたが、これからいくら掛かるか皆目検討が付かない状況なのでバスにすることにしました。この決断は結果的には正解でした。なんと言っても料金は300円位で2階建てバスに乗ることが出来たのです。このホテル名だけを頼りに何回も人に尋ねながらやっとの思いで宿に着いたのは10時半過ぎでした。
 やはりすんなりとチェックインは出来ませんでしたが、やっと部屋に入ったあとは、夜の街に食を求めて放浪しなければなりません。ツアーからドロップアウトした我々は、自力で生きていくしか道は残されていないのでありました。
ここに、香港サバイバルの幕が切って落とされたのであります。

「深浅(しんせん)の町並み」

第4章 (最終章)「香港サバイバル:自力で生き抜いた4泊5日」

 黙っていても食べ物に有り付けるツアー客は本当に恵まれています。我々は、お金の心配をしながら何処で何を食べるか悩まなければなりません。ともかく夜11時頃ホテルの近所の安そうな食堂に入りました。何はともあれ、声高らかに「ビール!!」と注文しました。ところが、ビールは無いと断られてしまったのです。店を間違えたと思い帰りかけた所、店の主人に手招きで近所のコンビニ(サークルK)に案内され、そこで缶ビールを買って店で飲めばよいと教わりました。このシステムは放浪生活を営む我々にとっては、安く済む大変良いシステムで、以後あらゆる店で活用してなんとか食費を安く浮かせることが出来て感謝しております。特に地元香港の”サンミゲールビール” 500ml缶が11HK$(12倍すると日本円になるので132円)と安くて美味しくてお薦めです。セブンイレブンでは、どういう訳か2缶なら15HK$(180円)になるという安売りの存在を知ったのはずっと後のことでした。
ただし、このビール持ち込みシステムは高級店ではやっておりません。大衆店だけの制度です。制度と言うより、食堂でビールを持ち込んで飲んでいるのは我々だけでした。香港の人たちは共働きが多く自宅で料理を作らず、もっぱら外食ばかりでほとんどの店が食事専門でした。店は定食のメニューが豊富で朝メニュー・昼メニュー・夜メニューと時間帯で分かれており、朝6時から夜12時位まで営業していました。香港の人たちはここでビールも酒も飲まず、三度三度食事をしている訳です。料理は、所謂(いわゆる)中華料理と言うか麺類・炒め物・揚げ物が主体で野菜や魚介類がほとんど無いのに堪えました。味付けがどこかエスニック風で、肉類は香辛料が強く少し努力をしないと食べ辛い気がしました。でも、20~30HK$(300円程度)でいろんな定食が食べられて本当に助かりました。

 今の所、帰りの目途も立っていない我々ですが、食事は何とかなると分りましたので後は観光です。やはり香港ならあの慕情の丘、澳門(まかお)ならカジノを覗(のぞ)いて見なくてはなりません。また、国境の町深浅(しんせん)にも行って本場中国の実態を垣間見たいなどいろいろな希望が出ました。取りあえず日曜日は香港島に行くことにし、後のことは月曜日のH社との交渉次第でどうなるか分らないので考えないことにしました。そして月曜日の火の出るような交渉の結果、本来のツアーの最終日の飛行機に追加料金一人2万円で帰ることが出来るようになりました。なんのこともありません、本来我々が乗るはずだった香港発の飛行機に追い銭を払って乗っただけのことだったのでした。
 終わってみると、香港・澳門(まかお)・深浅(しんせん)を巡るおっかなビックリの手づくりツアーは、失敗も多かったけれど得難い数々の経験をすることが出来て感謝の気持ちで一杯です。
 最後に一つ教訓を書きます。空港で帰りの航空券代をカードで支払う際、一人だけカードが使えないという事態が発生しました。カウンターの端末画面に「廃用」と大きく表示されていました。カード会社に国際電話を掛けようとしましたが「0120」は繋がらず、他の番号も分らず結局別の人のカードで支払ったのですが、もし一人だったらどうにもならないのでゾッとしました。やはり予備カードを持っておくべきであると痛感した次第であります。
 ともかく、宿代と航空券代を除く4泊5日の食費・交通費など諸費用は1人2万円程度で済みました。香港の人たちがみんな明るくて親切で助かりました。今思い出しても、恥ずかしいような懐かしいような気持ちがして、再度行く機会があるとしたなら、やはり手づくりツアーで行きたいと思っています。
 つまらない話を書きましたが、今後の参考にしていただければ幸いです。
 最後になりますが、計装士会の益々の発展をお祈りいたします。

