| 活動名 | 関東・甲信越地区 勉強会 |
| 内 容 | 計装無線 |
| 講 師 | 槇野 泰 |
| 実施日 | 令和7年 10月8日(水) 14:00~16:00 |
| 場 所 | 電業会館 3F 第1会議室 |
| 参加者 | 23名 |
| 主 催 | 計装士会 |
| 報告者 | 太平電業株式会社 技術本部 技術部 電気計装課 主査 杉田 修 |
1.はじめに
今回の勉強会では、株式会社ネットアルファの槇野 泰 常務取締役殿を講師としてお招きし、工場やプラントにおけるデジタルトランスフォーメーション (DX) の推進に不可欠な無線計装技術について、その概念から最新の通信規格、および具体的な導入事例まで、包括的なご説明をいただきました。有線では設置が困難な箇所や、広大な敷地を持つプラントにおけるデータ収集において、無線技術が果たす役割はますます重要となっています。
2.勉強会内容
1)無線計装の概念と求められる要件
本勉強会は、無線計装の概念、工場・プラントで用いられる主要規格、システムコンポーネント事例、無線計装の利点と今後の展望について、多岐にわたる項目で講義が行われました。
- 求められる事項:
- 信頼性: 構造物や配管などの設備が無線通信にとって障害となるため、高い信頼性が必須となる。
- 低遅延: プロセス制御・監視においては、リアルタイム性が求められる。
- 省電力: 無線化によるコスト増加や運転エネルギーの増加は望ましくなく、省エネルギー性能が求められる。
- 広範囲・長距離通信: 広大な敷地を持つ工場・プラントに対応するため、長距離通信機能を備えた無線機器が求められる。
- 導入のポイントと利点:
- 省資源:有線の配線材料や施工コストの削減が可能となる。
- 設置の容易性: 有線が困難な回転体(ロータリキルンなど)や高所(反応塔、タンクなど)にセンサーを設置できる点が大きな利点となる。
- フィールドメンテナンスの効率化: ハンディターミナルを携帯し、機器の校正や運転診断情報を効率的に収集できる。
- テンポラリー利用: 仮設等に低コストで対応できること
具体的には、異常兆候監視、作業時のみの使用、定修時、ループチェック時、事故復旧時、工事期間中などに一時的な設置が可能です。
2)工場・プラントで用いられる主要無線規格と技術
工場内のフィールド機器向け無線ネットワークとしては、WirelessHARTとISA 100.11a (ISA100)が市場に存在し、いずれも国際規格として標準化されている。
項目 Wireless HART ISA100.11s(ISA100) 補足 国際規格 ICE62591:2010:2016 ISA100.11a:2011,IEC62734:2014 IEC(国際電気標準会議)により国際標準規格化されている。 物理層 IEEE 802.15.4-2006 2.4GHz DSS IEEE 802.15.4-2006 2.4GHz DSS 2.4GHz ISM帯(免許不要)を使用。データー伝送速度は250kbps。 高信頼性技術 メッシュ・トポロジー、チャンネル・ホッピング(slot) メッシュ/Starトポロジー、チャンネル・ホッピング(slot/slow) メッシュにより経路遮断時でも確実にデーター伝送が可能。チャンネル・ホッピングにより干渉電波への耐障害性を高める。 データリンク層 TDMA(10ms固定) TDMA及びCSMA/CA ISA100はCSMA/CAをサポートすることで大量データの伝送効率を向上。 ネットワーク層 IETFIPv6/6LoWPAN ISA100はIPv6をIEEE802.15.4無線上で実現する6LoWPANをサポート。 ISA100はIPv6をIEEE802.15.4無線上で実現する6LoWPANをサポート。 アプリケーション層 HART7(WiredHARTの拡張) ISA100.11aNative&Legacyマルチプロトコル ISA100はトンネリング技術により既存の各種プロトコル(PROFIBUS,Modbus,HARTなど)をサポート可能。
3)その他の無線方式とメーカー事例
LPWA (Low Power Wide Area): IoT/M2Mに最適な通信方式。特徴は、従来の通信方式に比べ、広範囲・遠距離通信(10km以上も可能)、低消費電力、低コスト、複数デバイスの同時接続性に優れている。(LoRaWANはLPWAの一種で、「Long Range Wide Area Network」)
DIC株式会社は、測定にLoRaWAN®(920MHz帯)を用い、設定にBluetooth® Low Energy(BLE)を用いたセンサーを提供している。
高周波数帯の活用 (Wi-Fi, Bluetooth): Wi-Fi(2.4GHz, 5.0GHz, 6GHz)は、監視カメラ映像伝送や現場作業支援用タブレットなどのデータ伝送に用いられる。
Bluetooth Low Energy (BLE) は、近距離通信用のデータ伝送に用いられ、通信距離は1000m以上、通信速度は3Mbpsが特徴。
4)システムコンポーネント・メーカーの事例
- 横河電機株式会社: 「ISA100.11a Full Functional」を実現したフィールド無線システムを提供しています。20台のアクセスポイントで500台の無線フィールド機器と接続し、データ更新周期を5秒で実現可能。
- キーエンス株式会社 (KEYENCE): FA用途において、ユニット間通信に6GHz帯を採用し、既存の2.4GHz/5GHz帯Wi-Fiとの電波干渉を回避しています。また、通信経路が遮断されても自動的に迂回するメッシュ無線に対応し、信頼性を高めている。
- セイコーインスツル株式会社/株式会社オーバル: 920MHz帯の特定小電力無線センサーネットワーク(ミスター省エネ)を提供し、電力、温度、CO2などの計測・見える化を実現。オーバルの無線ネットワークシステム「Link920」の伝送距離は約100m。
- Emerson Automation Solutions: WirelessHART®および2.4 GHzを用いたプラントネットワークアーキテクチャを提供し、Rosemountのワイヤレス差圧流量伝送器や温度伝送器などの製品がある。
3.さいごに
本勉強会では、工場・プラントの現場で無線計装を導入する際の具体的なメリットと採用されている国際標準規格(ISA100, WirelessHART)の詳細な技術的差異について広く学ぶことができました。特に、有線ではコストや設置が困難だった回転体や高所、さらに異常監視などのためのテンポラリーな用途において、無線計装が極めて有効なソリューションとなることが理解出来ました。
しかし、現在の無線計装は、426MHz帯、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯など、使用周波数帯やシステムが製造者や用途によって異なっており、システム相互または機器製造者相互間に互換性のあるものが少ないという課題があります。このため、システム拡張時には、当初の仕様を踏襲せざるを得ないことが多いという現状も理解できました。
講師からは、無線計装の理解を深めるために、まずは小さなループ構成を無線化することから始めてみるのが有効であるとのアドバイスを受けました。
最後に、ご多用中にもかかわらず、講師としてご説明・解説を頂きました 槇野 泰 先生には厚く御礼を申し上げるとともに、ご参加くださった皆様のご活躍をお祈り申し上げます。


【執筆者紹介】
杉田 修(すぎた おさむ)
太平電業(株)技術本部
技術部 電気計装課 主査














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