「香港のダウンタウン」
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千代田計装㈱「計装工事施工資格認定制度」のご紹介

千代田計装㈱
                             計装本部 本部付
                                   計装士会副代表幹事 六平 克

はじめに

当社では、水島地区・鹿島地区の顧客、当社、元請会社が一体となって実施している計装工事共通認定制度を基本ベースとして、当社独自の認定制度を制定し当社4事業所を拠点とした全国展開を図っています。
 以下に、当社の「計装工事施工資格認定制度」の概要を紹介致します。

「計装工事施工資格認定制度」

1.目的

顧客との継続的な信頼関係の構築、関係会社/協力会社との 関係維持の為に、認定制度の目的を下記の通りとする。
 1) 計装工事施工技術の維持、向上、技能伝承。
 2) 品質維持、安全作業の遂行。

2.組織及び役割

運営組織及び役割は「添付-1」(省略:以下同じ)の通りとする。

3.認定制度概要

計装工事施工技術者に対し筆記試験、実技試験を実施し、合格者に対して認定シールを発行する。             又、合格者の所属会社に対して合格認定書を発行する。

資格認定項目は下記の通りとする。
 1) 耐圧パッキン施工士
 2) ケーブル端末処理士
 3) 解・結線士
 4) ガスケット装着士
 5) チュービング施工士
 6) 銅管施工士

4.運営要領

下記の資格認定手順により運営を行う。
  運営フローは「添付-2」(省略)を参照。

1) 認定試験官育成の為の教育者の任命
国内事業本部長は、認定試験官を育成する為の教育者を、下記の条件を全て満足する者の中から任命する。
・条件-1:計装士1級を取得し、現場監督経験20年を有する者。
・条件-2:「水島地区共通技術認定制度」に関して、設立当初から顧客と一体となって参画し、設立後も積極的な運営協力、教宣活動を行い、その地域で顧客に認知されている者。
・条件-3:国内事業本部長が、教育者として技術的に十分な技量を有すると認めた者。

2) 認定試験官の任命
国内事業本部長は、認定試験官を、下記の条件を全て満足する者の中から任命する。
・条件-1:計装士1級を取得し、現場監督経験10年を有する者。
・条件-2:所属の事業所長が技術的に十分な技量を有すると認めた者。

・条件-3:上記1)項の教育者により技術教育を受け、教育者が認定試験官として技術的に十分な技量を有するものと認めた者。
・条件-4:国内事業本部長が、認定試験官として技術的に十分な技量を有すると認めた者。
尚、教育内容、教育資料、教育時間については下記の通りとする。

No.書 類 名 称教育時間
1資格認定制度による工事の信頼性向上とコスト削減90分以上
2耐圧パッキン施工30分以上
3ケーブル端末処理施工60分以上
4解、結線施工45分以上
5ガスケット装着施工30分以上
6チュービング施工60分以上
7銅管施工45分以上

3)技術教育

認定試験官は受験者に対して、計装工事施工技術の教育を実施する。
教育内容、教育資料、教育時間は上記2)項の認定試験官教育と同じとする。

4)筆記試験、実技試験及び合格点

認定試験官は受験者対し、上記6項3)の技術教育を行った後に、筆記試験及び実技試験を実施する。
試験結果を各事業所長経由で資格認定制度実行委員会(以下、実行委員会」という)へ提出する。
実行委員会は試験結果を精査し、国内事業本部長へ報告する。
筆記試験、実技試験の試験問題及び、合格点は下記の通りとする。

No.書 類 名 称筆記試験実施試験
1耐圧パッキン施工士 試験問題(実技)90点
2ケーブル端末処理士 試験問題(実技)90点
3解・結線士 試験問題(実技)91点
4ガスケット装着士 試験問題(筆記・実技)90点91点
5チュービング施工士 試験問題(筆記・実技)80点88点
6銅管施工士 試験問題(筆記・実技)85点85点

5) 合格者の認定
実行委員会は試験結果を国内事業本部長へ報告し、国内事業本  部長が合格者を認定する。

6) 認定シール及び認定証の発行
実行委員会は合格者に対して「添付-3」(省略)の認定シールを、合格者の所属会社に対して「添付-4」
(省略)の計装工事資格認定   認定証を発行する。
合格者の認定番号は「添付-5」(省略)により決定する。

5.その他規定

1) 受験の申込み
・受験を申込む場合は、受験者の所属会社が「添付-6」(省略)受験申込用紙に必要事項を記入して、「添付-1」組織図に示される管轄事業所長へ提出する。

2) 資格認定者の義務
・認定シールをヘルメットに貼り作業を行うこと、また工事監督者は作業前に認定シールの確認を行うこと。
・随時、教育資料を熟読して施工技術の維持及び向上に努めること。

3) 資格認定の有効期限及び更新
・資格認定試験合格者の有効期限は、資格取得から2年後の年の12月31日までとする。
(例:2006年4月に合格した者の有効期限は2008年の12月31日までとする。)
・有効期限が切れるために再認定を受ける場合は、技術教育及び実技試験を実施し、筆記試験は免除する。
・実行委員会は資格認定者の所属会社に対して、有効期限の切れる6ヶ月前に再受験の案内を行うこと。

4)認定シールの再交付
  ・資格認定者がヘルメット交換等の理由により認定シールの再交付を依頼した場合、資格認定合格の有無を確認
   し再交付する。

5) 費用
・資格認定試験に係わる費用(教育資料、試験問題、実技試験用消耗品等)は当社負担とする。

6) 実行委員会の開催
・定期的に実行委員会を開催し、運営方法、教育資料、筆記試験問題、実技試験問題等について検討、見直しを実施する。

7) 役割
・本部長、実行委員会、事業試験官、認定試験官の役割は「添付-1」組織図に示す通りとする。

8) 試験の免除
・「水島地区共通技術認定制度」及び「鹿島地区共通技術認定制度」での認定をうけている者は、当社の認定制度の合格者として認め、認定試検を免除する。また、当社の認定制度合格者が上記の水島地区及び鹿島地区での作業を行う場合は、各事業所長がその地区の顧客の承認を得なければならない。

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技術資料(会員限定)

調節弁のCV値計算式

執筆者:(株)三興

計装技術職業能力開発センター
    職業訓練指導員
    元橋 和之

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 調節弁のCV値計算式を従来単位とSI単位で説明する。
基本になっているのは FCI (Fluid Controls Institute)の計算式である。
SI単位にした場合係数はどう変わるか。

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低圧配電システム「TLDシステム」

TOENEC Low-voltage Distribution System

㈱トーエネック
                                       伊藤 公一

 

1.はじめに

従来から、自家用電気工作物の低圧配電システムにおける接地方式は、直接接地方式および用途の異なる接地極(A種~D種等)をそれぞれ単独に設ける個別接地方式が多く採用されている(以下、「現状システム」とする)。
 この現状システムは、インバータやOA機器などが多数導入される最近の建物において、ノイズ障害や漏電遮断器(ELCB)の不要動作障害など、様々な問題が顕在化している(1)(2)。特にノイズ障害は、事後の調査や対策が困難であり、多大な時間と費用を浪費することになるため事前対策を行うことが望まれる。
 当社では、上記問題の解決策として、TLDシステム(以下、「本システム」とする。)を提案しており、既に、半導体工場や病院等へ多くの実績を持つ。
 以下に、現状システムの問題点と本システムの概要について紹介する。

2.現状システムの問題点

現状システムにおける主な問題点を以下に示す。

【問題点1】:インバータによるノイズ障害
 最近の建物では、省エネルギーや制御性のメリットからインバータが多用されている。インバータの高周波漏れ電流は、図1に示す通り、インバータの2次側電路から大地に流れ、再びB種接地極から電路に進入し、元のインバータへ還流する。
また、対地静電容量(浮遊容量等)を通して隣接の変圧器バンクに回り込む場合もある。
 このように、最近の建物ではインバータの高周波漏れ電流が建物内を広範囲に流れることから電磁環境が悪化しており、放送設備や情報通信設備等にノイズ障害を発生させる場合がある(1)
 ノイズ障害が発生した場合、その原因調査は困難を極め、多くの時間と費用を浪費する。仮に、ノイズ源が見つかったとしても、①設備を停止できない、②対策機器の設置スペースが無い、などの様々な制約条件により対策は容易でなく、事前対策を行うことが重要である。

【問題点2】:ELCB等の不要動作障害
 最近の建物内では、OA機器等の電子機器が多用されている。一般に、電子機器の電源部分には、ノイズ除去を目的としたフィルタが付加され、電路と大地との間にコンデンサが接続される。また、電子機器を多用すれば、機器への配線量が増えるため、配線の浮遊容量が大きくなる。このため、電子機器を多用した建物では、低圧電路の対地静電容量が大きくなる。
 対地静電容量が大きくなると、商用周波数の漏れ電流が増加し、わずかな絶縁劣化等によって漏電遮断器(ELCB)や漏電警報器(ELR)が不要動作しやすい。
 また、図2に示す通り、地絡事故が発生した場合、地絡電流が対地静電容量を通して隣接の変圧器バンクに回り込み、ELCB等を不要動作させる場合がある(2)。これらの対策として、ELCB等の整定値を高くすることが考えられるが、感電、火災等の安全面のリスクは高くなる。

図1 インバータによるノイズ障害
図2 地絡電流の回り込みによるELCB等の不要動作

【問題点3】:感電および火災危険性
 図3に示すように、現状システムでは、D種(又はC種)接地抵抗がB種接地抵抗より大きい場合、接触電圧が電源電圧に近づき感電の危険性が高くなる。
また、地絡電流や漏れ電流が大きいので火災が発生する危険性も高い。

図3 感電および火災危険性

【問題点4】:接地電位差による絶縁破壊

  図4に示すように、現状システムでは、建物への落雷があった場合、異なる接地極間に大きな電位差が発生し、電子機器内部で絶縁破壊を生じる場合がある。

 図4 接地極間の電位差による絶縁破壊

3.TLDシステムの概要

 本システムには、新設対応型と既設対応型がある。

3-1 新設対応型TLDシステム
 本システムは、2項で示した現状システムの問題点を全て解決するものである。

図5に本システムの基本構成を単線結線図で示す。
同図に示すように、本システムは以下の3つの要素で構成される。
① 非接地式電路
② 地絡電流補償装置
③ 構造体共用接地

図5 TLDシステムの基本構成

(1) 非接地式電路の効果
 非接地式電路は、混触防止板付の高低圧変圧器を採用して低圧電路を非接地とするものである。以下の理由により、2項の問題点2および3の解決策となる。

a.問題点2 (ELCB等の不要動作障害)の解決

 非接地式電路は、従来システムにおけるB種接地抵抗が無限大になったものと考えることができる。したがって、図3に示した式から接触電圧はほぼ0Vとなり、感電事故を防止できる。また、漏れ電流や地絡電流が極めて小さいため、電気火災の危険性も極めて小さい。

(2) 地絡電流補償装置の効果

本装置は、問題点1の対策として開発したものである。
非接地式電路は、地絡電流が小さくなるので地絡事故の検出が困難になる。
このため、一般に地絡電流を補償するための接地コンデンサが電路に設置される。コンデンサは、周知の通り、周波数が高くなるとインピーダンスが小さくなる。このため、負荷にインバータ等の高周波スイッチング機器が接続されている場合、高周波漏れ電流が接地コンデンサに流れ込むことになり周辺の電子機器へのノイズ障害等が懸念される。
本装置は、接地コンデンサを平常時は大地から切り離し、高周波漏れ電流が流れ込むことを防止し、地絡事故発生時には、零相電圧を検出し、速やかに接地コンデンサを大地に接続してELCB等を動作させる。また、このとき、地絡警報の発報を行うことも可能である。

(3) 造体共用接地の効果

構造体共用接地とは、電気設備技術基準で定められているA種、B種、C種、D種の各接地線を全て鉄骨等の建物構造体に接続し、建物の基礎を接地極の代用にするものである。
接地を共用することにより、接地電位差による絶縁破壊の恐れが無く、また、複数の接地極を布設する必要が無くなる。したがって、2項の問題点4の解決策となる。ただし、採用の条件は、建物基礎の接地抵抗が2Ω以下の場合に限る(電気設備技術基準の解釈による)。
構造体共用接地には、この他以下のメリットがある。
① 接地幹線に利用する鉄骨は、電線を使用する場合より低インピーダンスであるため、建物内を等電位化でき、電子機器の安定動作に寄与する。
② 接地極、接地幹線が不要のため、経済的なメリットがある。

3-2 既設対応型TLDシステム

新設対応型では、非接地系統を構成する方法として、混触防止板付高低圧変圧器を使用している。しかし、このような変圧器を一般に使用することは少ない。
このため、既設対応型では、混触防止板付高低圧変圧器に替えて、一般の変圧器のB種接地線に、高低圧混触事故時のみ導通するスイッチである「対地電位抑制装置」を接続して非接地系統を構成する。
「対地電位抑制装置」は、平成15年度の電気設備技術基準適合評価委員会(日本電気協会)において安全上問題の無い装置であることを認められている。
本システムの基本構成を図6に示す

図6 既設対応型TLDシステムの基本構成

4.実験による検証 

本システムを当社本店ビル(名古屋市)に導入し、従来システムとの比較を行った。本店ビルでは、本システムと従来システムの切り替えが行えるように設備している。
 本店ビルの設備概要を以下に示す。

本システムを当社本店ビル(名古屋市)に導入し、従来システムとの比較を行った。本店ビルでは、本システムと従来システムの切り替えが行えるように設備している。
 本店ビルの設備概要を以下に示す。
(1) 変圧器構成
 ・ 電灯1,2(1φ3W210-105V、2バンク)
 ・ 動力1,2(3φ200V、2バンク)
(2) 接地コンデンサ  
 4μF×3(各変圧器バンクに設置)
(3) 接地抵抗(測定値)   
 A種:4.5Ω B種:5.5Ω D種:0.5Ω
(4) 電路の対地静電容量(測定値)
 電灯1:1.8μF 電灯2:2.4μF
 動力1:0.5μF 動力2:0.6μF

評価項目は、漏れ電流、地絡電流(隣接変圧器バンクへの回りこみ電流を含む)、インバータ(エレベータ)の高周波漏れ電流の4項目とした。結果の一例を表1、表2および図7に示す。

<漏れ電流(表1)について>
 本システムに比べて従来システムの漏れ電流は極めて大きい。特に動力回路は対地静電容量が電灯回路より小さいにも係わらず、漏れ電流が極めて大きくなっている。これは、通常、動力回路ではΔ巻線の一端子にB種接地を施すため、零相電圧が大きくなっていることによる。

<地絡電流(表2)について>
 地絡電流は、従来システムでは接地抵抗(B種+D種)に、また本システムでは接地コンデンサによってそれぞれ制限された値になっており、従来システムは本システムより極めて大きくなっている。

<回り込み電流(表2)について>
 従来システムの場合、電灯2の回路に100mAを超える電流が回り込んでいることがわかる。これは、例えば、感度電流100mAの漏電警報器を設置した場合には、不要動作することを示唆している。これに対し、本システムの回り込み電流は極めて小さい。

<高周波漏れ電流(図7)について>
 インバータ式エレベータが運転すると、従来システムにおけるB種接地線に図7のような高周波漏れ電流が流れる。これに対し、本システムは接地コンデンサを通して流れる高周波漏れ電流が極めて小さくなっていることがわかる。
 また、この高周波漏れ電流に起因して発生する電界強度の測定も合わせて行っており、本システムは従来システムに比べ、電気室内の電界強度が極めて小さくなることを確認している。
 以上の結果から、本システムは、現状システムと比較して、漏れ電流、地絡電流、回り込み電流、インバータの高周波漏れ電流の全てが極めて小さく、EMCおよび電気安全の面で優れていることがわかる。

表1 漏れ電流    単位:mA 
表2 地絡電流および回り込み電流 単位:A
図7 高周波漏れ電流の比較

(a) 従来システムの場合

 

(b) 本システムの場合

5. 関連技術の動向

 欧米では、TN方式という接地方式が主流になっている。この方式は、日本の接地方式で言えば、B種接地とD種接地を共用する場合と同等である。特に、保護接地線(PE)と中性線(N)を共用にしない方式をTN-S方式といい、EMCに有効とされている。しかし、以下の点について懸念される。

① TN方式では過電流遮断器による地絡保護が一般的であるが、地絡時に短時間遮断領域となる短絡電流相当の大電流が流れるので、保護協調が困難になる。
  また、遮断に伴う電極の劣化も大きくなる。
② 絶縁物を介した地絡事故が発生した場合、過電流遮断器で保護できず、電気火災に至る危険性が高い。
③ 零相インピーダンスが極めて小さいので、インバータの高周波漏れ電流が大きくなり、電磁障害が発生しやすい。

 また、学会などの動向をみると、EMCに有効な構造体共用接地(統合接地とも呼ばれる)が注目されている。
 しかし、B種接地を他の接地と共用することは、先に述べたTN方式と同等になり、上記①~③の問題が懸念され
 る。

 ①、②の解決のため、B種接地線にB種接地抵抗に相当する10Ω程度の抵抗を挿入して地絡電流を抑制し、漏電遮断器(または、漏電リレー)を使用して地絡検出を行う方法が提案されている(3)しかし、この方法は、図1に示すイ
 ンバータの高周波漏れ電流の流れるルートのインピーダンスは、現状システムと変わらないために、③の対策にはならない。
 これらに対して、本システムは、3項および4項で示したようにEMCおよび電気安全面に優れている。

6. おわりに

2項に示したインバータによるノイズ障害やELCBの不要動作障害などは、今後、インバータやOA機器の多用により、工場だけでなく一般のビルでもさらに増加すると考えられる。本システムは、これらの障害を比較的安価に解決するものである。
本システムが今後のIT社会を支えるインフラ技術となることを期待する。

<参考文献>
(1) 例えば,酒井:「誘導障害と接地システム」,電設技術pp.64-68(2007-9)
(2) 例えば,森下:電気設備トラブル対策pp.82-89(平成18年),オーム社
(3) 昼間:「品川インターシティーの統合接地システム」,
  電気設備学会誌Vol.19,No.10,1999

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コラム

坂出発電所中央制御室集中化工事について

四国計測工業株式会社
                                     電気計装部 設計課
                                  佐久間 博文

はじめに

 四国電力株式会社坂出発電所は、昭和40年代後半に1号機から4号機まで連続して建設した四国電力殿最大の火力発電所であり、石油と共に近隣の企業から送られてくるコークス炉ガスを燃料とし、常時2機以上運転の運用を行っている。
 これまでは、1,2号機は第一中央制御室、3,4号機は第二中央制御室にて運転監視を行ってきたが、昨今の電力自由化に対応すべく、「プラントの安定運転」「設備信頼度の維持」及び、「コスト競争力の追及」のため、二つの制御室を一つに集中化し、コンパクト且つ少人数による運転を実現する「中央制御室集中化工事」を平成13年から、各ユニット定検にあわせて順次実施してきた。
 現在、2,3号集中化工事の無事完遂を経て、最後のユニットである4号集中化工事の工場試験を鋭意実施しているところである。
 今回は、集中化システムの概要について、以下に説明する。

1.中央制御室集中化工事の経緯

 中央制御室集中化に向けての工事は、一括して大規模工事を実施するのではなく、運用面、経済性、実施時期を計り、弁類遠制化等の「基盤整備」、主要制御装置の「老朽更新」、中央制御室の「統合」の3つのフェーズに区分して実施してきた。
各フェーズの概要を以下に記す。

(1) 基盤整備工事(平成14年~15年)

a.現場で手動操作をしている手動弁を、中央制御室から操作できるようにするなど、現場設備の遠制化、操作性向上を図り、起動停止時に中央制御室にて運転監視操作が行えるようにする。
   ・現場の操作端(手動弁他)を遠隔制御化
   ・現場監視カメラの増設
   ・機器異常検知システムの新設

(2) 老朽更新(平成16年~20年)

a.プラント制御装置、バーナ制御装置、ユニット計算機(DL)*1の老朽化が進んでいる制御装置を更新し、デジタル化するとともに、ネットワーク対応機能を付加することにより、ユニットネットワーク*2を構築して、CRTオペレーション化を実現する。
   ・プラント制御装置更新
   ・自動バーナ制御装置更新
   ・ユニット計算機更新
b.ワンループコントローラ等で構成しているローカル制御装置も制御装置と同様に更新しCRTオペレーション化を行う。
   ・ボイラローカル制御装置更新
   ・タービンローカル制御装置更新

(3) 統合工事(平成17年~20年)

a.新中央制御室建屋を新設し、第一中央制御室から順次、中央制御室における操作監視機能を移行する。
b.既設BTG盤*3にある操作スイッチ、指示計、記録計、警報などの操作監視機能を、それぞれの制御装置、計算機、OPS*4等の各装置に取り込み、統括オペレーションを実現する。
c.ASP機能*5を付加することにより、プラントの起動停止および通常運転操作をサポートする。
   ・BTG盤他改造工事
d.大型スクリーンシステムを構築し、情報の共有化を図る。
   ・共通監視盤新設工事

2. 集中化システム構成概要

 集中化システム構成は、ボイラ制御装置(APC,BC)*6、ローカル制御装置(LC)*7、 遠制化制御装置(SQ)*8、ユニット計算機(DL)の主要機器とOPSをユニットネットワークで結び、4台のOPSと大型スクリーンでプラントの起動停止、通常運転における監視操作を集中して行えるシステムを構築した。集中化システム構成における主な特徴を以下に記す。

(1) 4台のOPSで運転

 OPSにはAPS機能を導入し、プラントの起動停止、通常運転における運転員の監視操作を補完することにより、少人数化に対応できるようにしている。
 このAPSの進行はブレイクポイント方式*9を採用して、あくまでも運転員判断の元に工程を進めていく方法をとっている。また,操作は全てマウスオペレーションで行うことができるとともに,プラントの運転情報を2秒周期で系統画面やトレンドグラフに表示させることにより,操作面,監視面を両立させた,統括オペレーションシステムを構築している。

(2) 警報情報の差別化

 プラントの警報は、ユニットネットワークのダウンを考慮しOPSに直接取り込むことにより、ネットワークを介さないシステムとして他の運転信号との差別化をはかった。また、プラントが非常停止した場合の要因を判断するために、トリップシーケンス機能*10も設けている。プラントの非常停止やシステム故障等の重要警報については,監視補助盤に直接表示している。

(3) 大型スクリーンの採用

 プラントの系統状態のみならずOPSでの操作画面、現場監視カメラの映像などいろいろな映像情報を50インチ4面の大型スクリーンに表示させることにより、情報の共有化および監視機能の向上をはかっている。
 休転ユニット*11の大型スクリーンの有効活用の観点から、休転ユニットのスクリーンには異なるユニットの画面も運転員が選択することで表示可能としている。

(4) FAシステムとの連係

 ユニットネットワーク上の全ての情報を計算機用ゲートウエイ(GWD)を通してユニット計算機に取り込み、そこから火力FAシステムへ1分周期でデータ連係、運転データの蓄積を行っている。また、警報や操作ログデータも情報系LANを通して10分周期でデータを連係している。それらの連係されたデータは、事務所のFA端末で確認することができ、運転状態の把握や各種データの管理が可能となっている。

(5) 共通ネットワーク

 共通監視装置、送電線操作監視装置、環境計算機で共通ネットワークを構成しており、共通関係の情報は2台の共通OPSに表示する。共通ネットワーク上のデータはあらかじめ選定したデータと環境計算機が直接取り込んだデータを火力FAシステムへ伝送している。

図1 集中化システム構成(2号機)
図2 坂出発電所 システム構成(全体)

3.2・3号中央制御室集中化工事概要

 坂出発電所中央制御室集中化工事のうち,BTG盤他改造工事について、その基本計画や工事概要を説明する。

(1) 2号BTG盤他改造工事

 本工事は、既設中央制御室で運転員がプラントの運転監視操作を行ってきたBTG盤の操作機能、監視機能を各制御装置に取り込むための既設盤の改造工事と、第一中央制御室機能の移管工事を行う。

【改造工事】

a.弁類遠制化制御装置改造
   ・プラントの補機、電動弁等の操作信号の取り込みを行い、遠制化する。
   ・各種条件を取り込むことにより、シーケンスマスター*12での運転を行う。
 b.警報入力装置の新設
   ・既設警報リレー盤を改造して警報情報をOPSに直接取り込み警報を画面に表示させる。
   ・現地盤の個別警報についても、取り込みを行う。
   ・警報は重故障警報、軽故障警報に区分して表示する。
   ・重要警報(トリップ、手動トリップ要因、システム重故障)については、監視補助盤にシステムを介さずに直接表示る。
 c.既設汎用シーケンサ改造
   ・各装置の汎用シーケンサ(PLC)を連係し一括して情報を取り込むために、マスターPLCを新設する。
   ・対象装置は、EP装置*13、復水脱塩装置、薬注装置、スートブロワ装置*14などとする。
 d.OPS改造
   ・プラントの全体系統図、タービン監視画面など、大型スクリーンの4面全てを使用した専用画面を追加する。
   ・APS機能を追加する。

【移管工事】

a.第一中央制御室から新中央制御室への機器移設
   ・ユニットOPS、共通OPS、工送OPS、その他共通設備機器の移設を行う。
   ・電話装置、ページング装置等の通信機器を移設する。
 b.新中央制御室内への機器新設
   ・監視補助盤を新設し、プラントの保安上必要な操作スイッチ、警報、指示装置を設ける。
   ・ユニット操作卓、当直長卓、時計装置、総合監視モニタを新設する。
なお、大型スクリーンシステムの新設は、ユニット計算機更新および共通監視盤新設工事にて実施する。

(2) 3号BTG盤他改造工事

 本工事は、前述の2号BTG盤他改造工事の基本計画を踏襲しており、既設第二中央制御室で運転員がプラントの運転監視操作を行ってきたBTG盤の操作機能、監視機能を各制御装置に取り込むための、既設盤の改造工事を行う。
 移管工事は第二中央制御室が対象となるが、4号機が残るため第二中央制御室機能の移管工事は4号BTG盤他改造工事で受け持つ。

(3) APS機能の基本方針(2号機)

 今回の集中化工事での主要な機能であるAPS機能の基本方針について以下に記す。
 a.基本方針
 プラントの起動・停止操作および通常運転操作を自動化する。また、制御性・信頼性および保守性の向上を図った合理的なシステムを構築して、運転員がプラント全体の運転監視・操作を集中化できるようにする。
また、運転員が培ってきた運転ノウハウを可能な限り反映させる。
 b.改造範囲
 ブレイクポイント方式を採用したAPS機能として既設OPS装置に構築する。
 また、既設遠制化制御装置のマスターシーケンスを追加、改造するとともにプラント制御装置、バーナ制御装置および、ボイラローカル制御装置のロジックについても改造を行い、APSとの連係を図り自動化範囲の拡大を行うものとする。
 c.自動化範囲
 自動化はOPS装置のAPS機能を中心として行い、プラント起動準備から目標負荷到達、通常運転からプラント停止に至るまでの過程をブレイクポイント方式により自動化する。

4.4号中央制御室集中化工事の近況

 中央制御室集中化工事の最終工事となる4号機は、既設盤の改造、機器移設工事に加え第二中央制御室機能の移管工事を含んでいる。
 現在、設計、製作段階を終えて工場試験を行っており、2月上旬のユニット計算機の工場御立会検査、下旬の総合工場御立会検査に向けて順調に仕上がってきている。
 現地工事側では、大型スクリーン、入出力装置の機器の搬入を終え、ケーブル工事に取り掛かっているが、4号機は運転中であるため、本格的な工事は3月上旬から始まるプラントの定期検査からとなる。
  ●ユニット計算機工場御立会検査 :平成20年2月5日~6日
  ●総合工場御立会検査      :平成20年2月25日~28日
  ●中央制御室集中化工事竣工   :平成20年5月30日 

新制御室イメージ図

おわりに

 平成13年の4号弁類遠制化工事の計画から始まった、中央制御室集中化工事も7年あまりの歳月をかけ、いよいよ大詰めとなりました。
 コスト低減、技術力向上、設備信頼度維持と厳しい課題の中、2号機、3号機と無事に工事を完遂することができました。今後もランニングコストの低減、機能改善に努めてまいります。
 ご指導、ご協力をいただいた関係各社の皆様に、この場をかりてお礼申し上げます。

(用語の説明)

*1 ユニット計算機(DL) :Data Logger発電設備の監視、性能管理、日誌作成用計算機
*2 ユニットネットワーク:発電設備全体(ボイラ、タービン、発電機他)に亘る監視制御用ネットワーク
*3 BTG盤 :B=ボイラ、T=タービン、G=発電機 発電設備の操作・監視用制御盤で、従来は警報窓、指示
  計、記録計、操作器などが全面に配置されていた
*4 OPS : Operators Station 運転操作用端末
*5 APS : Automatic Plant Startup System 運転条件に応じてシーケンスマスターの進行を制御するシステム
*6 ボイラ制御装置(APC,BC):Automatic Power Plant Controller 主にボイラー関係の圧 力、温度、流量
  を制御、Burner Controller バーナーの点消火を制御
*7 ローカル制御装置(LC):Local Controller ボイラ、タービン関係のローカル的な制御装置
*8 遠制化制御装置(SQ):Sequential Controller あらかじめ定められた順序または手続きに従って制御の各段階
  を逐次進めていく制御装置
*9 ブレイクポイント方式:自動化された一連の発電所起動停止制御をステージごとに区切り、運転員の判断で起動
  する制御方式でAPSにおいて採用
*10トリップシーケンス機能:重大事故発生時に、あらかじめ選択して入力された接点情報を時系列に並べて出力
  し、事故解析を支援する機能
*11休転ユニット:停止している発電ユニット
*12シーケンスマスター:補機、弁類駆動をシーケンス制御する回路ごとに付けられた名称
*13EP装置:Electrostatic Precipitator ボイラの排気に含まれるダストを帯
  電させ捕集する装置
*14スートブロワ装置:Soot Blower ボイラ伝熱面に付着した煤、ダストを蒸気の噴霧により落とす装置